台湾有事はこうして起こる|山崎文明

台湾有事はこうして起こる|山崎文明

「中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することである」―アメリカの最新研究が今話題を呼んでいる。一方で、中国による機雷敷設によって台湾有事が勃発するシナリオも現実味を帯びる。もし台湾海峡が封鎖されれば日本はどうなるのか。報じられない「台湾有事の盲点」を緊急分析する。


中国人民解放軍独特の戦術として、民間船の機雷敷設が挙げられる。2008年の『中国国防白書』には、民間船舶による機雷敷設と機雷掃海を主要な中国人民解放軍の予備役部隊の一つとして記載している。10個の機雷を搭載可能な鋼鉄製の商用トロール船が約30,000隻、2個から3個の機雷を搭載可能な約50,000隻の帆船漁船があるという。中国人民解放軍でも、機雷敷設任務は、高い秘匿性を保つために潜水艦や航空部隊に課せられるが、密かに調達した小型船舶も機雷敷設任務が当然課せられる。このため中国人民解放軍海軍のそれぞれの基地において定期的に行われている人民民兵の演習の一部として機雷敷設訓練が行われ、多くの漁船が参加している。

中国人民解放軍では、100トンから200トンの排水量の漁船は十分な隻数が確保できる上に、小目標であることと機動性が高く、外見上疑われることもないため、機雷戦にはうってつけとの評価がなされている。これらの民間船舶には、1955年に公布された中国国防運輸法や1977年に第8期全国人民代表大会で採択され即日施行された中華人民共和国国防法で、戦時における動員が定められているのだ。

中国の機雷敷設シナリオ

Getty logo

中国もまた台湾を封鎖するために機雷を敷設する。このため台湾の主要な港が標的にされる。台湾軍が想定する中国による機雷戦は、第1段階として4日から6日以内に5,000個から6,000個の機雷による封鎖が行われ、第2段階として7,000個の機雷が追加される。総計15,000個以下の機雷で台湾は、国内外の海運を完全に遮断されるとみている。

台湾に対して機雷を敷設する地理的選択肢としては、港湾部を除き、台湾本島の西側及び北側だとされている。その理由は台湾本島の南側及び東側は、沿岸部から急激に水深が2000mに達するため機雷を設置するのに適さないためである。また、台湾の南側から東側は黒潮の流れが速く、係維機雷の敷設には向かないからだ。

台湾の機雷戦への備え

関連する投稿


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃(東京開催)|松木國俊

慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃(東京開催)|松木國俊

日米韓の慰安婦問題研究者が東京に大集合。日本国の名誉と共に東アジアの安全保障にかかわる極めて重大なテーマ、慰安婦問題の完全解決に至る道筋を多角的に明らかにする!シンポジウムの模様を登壇者の一人である松木國俊氏が完全レポート、一挙大公開。これを読めば慰安婦の真実が全て分かる!


「核爆弾の奴隷たち」北朝鮮驚愕の核兵器開発現場|石井英俊

「核爆弾の奴隷たち」北朝鮮驚愕の核兵器開発現場|石井英俊

「核爆弾の奴隷たち」――アメリカに本部を置く北朝鮮人権委員会が発表した報告書に記された衝撃的な内容。アメリカや韓国では話題になっているが、日本ではなぜか全く知られていない。核開発を進める独裁国家で実施されている「現代の奴隷制度」の実態。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


米国を弱体化させるイスラエル甘やかし|上野景文(文明論考家)

米国を弱体化させるイスラエル甘やかし|上野景文(文明論考家)

これまでイスラエルをかばい続けてきたアメリカだが、ここで方向転換した。 これ以上、事態の沈静化を遅らせれば、どんどんアメリカと日本の国益が損なわれる!


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。