従軍慰安婦映画『主戦場』の悪辣な手口|山岡鉄秀

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いまから2年ほど前、ミキ・デザキという上智大学の院生を名乗る青年が、保守論壇でお馴染みの言論人にアプローチしてきた。「慰安婦問題に焦点を当てたビデオドキュメンタリーを作りたいから取材させてほしい。修士修了プロジェクトです」というのだ。


【性奴隷】

ここでの議論は、「慰安婦はお金が払われ、貯金や送金もでき、契約が終了すれば帰国でき、買いものに行け、日本人と一緒にスポーツ観戦や夜会にも出かけていたのだから、性奴隷と呼ぶことはできない」という性奴隷説反対派の主張に対し、推進派は「いまの国際法に照らせば奴隷の範疇に入る」と反論するいつものパターンだ。

しかし、私は吉見氏の反論に興味をひかれた。慰安婦にレクリエーションの機会があったという指摘に対して、吉見氏はこう反論する。

「そういう機会がないと、たぶん生きていけないという状況にあったからではないかと僕は思うんです。たとえば、アメリカの黒人奴隷も土曜や日曜にはみんなで集まって音楽会を開いたり、ダンスをしたりしているわけですよね。それから狩猟に出かけたり。そういうふうにしないと生きていけないような絶望的な状況にあったら、奴隷主もそれを認めていたということがあるんですね」

はたして、奴隷主は自ら奴隷を引率してイベントに出かけたり、奴隷女性と恋に落ちて結婚したりしていたのか?元恋人だった日本兵を懐かしむ元慰安婦もいる。そのような強引な類推をしてまで、何が何でも日本人を悪魔化したい動機が理解できない。

ここで国際法学者の阿部浩己氏が登場して、国際法の観点からの慰安婦性奴隷説を次のように解説する。

「奴隷制というのは、人が別の人によって全的支配を受けることをいう。元慰安婦が高額の支払いを受けていても、外出をしていても、それは全体的な支配のもとで許可を得てそれができていたのだから、奴隷制ということになるんです」

そこまで奴隷の定義を広げると、一般のサラリーマンも十分奴隷になってしまいそうである。もっとも、社畜という言葉があるぐらいだから冗談にもならない。性奴隷説推進派がそのような国際法の定義を持ち出すのなら、潔く次のように認めるべきだ。

  • 慰安婦は、性奴隷という言葉から想像される一般通念としての奴隷ではない
  • 国際法上の奴隷の定義を当てはめるのであれば、日本軍の慰安婦に限らず、世界中で過去から現在まで売春に従事している女性の多くが奴隷であると定義できる

このように、デザキ氏の「主戦場」はこれまでの議論を深めることに成功していない。それは、彼自身の知識が浅いこと、最初から偏見を持っていること、前述したように、専門家同士の議論にしなかったことが原因だ。

後半で一気に脱線

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