石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


「石破さんに入れる」と地域支部長

自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗経済安保相を逆転し、5回目の総裁選立候補で執念の勝利と言える。総裁選の経過と結果を分析し、今後、石破新総裁がどのような政策を実行するのか考えてみたい。

まず、総裁選の結果であるが、今回は党員党友票が大きな影響を与えた。1回目の投票で、党所属国会議員と同数の368票が党員党友票として配分されたが、高市早苗氏と石破茂氏が3位以下を大きく引き離し、決選投票に進む大きな原動力となった。

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか。私は今回の総裁選の最中も全国各地を訪問してお話を伺ったが、例えば、ある自民党の地域支部長は極めて保守的な考えを持ち、高市氏支持かと思ったら、「石破さんに入れる」と話した。

私が驚いて理由を聞くと、「幹事長時代にこの地域まで足を運んで演説してくれた。自民党幹事長がこの地域まで来たのは後にも先にも石破さんしかいない」と述べた。実はこうした話は、私が訪れた全国各地で聞いた。

石破氏は平成24(2012)年に政権奪還を果たした第二次安倍政権で幹事長に就任した。そして、自民党の基盤を固めるために全国行脚をしたのである。この時に地方をくまなく訪問したことが、先程の党地域支部長の発言のように強く印象に残っているのである。こうした状況に加え、「石破さんは今回で総裁選が最後かもしれない。恩義を帰すのは今回しかない」との思いが加わり、多くの党員党友票の獲得につながった。

今回の総裁選で聞いたこれらの声は、政治家として大変勉強になった。政治家は、政策とその実行が重要であるが、こうした地域の人との接点が大舞台で生きてくるということを強く感じた。私もよりしっかりと全国各地域を訪問しお話を伺っていきたい。

高市氏が党員からの得票を伸ばした理由

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一方、総裁候補9人に対してこうした声も聞かれた。「土臭い人がいない」。ハッとして各候補の経歴を見ると、いずれも「エリート」と言われる学歴であり、官僚やシンクタンク出身、政治家二世の方々であった。

「土臭い」とは、地方の農業や漁業の現実、地方の生活や経済の実際を体感しわかっているか、ということであるが、これも地域にくまなく入っていなければ身体に染み込まない。こうしたことも実践していかなくてはならないと感じたし、9人の中でそれでも「土臭さ」があるかもしれないと思われたのが、石破新総裁だったのではないか。

1回目得票1位だった高市早苗経済安保相は、党員投票で1位であった。僅差であるが石破氏を上回った。その理由は、強い保守系の党員が「高市氏しかいない」と、こぞって投票したことであるが、原動力となったのは保守系団体のネットワークと普段からの活動であった。こうした方々がフルで高市氏への投票を呼び掛け、大きな流れとなった。

さらに、高市氏が党員からの得票を伸ばしたのは、小泉進次郎氏が「選択的夫婦別姓」導入に意欲を示したことがある。私はもちろん導入に反対であるが、自民党員の多くも反対の考えである。選択的夫婦別姓は社会のあり方を変えてしまう根幹的な政策であり、党員の多くは「選択的夫婦別姓導入の主張を無視しても小泉氏に投票」とはならなかったのである。

党の刷新に期待して小泉氏に投票しようとした党員からは、「この主張さえなければ」との声が聞かれた。

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