台湾有事はこうして起こる|山崎文明

台湾有事はこうして起こる|山崎文明

「中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することである」―アメリカの最新研究が今話題を呼んでいる。一方で、中国による機雷敷設によって台湾有事が勃発するシナリオも現実味を帯びる。もし台湾海峡が封鎖されれば日本はどうなるのか。報じられない「台湾有事の盲点」を緊急分析する。


公開されている情報によると、中国は現在、14隻の81式掃海艇と16隻の小型の82式掃海艇を保有している。そのほかにも様々な沿岸・港湾掃海艇を保有しているが、クイックストライク機雷より性能の劣る係留型の機雷にしか対応できない。

2003年のイラク侵攻の際に米軍は10隻の掃海艇を出している。この時、1隻の掃海艇は1日当たり0.8個から2個の機雷を除去している。仮に中国人民解放軍海軍に掃海能力があったとして、3分の1の艦船が整備で使用できないと仮定して、20隻の掃海艇が毎日、掃海に当たった場合、840個の機雷除去のために50日から90日を要する。これは中国の掃海艇が全く被害を受けない前提であり、掃海作業中の事故を想定すればさらに遅れることになる。米軍が数日に一度、新たに機雷原に機雷を追加投入すれば、台湾海峡の封鎖はできる。

問題はそのために必要となる機雷の備蓄が十分にあるのかという点である。ロシアのウクライナ侵攻に見られるように弾薬が枯渇することが、最大の問題である。マシュー・カンシアン氏は、クイックストライクの単価が3万ドルのミサイル誘導弾と同程度であれば他の手段と比較して、例えば長距離対艦ミサイル(AGM-158C)の396万ドルと比較しても、安上がりな軍事オプションであるとしている。「水雷は歴史的に有効な兵器であることは間違いないが、米国はあまりに無関心である」とし、軍事オプションとしての機雷戦への準備を怠らないようにと述べている。

中国軍の機雷戦

台湾有事の際の機雷敷設戦を中国は、どのように考えているのだろうか。2009年に米海軍大学中国海洋研究所から発刊された『中国の機雷戦(Chinese Mine Warfare)』には、最も現実的なシナリオとして、機雷戦を取りあげている。

今年8月のペロシ米下院議長の台湾訪問への抗議として行われた中国人民解放軍の海軍、空軍、ロケット軍、戦力支援軍、統合後方支援軍が参加した台湾周辺の6箇所の空域及び海域での大規模な軍事訓練のようなものではなく、実際の中国の台湾への侵攻は、台湾の抵抗を硬化させず、死傷者と物理的損害を局限化する方策として機雷戦を計画している可能性が高いとしている。台湾は、人口の98%が漢民族であり、中国もまた人口の91%が漢民族であることから、中国人民解放軍としても中国国内の世論にも配慮する必要があり、同一民族間での殺し合いは避けたいはずだ。また、物理的損害も台湾の価値を毀損することになり、弾道ミサイルによる攻撃や空爆は、避けたいのが本音であろう。

大規模な軍事演習は、あくまでもペロシ訪台に対する脅しである。多くの台湾人の殺傷をするかもしれないミサイル集中攻撃よりも、殺傷を伴わない機雷敷設戦は、中国にとってもグレー・ゾーンの戦略として採用される可能性は高いのだ。

中国の機雷戦(Chinese Mine Warfare)

改造された民間船も動員される中国の機雷敷設

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