他にも、保守系メディアのFree Beaconの記事に「反イスラエル・グループがコロンビア大学のデモ参加者に『2020年の夏』を再現するよう促した。ピープルズ・フォーラムの運営は、ゴールドマン・サックスの慈善事業部門からの1200万ドル(約18億円)の寄付によって成り立っている」というものがある。
ピープルズ・フォーラム(TPF)とは、ニューヨーク市の非営利団体だ。その団体の資金源は、「長い間毛沢東主義を賞賛してきた 」自称社会主義者の米国人実業家ネビル・ロイ・シンガム氏だと言われる。シンガムは、中国在住であり、中国共産党と繋がっていることや、同党のプロパガンダを世界的に流布していることで知られている。
同記事は、同団体の事務局長が、コロンビア大学の抗議者を含む活動家らに対し、「ジョー・バイデンに熱い夏を与えること」や「いつもの政治が成り立たないように」するよう促したことを記している。また、同氏が「『2020年の夏』を復活させる」よう発言し、BLMの広範な暴力を想起させたともしている。中国による影響も気になる所だが、ここで重要なのは、BLMやAntifaといった切り口の暴動や妨害が、急進左派にとって、再び繰り返したい大統領選への影響工作における成功例として使われているということだ。
周到に準備されていた反イスラエルデモ
ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は大学デモについて、大学とは無関係の人物たちが大学構内に入り込み、場合によっては学生たちに「非合法な抗議戦術の訓練」までしていたことを明らかにした上で、「平和的であるべき集会が暴力的な見世物に変わることを、私たちは許さない」と強く訴えている。事実、コロンビア大学とシティ・カレッジで逮捕された者の半数近くは、これらの学校の関係者ではなかったという。
アダムズ市長の言う「非合法な抗議戦術の訓練」とは何なのか。
WSJが驚きの記事を出している。「活動家グループは大学デモの数ヶ月前から学生を訓練していた」というのだ。その記事では、コロンビア大学の学生主催者たちが、20年ほどの歴史を持ち、全米に300以上の支部を持つ「National Students for Justice in Palestine(NSJP: パレスチナの正義を求める全国学生連盟)」などの極左グループやデモ経験者と議論を通じて準備を重ねていたことや、BLMのデモ行進などへの参加を通じて資金集めを含む必要な規律と計画性を学んでいたことなどが紹介されている。
NSJPは数ヶ月前から、大学がイスラエルと取引している企業への投資から手を引くまで、大学に対して強く立ち向かおうと学生に呼びかけ、昨年10月の時点で、大学でのデモによる「抵抗の日」を宣伝していたという。つまり、反イスラエルデモは、突如として起こったものではなく、周到に準備されたものだったのだ。
穏健左派と親パレスチナの急進左派の大きな溝
ちなみに、アダムス市長は民主党の政治家である。抗議者らに対して、同じ左派とは言え、許容できない部分が存在するのだろう。
そして、それはバイデンも同じだ。2日、UCLAでデモ隊のバリケードやテントが警察に強制的に撤去された数時間後、ホワイトハウスでの演説の中で、初めてデモへの直接の言及を行った。バイデンは、米国が独裁国家でも無法国家でもないことを強調しながら、「暴力的な抗議は保護されない。保護されるのは平和的な抗議だ。抗議する権利はあるが、混乱を引き起こす権利はない」と訴えた。
このような現状を受け、親イスラエルのバイデンのような穏健左派と親パレスチナの急進左派の間に大きな溝があると言える。バイデンは、右にトランプ、左に急進左派がいる板挟み状態にあるのだ。