慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃(東京開催)|松木國俊

慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃(東京開催)|松木國俊

日米韓の慰安婦問題研究者が東京に大集合。日本国の名誉と共に東アジアの安全保障にかかわる極めて重大なテーマ、慰安婦問題の完全解決に至る道筋を多角的に明らかにする!シンポジウムの模様を登壇者の一人である松木國俊氏が完全レポート、一挙大公開。これを読めば慰安婦の真実が全て分かる!


私は2020年に延世大を定年退職した。その一年前の2019年に大学で講義した内容が問題となり、検察に起訴されて懲役一年六カ月を求刑された。自分が慰安婦に関する最新の学説を話したところ、学生の一人が無許可で録音してマスコミに提供し、その内容が虚偽や名誉棄損だとして訴えられて裁判になったのだ。

起訴から4年目の今年2024年1月に一審の判決があり、一部だけ除いて勝訴した。

起訴事実の一番目に挙げられた「日本軍慰安婦は売春の一種という柳教授の発言は元慰安婦の名誉を棄損している」という点については、学問の自由の観点から名誉棄損にあたらないという判断が下された。

さらに「挺対協の幹部の中には、従北活動を行う違憲政党として2014年に解散命令が出された統合進歩党の幹部がかなりいる」と私が指摘したことが名誉棄損であると挺対協側から訴えられ、起訴事実の一つに加えられたが、裁判官は私の指摘を事実と認め無罪とされた。

但し、もう一つの起訴事実、すなわち私の講義の中で「挺対協は元慰安婦を教育して虚偽の事実を証言させた」と発言して当該団体の名誉を傷つけたという点については、検察側の主張が認められ、罰金200万ウオン(約22万円)の判決が下された。

私は「挺対協が慰安婦運動に介入する過程で元慰安婦の記憶が歪曲された」と語ったものであり、この判決に不服として控訴している。現在第二審において以下のような研究資料と証拠に基づいて反論している。

1) 李栄薫先生の著書『反日種族主義』の中で、元慰安婦の証言が、挺対協の運動が展開されるほど『強制的に連れて行かれた』と言う方向に変わっている状況が詳細述べられている。

2) インターネット「メディアウオッチ」も証言の変遷を指摘している。

3) 世宗大学朴裕河教授の著書『帝国の慰安婦』でも元慰安婦の証言の変化を取り上げ、挺対協が慰安婦の記憶自体を性奴隷に概念化させたと述べている。

4) 梨花女子大の金ジョンラン博士の論文「日本軍慰安婦運動の展開と問題認識に関する研究:挺対協の活動を中心に」は、「(挺対協が発刊した証言集にある証言は)社会の期待に合わせて自分の経験を再構成することもできる」としてその信憑性を否定している。 

5) ラムザイヤー氏とジェイソンモーガン氏の共著である『The comfort women Hoax』
には「挺対協は大衆を相手に発言をする慰安婦たちを統制する。この統制力は挺対協が慰安婦の集団生活及び住居空間である『憩いの場』を運営しているために可能なことだ。挺対協が望まない発言をする慰安婦たちはその空間に入居できない」と明記されている。

実際に慰安婦運動の過程で33名の慰安婦が、強制連行を主張してひたすら日本政府に賠償を求める挺対協を嫌って「ムグンファ会」を別途立ち上げている。(現在は代表死亡により活動中断)

そして何よりも重要な証拠は挺対協自身が発行した『挺身隊問題対策協議会20年史』
に次のような記述があることだ。そこには次のような文章がある。

「被害者が自分の堂々とした声を探し、自分の言語を作っていく姿こそ、水曜デモという戦いを続けて来たことで生じた最も重要な変化」

つまり自分たちの運動の影響で証言が変化したことを彼ら自身が認めており、かつそれを誇りとしているのだ。

最後に決定的な証拠がある。2020年5月8日付ハンギョレ新聞(左翼系大手紙)に元慰安婦を名乗る李容洙氏の証言が記載されている。彼女はアメリカ連邦議会でスピーチを行い、トランプ大統領訪韓時には「抱き着き」パーフォマンスをやったことでも有名な女性である。その彼女がこう証言したと同紙は報じているのだ。

「自分は公開の場において言われたとおりに証言してきたのに、なぜ私を保護してくれないのかと正義連に不満を言ったことがある」

慰安婦自身が「言われたとおりに証言した」と言っているのだ。これほど確かな証拠はないだろう。私の発言の一体どこが虚偽なのだろうか。

② 福井義高氏「慰安婦をめぐる事実と価値判断の間:経済分析の観点から」 

福井義高氏

歴史問題に経済分析がどのように貢献できるか。ラムザイヤー論文を通して私の考えを述べたい。通常人文系における歴史研究では、歴史を大きな「物語」として捉えがちである。植民地支配は悪であるというような研究者の価値判断が介在する反面、個人の主体性がなおざりにされる。

