「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

高齢者のインフルエンサーと呼ばれ、ベストセラーを次々と出してきた和田秀樹氏が「幸齢党」を立ち上げた。 なぜ、いま新党を立ち上げたのか。 「Hanadaプラス」限定の特別寄稿!


医療政策が野放図に

6月9日、私が党首をつとめる幸齢党は記者会見を開き、参院選に打って出ることを発表しました。
 
無謀だ、やめたほうがいいなどと言われながら、なぜ、私は新党を立ち上げたのか。
 
いま、国民健康保険制度の下、薬漬け、無駄な医療費など、おかしな医療政策が野放図にされています。それによって国民、とくに高齢者の人権と人命が軽視されている。そんなおかしな医療政策を改革したい。そんな思いから、幸齢党を立ち上げました。
 
幸齢党は、10の提言を掲げています。

①人間を全身から診られる総合診療医を育成します。

②国家予算で、薬を減らす研究をします。

③こころの問題をきちんと診られる医療を推進します。

④医学部入試面接を廃止し、栄養学を必須科目とします。

⑤年齢差別禁止法を制定し、施行します。

⑥薬害や副作用の報道を、公正で忖度のないものにします。

⑦日本人の栄養・免疫力について、正しいデータを提供・啓蒙します。

⑧性表現の規制緩和により、高齢者が元気になる社会を目指します。

⑨高齢者の移動の自由と利便性を確保します。

⑩AIを活用し、高齢者に憩いと幸せを感じてもらえる日本を創ります。

「幸齢党」という党名から、高齢者だけを優遇する政党のように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。高齢者の健康と幸福が若い世代の利益にも直結する、とわれわれは考えています。

薬のせいでヨボヨボに

たとえば、高齢者が病院に行くと、飲みきれないくらい大量の薬が処方されます。薬をたくさん出すのは医者が儲けるためと思っている人もいますが、実際は院外処方を採用している病院や診療所では、薬をいくら出しても処方箋料しか入ってこないので、医者の利益にはなりません。
 
日本は臓器別診療が基本になっており、その臓器に対して、いいと思われる薬を出す。検査していくつかの臓器の数値に異常があれば、それだけ薬を出さないといけないと思っている医師が多いために、大量の薬が処方されるのです。
 
ただ、検査データを正常にしたからといって、その後、患者さんが長生きしているのかについては、まともな大規模比較調査データはありません。むしろ、高齢者にほとんど検査などをせず、薬も常用させないことで知られるスウェーデンの平均寿命は世界2位で、日本よりも長い。
 
あまりエビデンスがない医療を強要されているとも言えるのです。
 
一方、多剤併用が有害であるエビデンスはあります。
 
東大病院老年病科の研究では、薬の数が5種類に増えると、4種類と比べて転倒リスクが倍に上がるとされています。足腰が弱くなってふらついているわけではなく、薬の副作用で頭がぼーっとしたり、ふらついたりするからです。さらに6種類以上になると、5種類までと比べてさまざまな副作用が明らかに増える。
 
薬のせいで長生きするどころか、ヨボヨボになっているのです。
 
日本人が長生きになったのは、医療や薬の進歩のおかげと考えている人も多いですが、最も大きな要因は栄養状態の改善です。
 
たとえば、日本人の死因のトップの変化は栄養学で説明できます。1950年まで死因のトップは結核でした。それがストレプトマイシンのおかげで減ったように医者は言いますが、これはかかったときの治療薬で、しかも50年くらいまではほとんど流通していませんでした。米軍が脱脂粉乳を配って栄養状態が改善して免疫力が上がり、結核になる人自体が減ったのです。
 
その後、脳卒中が死因のトップになりましたが、次第に数は減っていきました。これも降圧剤の寄与はわずか。タンパク質の摂取量が増え、血管が破れにくくなったからで、いまでは脳出血での死亡はがんの十分の一まで減っています。
 
薬より栄養が日本人の寿命を延ばしたと言っても過言ではないのに、日本の大学医学部では栄養学を学べないのは大きな問題です。

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1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『女80歳の壁』(いずれも幻冬舎新書)など著書多数。


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