トランプはこれまでも、何かとプーチンのみならず、習近平、金正恩に対するリップサービスや皮肉を展開してきた。最近でも、8日にフロリダ州の邸宅「マール・ア・ラーゴ」で記者会見を開いた際に、習近平について、こう言及した。
「私は中国とはうまくやっていけそうだ。中国の習主席と私はとても良い友人だった。(中略)習主席と私は、コロナまではとても良い関係だったのだ。そして私はコロナについて、彼に責任を取るよう求め、私たちの関係を終わらせた。しかし、私たちは素晴らしい関係を築けると思う。そして、それは相互に有益なものになると思う。しかし、中国が米国を利用しているのであれば、我々はそれを手にすることはできない」
習近平とは「とても良い友人だった」というが、トランプは、2016年の大統領選出馬時から、ピーター・ナバロ教授を陣営の政策アドバイザーに据え、筋金入りと言われる彼の強硬な対中政策を取り入れるなどして、選挙期間中の演説でも中国を名指しで繰り返し批判していた。そして、大統領の座につくと、対中の関税引き上げなどで圧力をかけながら、様々な交渉を中国と行った。2017年12月には、外交安全保障の指針「国家安全保障戦略(NSS)」を策定し、中国を「戦略的競争相手国」と位置付けた。コロナ前のことである。
「交渉のプロ」トランプの政治
北朝鮮についてもそうだ。トランプは在任時、金正恩のことを「非常に高潔だ」「素晴らしい」と讃えている。しかし、口ではそう言いながら、北朝鮮への経済制裁は一切緩めなかった。それが「交渉のプロ」のトランプの政治なのだ。
戦術を含む外交上の言葉を文字通り受け取ってばかりいては、らちが明かない。トランプの言葉の表面に惑わされてはいけないのだ。言葉ではなく、実際の行動を見なければならない。