全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


その動きとは、米国各地の大学で起きているイスラエルによるガザ地区への攻撃に対する抗議デモだ。反イスラエル・新パレスチナ派の学生らは、バイデン政権によるイスラエル支援への反対表明や、パレスチナ・ガザ地区での戦闘停止、大学によるイスラエルに関連する投資撤退の要求などを行っており、一部は要求が通るまで大学構内を占拠する姿勢を取っている。彼らはガザ地区での「大量虐殺」に自分たちのお金が使われていることに対して黙っていられないという。そういった背景のデモが、米西部のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、米中部のウィスコンシン大学マディソン校、米東部のニューヨークのフォーダム大学やジョージ・ワシントン大学、かつてベトナム戦争当時も反戦を訴える学生たちの拠点となっていたコロンビア大学などを始め、全米の大学に拡大しており、警官隊との衝突が各地で発生するなど、激化している。

UCLA構内では、警察が爆音筒や閃光弾などを使いながら、バリケードやテントの撤去を行っている。日本での全学連や全共闘時代の混乱を彷彿とさせる。デモをめぐる逮捕者は、この2週間のうちに計2,300人を超えている(5月5日時点)。逮捕者の中には外部の扇動者も含まれている。BBCによると、デモの数は、少なくとも45州の約140校に広がっている他、少なくとも他の6カ国でも同様の抗議が行われている。

大統領選に影響を与えた「Black Lives Matter (BLM)」

Getty logo

このような混乱は、実は以前にも米国で見られた。それも、前回大統領選が行われた年である2020年にだ。その理由は、トランプが初勝利した2016年の大統領選においても人種差別問題で大きな影響を与えた「Black Lives Matter (BLM)」という黒人人権運動の存在によるものだ。

BLMは、2020年5月に起きた黒人男性ジョージ・フロイド氏の死亡事件を受けて抗議運動を活発化させた。それが急進左派の「アンティファ(Anti-Fascist Action)」というネオナチやファシズム、白人至上主義者、差別主義などに強く反対する暴力的な反ファシスト運動と混ざり合いながら、略奪・放火・破壊・暴行などを含む複数都市での暴動へと発展した。この一連の混乱は、略奪や損害を受けた450以上のニューヨーク市の企業を含め、全米で4億ドル以上の損害をもたらしたと言われる。また、ワシントン州シアトルでは、抗議者たちによって「自治区」が設置され、警察から強制的に排除されるまで約3週間占拠が続いた。

当時大統領であったトランプは、中でもアンティファを「米国はテロリスト組織として指定する」とSNSに投稿したり、それについて選挙演説中に繰り返し言及するなどした。また、暴動のカウンターとして、白人至上主義を露骨には受け入れないものの、白人優越主義的な思想にこだわる傾向とされる極右グループ「プラウド・ボーイズ」の存在感も出た。そのグループの是非が、トランプ対バイデンの大統領候補者討論会で議題に上がる程であった。つまり、BLMに起因する一連の混乱が、大統領選にも大きく影響したのだ。

BLMであるが、米国内が「イスラエル支持一色」であった中、黒人たちがいち早く「パレスチナ支持」を明確にしたことや、BLM運動の活動家から下院議員になったコリー・ブッシュ氏らが連邦議会で初めて「即停戦」の決議案を上げたことを指摘する声も上がっている。2020年の大統領選に引き続き、イスラエル・ガザを巡る動きでも、BLMの存在や影響は無視できないことが伺える。

資金源は中国在住の米国人実業家

関連する投稿


米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

トランプ政権の下で、混迷を極める米国。 彼の目的は、いったい何のか。 トランプを読み解く4つの「別人化」とは――。


チャーリー・カーク暗殺と左翼の正体|掛谷英紀

チャーリー・カーク暗殺と左翼の正体|掛谷英紀

日本のメディアは「チャーリー・カーク」を正しく伝えていない。カーク暗殺のあと、左翼たちの正体が露わになる事態が相次いでいるが、それも日本では全く報じられない。「米国の分断」との安易な解釈では絶対にわからない「チャーリー・カーク」現象の本質。


日本人だけが知らない「新型コロナ起源説」世界の常識|掛谷英紀

日本人だけが知らない「新型コロナ起源説」世界の常識|掛谷英紀

新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所で作られ、流出したものであるという見解は、世界ではほぼ定説になっている。ところが、なぜか日本ではこの“世界の常識”が全く通じない。「新型コロナウイルス研究所起源」をめぐる深い闇。


中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】

中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

「単なるデタラメと違うのは、多くの人にとって重大な関心事が実際に起きており、その原因について、一見もっともらしい『説得力』のある説明がされることである」――あの偉人たちもはまってしまった危険な誘惑の世界。その原型をたどると……。


最新の投稿


米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

米国を破壊するトランプの“ラ米化”|上野景文(文明論考家)

トランプ政権の下で、混迷を極める米国。 彼の目的は、いったい何のか。 トランプを読み解く4つの「別人化」とは――。


最低賃金引き上げ 髙橋洋一理論の根本的誤り|D.アトキンソン【2025年11月号】

最低賃金引き上げ 髙橋洋一理論の根本的誤り|D.アトキンソン【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『最低賃金引き上げ 髙橋洋一理論の根本的誤り|D.アトキンソン【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


絶対に総理にしてはいけない小泉進次郎|長尾たかし【2025年11月号】

絶対に総理にしてはいけない小泉進次郎|長尾たかし【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『絶対に総理にしてはいけない小泉進次郎|長尾たかし【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


自公連立解消!? 公明党は高市さんともやっていけます|伊佐進一【2025年11月号】

自公連立解消!? 公明党は高市さんともやっていけます|伊佐進一【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『自公連立解消!? 公明党は高市さんともやっていけます|伊佐進一【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】時間差で起きた谷口真由美vs寺島実郎|藤原かずえ

【今週のサンモニ】時間差で起きた谷口真由美vs寺島実郎|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。