無差別テロの予告と暴動・暗殺の予兆
安倍晋三元総理の国葬儀を9月27日、東京千代田区の日本武道館で行う予定だ。国葬には米国のバイデン大統領の名代としてハリス米副大統領やインドのモディ首相などが参列予定である。安倍元総理が築き上げた「自由で開かれたインド太平洋」戦略を岸田総理が引き継ぐ重要な弔問外交の場ともなる国葬だが、その警備が不安だ。
安倍元総理暗殺以降、不穏な動きが続いている。マスメディアも統一教会問題を主軸に国会議員や政府への憎悪をあおり続けている。国葬への反対意見をあおる論調を連日繰り返すメディアだが、一方で非道な殺人犯である山上徹也容疑者をメディアは非難しなかった。
同情を誘う報道を繰り返したことで、山上容疑者への減刑を求める署名運動まで起きている状況だ。山上容疑者に対しての報道の流れを日本のみならず、全世界のテロリストは必ず見ているだろう。
安倍元総理暗殺事件でテロ行為のハードルが下がった。すでにテロリストたちが動き出した予兆は多数ある。7月下旬、10を超える自治体に脅迫メールが届いた。
「9月27日に開催される安倍晋三元総理の国葬を中止しなければ、小・中学校から濃硫酸等を盗み国葬会場の日本武道館に散布する。市内の子どもを誘拐し、誘拐した子どもに高性能な爆弾を仕掛け、公共交通機関や商業施設をはじめとした人が集まりそうな場所に特攻させる」
このほかにも無差別テロの予告ともとれるような内容が多数あり、山上容疑者を賞賛し、革命を呼びかけるチラシもばらまかれた。
国会議員にも脅迫状は届いている。高市早苗経済安全保障担当大臣の事務所には「首を洗って待ってろ」などと書かれた脅迫状が届き、ツイッター上では「もし国葬を実施したら、次は岸田だ」と書いた男が書類送検されている。
新型コロナ感染症の影響で行動制限や経済的なダメージも大きい。そんななか、政治家や政府、国への憎悪をあおり、暗殺事件の容疑者に対して容認するようにとれる報道を続けていいのか。
連日の統一教会や国葬反対の報道はもはやアジテーションだ。ここで社会不満を焚き付けて、暴動やテロにエスカレートさせていく邪悪な力すら感じる。
瀬戸際でテロを未然に防いできた過去
台湾有事には中国のみならず、ロシア、北朝鮮からの軍事侵攻も同時発生する可能性がある。日米合同の戦力でも心もとない。クアッドや欧米諸国等の助けがなければとても防ぎきれない。弔問外交でその支援の絆を確認しなければ日本の安全保障は成り立たない。国葬は安全保障の根幹にもかかわる重大な国の行事なのだ。
しかし前述のように不穏な動きが続いている。これまでも日本は、ギリギリの瀬戸際でテロを未然に防いできた。
1986年、東京で開催されたサミットでは、過激派が迎賓館を狙い迫撃弾を発射した。迫撃弾は歓迎式典会場を越えて、路上に着弾し、直径20cm、深さ5cmの大穴を開けた。その後、東京都内の地下鉄駅で時限装置による同時発火事件が起き、交通が大混乱した。
2016年5月26日開催の伊勢志摩サミット直前の2月、首都圏で過激派「革労協反主流派」の「ゲリラ計画」が発覚し、警視庁公安部による首都圏「アジト」の一斉摘発があった。ここで飛翔(ひしょう)弾の一部や偽造ナンバープレート等大量の部品を押収した。
伊勢志摩サミットはほんの数か月前のこの一斉摘発がなかったらどうなっていたのかはわからない。多くの日本人は、平和な日本でテロや暴動、暗殺なんておきるはずがないと考えているが、これまで首の皮一枚でつながっていただけである。テロや暴動のリスクは常に私たちのそばにあったのだ。
世界中でテロ活動は頻繁に起きている。多くの国々から要人が一同に会する国葬は、国内の過激派のみならず、世界中のテロリストから注目されている。しかも、安倍元総理暗殺を許した国として、日本の警備体制の甘さは世界中に報道されてしまった。
テロや暴動のリスクは高い。国葬により弔問外交が成功すれば、安倍元総理の遺志をついでインド太平洋諸国との強固な安全保障体制を築くことができる。
しかし、警備体制の穴をついて大規模な暴動やテロ、暗殺がおきれば、それをきっかけに日本の国威が失墜するリスクもある。