価格低下策を無力化するブレンド米
2025年6月8日の『サンデーモーニング』のトップニュースは、またまた「令和の米騒動」でした。

「美味しいが“卸の使命”」小泉大臣の要求に卸売業者が悲鳴 「最後の切り札」緊急輸入で市場の“けん制”も【サンデーモーニング】 | TBS NEWS DIG
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1964730大手コンビニでは、小泉大臣肝いりの政府備蓄米の販売が始まりました。小泉氏は、価格が下がらない理由として、流通の問題点を指摘しています。広島の卸売業者を取材しました。小泉進次郎 農水大臣(5日)「これが…
アナウンサー:大手コンビニでは、小泉大臣肝いりの政府備蓄米の販売が始まりました。小泉氏は、価格が下がらない理由として、流通の問題点を指摘しています。しかし小泉大臣肝いりの随意契約のコメも、今後はスピードが落ちる可能性も。随意契約で放出した備蓄米の8割は、精米工場を持たない小売業者に引き渡されるのです。
そしてもう一つの問題は、江藤大臣の時代にJAなどの大規模な集荷業者に放出された備蓄米が、5月半ばの段階でまだ2割ほどしか市場に出ていないことです。江藤大臣の時代に放出された備蓄米の流通を早めるように求める小泉大臣。これに対し、卸売業者は「そう簡単にはいかない」と言います。まず備蓄米を試食して味を吟味。古い米でも違和感なく食べられるよう、他の銘柄米とブレンドして出荷するという手間をかけているのです。小泉大臣自ら、ブレンド米も値段を下げてほしいと言っている状況に対し、ブレンドする銘柄米が高騰している以上、価格を下げるのは難しいといいます。
一方こうした中、6日からは大手スーパーが独自にアメリカから輸入したコメの販売も始まりました。小泉大臣は、このままコメの高騰が続き備蓄米が底をつけば、政府としての輸入も辞さないといいます。
随意契約の備蓄米が最速で店頭に並ぶのに対し、JAなどの集荷業者が備蓄米をブレンドして高値で出荷するというのは、早く安いコメを手にしたい国民の希望を無視するものです。
そもそも日本の減反政策というのは、コメの需要が減るなかで、コメの供給を減らしてコメの価格を保つというものです。JAとしては、上客である零細兼業農家を護るため、コメの価格を下げるわけにはいきません。そのためには、小泉農水大臣による価格低下策を無力化する必要があります。ブレンド米はこの目的に適ったものです。
ある商品に対して一定の需要があるなかで、一定量の安い商品を流通させるとその商品がなくなるまで価格は低下し、いずれ元の価格に戻ります。これは拡散型偏微分方程式による初期値境界値問題という一般的な解法によって証明することができます。
この場合に、流通させる商品の価格が安ければ安いほど、その価格低下のインパクトは大きく、価格がそれほど安くない場合には、価格低下のインパクトは小さくなります。
JAがやっているのは、後者のケースです。つまり、JAは備蓄米の価格低下のインパクトが小さくなるようブレンドしているのです。