だが、「ウクライナはロシアの一部」という主張は、一方的で屈折した歴史観であり、戦後の国際社会では通用しない。「失敗国家」は世界にいくらでもあり、攻撃する根拠にはならない。
主権尊重、武力不行使、領土保全は国連憲章が掲げる最重要原則であり、安保理常任理事国で核大国のロシアが真っ向から違反した責任は重い。攻撃の根拠とした「キエフ政権による東部でのジェノサイド(大量虐殺)」も捏造のプロパガンダにすぎない。
ロシアのウクライナ全面攻撃は逆に、ウクライナ人の民族意識を大きく高めた。
プーチン政権の「家庭内暴力」
CNNテレビによれば、各方面から進撃したロシア軍は、ウクライナ軍の強力な抵抗に遭い、撤退した部隊もいるという。
東部にはウクライナ語のできないロシア系住民が多いが、日常生活を破壊したロシア軍の攻撃に激怒し、予備役への参加者も多いとされる。
ウクライナ軍は14年のクリミア併合後、欧米の兵器を導入して近代化を進め、20万人の規模に拡大した。多くの一般市民が、ロシアの侵略に備えて軍事訓練に参加した。
世論調査によれば、ロシア軍侵攻前、NATO加盟を望む人は62%だった。10年前は15%程度だったが、長期化するロシアの圧力が、ウクライナ人の反露感情を高めた。
今回の無差別攻撃で、ウクライナ人の反露感情は決定的になった。「家族の一員」だったウクライナ人は、皮肉にもプーチン政権の「家庭内暴力」によって、ますますロシアから離反するだろう。