一方、経済学、特に米国の経済学は自然科学に近く、研究者は価値判断を行うのではなく、事実を正確に理解して、なぜそうなったのかを合理的に解釈することが求められている。その時代の個人が置かれた環境の中でどのように自己の幸福を追求したか、それがどれだけ実現したかという「事実」を、冷静かつ客観的に分析しなければならない。

ラムザイヤー氏の論文に対して、「慰安婦たちは複雑な契約などわからなかったはず」という反論がある。しかしそれほど難しく考える必要はない。契約に関するあらゆる情報は「市場価格」に集約されており、我々でも住宅のような大きな買い物をする際に、契約書に書かれた複雑な条件をいちいち全て確認していない。それでも契約をするのは「市場価格」に合っているかどうかで大方判断できるからだ。同じように慰安婦たちも、当時合法的に成立していた売春市場における「市場価格」をもとに契約している。また、他の社会科学と違い、経済学的見地からは、売春婦になった経過はどうあれ、最終的に女性たちが主体的に設定した目的が達成されたかどうかが重要なポイントとなる。

価値判断の相違に見えるものは事実認識の違いに過ぎない場合が多い。慰安婦が実は単なる売春婦だったことが分かれば、慰安婦問題はけしからんという議論はほとんどなくなるはずだ。その点ラムザイヤー論文が示しているのは次の点である。

・慰安婦制度が当時の国内売春制度の延長であったこと。

・当事者の行動は目的合理的であったこと。

これらが経済学の枠組みで分析され、同論文において下記は守備範囲外であることも付け加えておきたい。

・慰安婦制度を含む売春制度の是非

・日本の植民地統治の是非

ラムザイヤー論文をはじめ多くの研究論文や著作により慰安婦の実態が明らかになるにつれて、慰安婦「強制連行」論者は追い詰められ、「売春制度そのものが悪かった」と主張を後退させている。そして、なかでも戦地での慰安婦の扱いはひどかったとする。中央大学名誉教授の吉見義明氏はその代表的な例である。

ただし、戦前の日本の指導層でも、人道上の観点から売春制度に対する強力な批判が存在したのも事実である。渋沢栄一も公娼廃止を請願しており、そのような議論に軍も配慮して、慰安婦の取り扱いに極めて慎重を期していたのが当時の実態である。

それでも戦時下での慰安婦制度は、軍が恐れる戦地の民心離反につながる兵士による「姦淫」防止のためにも必要であり、売春そのものを法的に禁止すれば、地下に潜って非合法な売春が行われ、法的保護のない劣悪な環境の下で女性の人権がより多く損なわれることは目に見えていた。売春防止法を制定した後の国内状況を見ればそれは明らかだろう。

現在は性サービスへの価値判断を控えるのが世界的風潮となっている。欧米の学術論文では否定的意味のprostituteを使用せずsex workerという用語が使われるようになっている。被害者なき「非倫理」的行為については非犯罪化するというのが世界的トレンドであり、むしろ合法化して地下ビジネス化を防止する方がよいという考えが広まりつつある。以上のように「善意がより深刻な問題をもたらす」ことがあることを認識すべきである。

では元慰安婦と称する人々は「嘘」をついているのだろうか。この問題について一つのヒントとなり得るのが「記憶回復療法」である。かつて米国を席巻した「忘れた過去を回復させる」と称する療法だ。実際には呼び戻された真実ではなく、「患者」がでっち上げられた過去を刷り込まれて、「性的暴行を受けた」と娘から訴えられた父親が冤罪で有罪となるケースが続発した。元慰安婦たちは故意に嘘を言っているのではなく、記憶自体を作り変えられた可能性がある。

以上述べたことから、慰安婦問題の今後の課題として次のことが言える。

・「正しい歴史観」を前面に押し立てると、それぞれの考え方があって建設的な議論にならない。従って論点を売春制度や植民地支配の是非をめぐる価値判断とは切り離して、事実認識の問題に焦点を絞ることが重要である。

・日本の慰安婦制度は欧米の売春制度に比べて特別だったわけではないという、普遍的議論が必要である。また慰安婦を取り巻く環境が特に悪かったという主張に対しては、彼女たちはハイリターンを求める以上、ハイリスクを承知して戦場に赴いたのであって、無理やり戦場に連れて行かれて酷い扱いを受けていたわけではない事実を指摘すべきである。

・慰安婦=売春婦という事実認識を広める必要がある。

売春制度そのものが悪いとする「強制連行」論者の論点のすり替えについては、社会全体の経済水準が低く、そのなかでもとりわけ貧しかった女性達が、限られた選択肢の中で主体的に決断したことを尊重し理解することこそ、真に彼女たちに敬意を払うことになると指摘すべきである。


③ 金柄憲氏「2023年日本国を相手とした慰安婦訴訟判決文と教科書の記述」

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