このため、たとえ係維機雷であっても触発機雷でなければ、ハーグ条約第8条に違反しないと中国人民解放軍は解釈しているようだ。したがって、中国人民解放軍が敷設した係維機雷のアンカーと機雷缶が何らかの原因で切断された場合、不活性化もしくは自爆装置によって自滅するのかは非常に疑わしい。大量の機雷缶が浮遊し、日本近海に流れ着く可能性が高く、日本が台湾有事に関与することがないとしても、中国が敷設した係維機雷により、日本の海上交通が封鎖されるおそれがある。
厄介な中国の機雷―最大の脅威「核機雷」
さらに厄介なことは、中国の機雷に関する情報が、ほとんど開示されていないことである。中国の機雷の開発状況や在庫数は秘密扱いを受けており、推計で10万発以上と見られている。ちなみにロシアは25万発、北朝鮮は5万発の機雷を保有していると推定されている。
様々な機雷がすでに開発されていると思われるが、最大の脅威になるとされるのが核機雷である。通常爆薬よりもはるかに威力が大きい核機雷は、至近距離でなくても潜水艦に大きな損傷を与えることができ、敵潜水艦の位置や水中での精密な誘導を必要としないという特徴がある。2012年12月8日のワシントンタイムズによると、北朝鮮が密かに国防技術研究所の特別研究グループで、核弾頭を使った水中兵器の開発を行っていると報じられている。したがって、ロシア、中国も同様にすでに核を搭載した機雷を保有している可能性は高いとみられている。中国が機雷戦を仕掛けた場合、米国の潜水艦を寄せつけないために、核機雷を敷設したとの情報を流す可能性がある。
日本に重大な影響を及ぼす中国の機雷設置
日本近海へ機雷缶が浮遊した事態は、珍しくない。太平洋戦争末期に日本軍が台湾海峡や対馬海峡、南シナ海、東シナ海に本土防衛のために敷設した係維機雷は約5万5千個、米軍が敷設した機雷は約1万個に達する。これらの機雷が太平洋沿岸や日本海沿岸に浮遊してきた例や朝鮮戦争の際に北朝鮮が上陸阻止のために敷設した係維機雷が、日本沿岸に浮遊している。
北朝鮮の浮遊機雷は、アンカーからケーブルが切断されて機雷缶が浮遊状態になっても発火しない構造にはなっていない。1949年3月には、新潟県の海岸に流れ着いた浮流機雷が発火し、機雷缶を沖に押し出そうとしていた巡査1名と見物していた小中学生62名が爆死、家屋30戸が全半焼している。
こうした沿岸部での事故以上に警戒しなければならないのが、浮遊機雷缶による海上交通の封鎖である。朝鮮戦争の場合は、1952年2月に新潟港が封鎖されたり、津軽海峡では青函連絡船が運行停止に追い込まれている。