【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗

【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗

「安倍さんに『出馬してください!』と何十回お願いしても『100%ない』とおっしゃるので、7月下旬、もうこれが最後との思いで、もう一度お願いしました。そこできっぱり断られたので、『そんなんやったら、私、出たるからな』と安倍さんに言うたんです。止められもせず、勧められもしませんでしたが。勉強会を何度も重ねて、一緒に政策作りにも励んできました。『書き溜めてきた政策はどうすればいいんですか』と安倍さんに尋ねたら、『高市さんが発表すればいいじゃない』と(笑)」(月刊『Hanada』2021年10月号より)。独占無料公開! 高市早苗議員が日本を強くする「経済強靭化計画」のすべてを語った!


『サナエノミクス』は『ニュー・アベノミクス』

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私の経済政策は、『ニュー・アベノミクス』と呼んでも良いものだと思います。

『アベノミクス』は、第1の矢が「大胆な金融緩和」、第2の矢が「機動的な財政出動」、第3の矢が「民間活力を引き出す成長戦略」でした。『サナエノミクス』は、第1の矢が「大胆な金融緩和」、第2の矢が「緊急時に限定した機動的な財政出動」、第3の矢が「大胆な危機管理投資・成長投資」です。

この3本の矢を総動員して、物価安定目標であるインフレ率2%の達成を目指します。日本銀行のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)政策の下で、残存期間10年の国債の利回りをゼロ近傍に固定している状況では、「金融緩和」のみに頼って物価安定目標を達成することは極めて困難です。

『アベノミクス』の第2の矢「機動的な財政出動」は、デフレ脱却のためのマクロ経済政策を担う需要拡大のためのものでした。残念ながら、財務当局がこだわった「PB(プライマリー・バランス=基礎的財政収支)黒字化目標」の下、結果的には緊縮財政を継続せざるを得ない結果となり、物価安定目標の達成を困難にしました。

『サナエノミクス』の第2の矢「緊急時に限定した機動的な財政出動」は、あくまでも災害、感染症、テロ、紛争、海外の景気低迷などの要因による「緊急時の迅速な大型財政措置」に限定することとします。

『アベノミクス』の第3の矢「民間活力を引き出す成長戦略」は、規制緩和などで創意工夫を促進し、より生産性の高い産業・企業に生産要素(労働・資本)が流れやすいようにして経済全体の生産性を向上させようとする「改革」が主でした。

働き方改革、農政改革、電力・ガス小売全面自由化、貿易自由化などが、安倍内閣の成果として象徴的でした。今後も、十分なセーフティネットを前提に、真に必要な「改革」については、個別の法制度整備によって対応を続けるべきであることに変わりはありません。

『サナエノミクス』では、第3の矢「大胆な危機管理投資・成長投資」が、大規模な財政出動や法制度整備を伴うものであり、重要な位置付けとなるのです。

第3の矢「大胆な危機管理投資・成長投資」

「危機管理投資」とは、自然災害や疾病、サイバー攻撃や機微技術流出を含む経済安全保障上の課題、テロ、国防上の脅威など様々な「リスクの最小化」に資する研究開発の強化、人材育成、安全と安心を担保できる製品・サービスの開発や社会実装、重要物資の調達などに資する財政出動や税制措置を行うこと。

「成長投資」とは、日本に強みのある技術分野をさらに強化し、新分野も含めて、研究成果の有効活用と国際競争力の強化に向けた戦略的支援を行うことです。

「危機管理投資」によって世界共通の課題を解決できる製品・サービス・インフラを生み出すことができた場合には、国際展開を行うことによって「成長投資」にもなるのです。

自然災害でもサイバー攻撃でも、事前の備えにかかるコストより、復旧にかかるコストと時間のほうが膨大です。「危機管理投資」の恩恵は、これから生まれる未来の納税者にも及ぶものです。

また、「危機管理投資」も「成長投資」も、雇用を生み、個人や企業の所得を増やし、消費マインドを改善させ、製品・サービスの輸出も見込めることから、結果的には税収増を目指すものです。

真に力強い経済を目指すためにはインフレ率3%以上が理想ですが、先ずは物価安定目標であるインフレ率2%を達成するまでは、時限的に「PB規律」を凍結して、戦略的な「大胆な危機管理投資・成長投資」に係る財政出動を優先する。

頻発する自然災害やサイバー攻撃、感染症、エネルギー制約、高齢化に伴う社会保障費の増大など困難な課題を多く抱える現状にあって、政策が軌道に乗るまでは、「追加的な国債発行」は避けられません。

イェール大学の浜田宏一名誉教授が「政府の財政収支を気遣うあまり、現在苦しむ人を助けず、子供の教育投資を怠って、生産力のある人的資本を残さないでもよいのか」と表現しておられたのが分かりやすい。
 
こう書くと、「日本国が破産する」と批判される方が多いでしょう。

しかし、国債発行は「避けるべきもの」ではなく、「必要な経費の重要な財源として活用するべきもの」。もちろん、債務残高対GDP比については注視していきます。

特に、
「日本では、日本銀行に通貨発行権があり、自国通貨建て国債を発行できることから、デフォルトの心配がない幸せな国であること」
「超低金利の現在がチャンスであり、PBが赤字でも名目金利を上回る名目成長率を達成していれば、財政は改善すること」
「企業は、借金で投資を拡大して成長するが、国も、成長に繫がる投資や、将来の納税者にも恩恵が及ぶ危機管理投資に必要な国債発行については、躊躇するべきではないこと」
を、強調しておきたい。

自国通貨を持つ米国(ドル)、英国(ポンド)、日本(円)では、中央銀行が自国通貨を発行できる。買いオペをして、国債と通貨を交換することができる。国債を発行して政府支出を行えば、マネーストックは増えます。「政府の借金」が増えることは、「国民の資産」が増えることです。

『財政法』第4条が「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。 ただし、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定していることから、「建設国債なら良いが、赤字国債の発行は違法ではないか」と質されることもありますが、特別に赤字国債の発行を認める『特例公債法』(年度毎に名称は区々)を制定した上で「国会の議決を経た金額の範囲内」での発行は可能となっています。

財政当局も含め多くの方が、「子や孫にツケを回すことになるので、国債発行は望ましくない」と言われるけれど、将来世代が税金で償還するとしても、償還を受ける世代もまた同世代だ。

将来世代に負担を残すことになるのかどうかは、国債発行によって金利が上がるかどうかで判断するべきです。金利が上がれば、民間投資が阻害され、将来の消費可能資源が減ってしまう。しかし、現在のような超低金利下では、そのようなことは起こりません。

金利が一定の下で貨幣供給を続けると、インフレが止まらなくなるという指摘もある。そのような場合には、「危機管理投資」と「成長投資」について、柔軟に年間投資額を調整すればよい。

「強い経済」は、中期的には財政再建に資するものであり、将来世代も含めた全世代の安心感を創出するための社会保障を充実させる上でも不可欠です。外交力や国防力、科学技術力や文化力の強化、そして豊かな教育の実現にも直結する。

『サナエノミクス』においては、歳出分を全て国債に頼るわけではありません、「分厚い中間層を再構築するための税制改正」の考え方についても書かせていただきます。

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