2度目の逮捕
日本共産党の千葉県委員会書記長だった男(42)が3月8日に千葉県警市川署に脅迫と器物損壊の疑いで逮捕された。昨年10月20日、自宅近くの駅の駐輪場で、女子大学生(19)の自転車の前かごに脅迫文を置き、サドルに体液のようなものを付着させたことが逮捕容疑だ。男は調べに対し、「被害者を驚かせたかった」などと話し、容疑をみとめているという。
男の実名はすでにマスコミで報道され、ネット上でも拡散しているが、ここでは今後の更生に期待をかけてAとしておく。Aにとってこれは2回目の逮捕である。1回目は今年1月12日だった。昨年10月23日夜、JR西千葉駅構内の女子トイレに侵入し、個室の上からスマートフォンを向け、県内在住の女子高校生を動画で盗撮していた容疑での逮捕だった。この時の逮捕のきっかけは、昨年11月21日、JR千葉駅で女性の後ろ姿をスマホで撮影していたとして110番通報され、県警でスマホを確認した結果、逮捕容疑の動画が見つかったことだというから、Aは常習的なわいせつ犯だったといえるだろう。
卑劣な性犯罪に対する反省よりも政権批判を優先
共産党千葉県委員会は最初の逮捕翌日の1月13日には、緊急の県委員総会を開き、Aの書記長解任と党からの除名処分を決定した。
党中央委員会は、小池晃書記局長が1月16日の記者会見で、除名について「党としての一定の結論を出したということだ」と述べるだけで、志位和夫委員長はAの逮捕について何もコメントしていない。
逮捕翌日のスピード除名には、「身内をかばうことなくきっぱり断罪した。さすが共産党だ」と評価する声がある。だが私には、党内から汚いものを掃き出す〝汚物処理〟を急いだだけのように見える。身内を切り捨て、党を守った、共産党組織の自己保身にすぎない。
除名処分と同時に発表した千葉県委員会の声明では「今回の事態にあたって、被害者とご家族、全県・全国のみなさんに深くお詫びし、党県委員会として、今後二度と繰り返さないために教訓を深め、自己改革をはかっていく決意です」と殊勝なことを述べてはいる。
しかしこの声明の結びは「そして、憲法・平和・暮らしを守るために、岸田政権の大軍拡政治と対決し、130%の党づくりと統一地方選挙勝利をめざして全力をあげる決意を表明するものです。以上」となっており、女子トイレ盗撮という卑劣な性犯罪に対する反省よりも、政権批判や選挙勝利という共産党の政治課題を優先させる声明となっているのだ。
「130%の党づくり」というのは、共産党員を現勢より3割増やそうというスローガンだが、党外の人にも、事件の被害者やその家族にも何の関係もないことである。いや、むしろ盗撮するような党員が今より増えたらと想像したら、ぞっとするだろう。
声明が述べている「教訓を深め」ることも、「自己改革」も、Aを除名しただけでは何もすすまない。党幹部であったAがどのようにして性犯罪に手を染めるようになったのか、その経緯において、職場であった党機関には問題はなかったのか、党として振り返って検証しなければ、何が教訓で、何を自己改革するのかもわからないはずだ。A本人から事情を聞く前にスピード除名したのは、要するに党が果たすべき責任を放棄してしまったことに等しい。