我が「NHK改革」具体案|高市早苗

我が「NHK改革」具体案|高市早苗

高止まりする受信料や営業経費、肥大化する放送波、子会社等との「随意契約率」93・5%という驚くべき実態、国民に還元されない多額の繰越剰余金――「伏魔殿」と称されるNHKを国民の手に取り戻すために、高市早苗前総務大臣が掲げたNHK改革の具体案!


「NHKに手を出すと痛い目に遭うぞ」

初めて総務大臣に任命された平成26年9月3日に、先輩国会議員からいただいたアドバイスは、いまでも忘れられない。

「総務省に行ったら、とにかく地方行政分野に没頭すればいい。NHK問題には、できるだけかかわらないほうがいいよ。NHKは『伏魔殿』だから、手を出すと痛い目に遭うぞ」  

安倍内閣において、平成26年9月から平成29年8月までの間と令和元年9月から令和2年9月までの間で、合計5回、総務大臣に任命され、通算で約4年間、総務省で働いた。  

総務省は、平成13年の省庁再編により、旧自治省、旧郵政省、旧総務庁が統合して誕生した官庁で、所掌範囲は、地方税財政を含む地方行政制度、消防・救急行政、放送行政、郵政行政、情報通信技術を活用した成長戦略、他の府省庁を含む国の基本的な行政制度の管理・運営と多岐にわたる。   

先輩国会議員の親切なアドバイスの真意をほとんど理解できないまま、早々に「NHK改革」に踏み出してしまった私は、やがてNHKという長い歴史を誇る巨大組織による巧妙で強烈な抵抗や、一部NHK幹部による罵詈雑言に苦しむこととなった。  

平成29年に私が総務大臣を退任した時には、NHK職員の皆様が祝杯を挙げたという話を聞き、昨秋、再任された時にはNHKでは失望の声が広がったということも知っている。  

最初の大臣就任翌年の平成27年4月に、『クローズアップ現代』という番組に関してNHKに行政指導をした。NHKは行政指導文書の受け取りを拒否し、文書を持参した職員は、深夜まで数時間も屋外で待たされるという可哀想な目に遭った。  

大臣として最初に国会で審議をしていただいた『平成27年度NHK予算』に付した『総務大臣意見』には、「公共放送への高い信頼を確保するため、子会社等を含め、コンプライアンスのより一層の確保に向けて組織を挙げて全力で取り組むこと」と書いた。

相次ぐ不祥事や苦情の声

前年3月に2件の不祥事が発覚したことを受けての『総務大臣意見』だったが、NHK予算が国会で承認されて3カ月後の平成27年6月にはNHKアイテックでカラ出張問題、同年7月にはNHKインターナショナルで危険ドラッグ事件、平成28年にはNHKアイテックで総務省の補助事業だった地デジ難視対策のお金の着服疑惑、別の社員による新たな不正受領疑惑と、立て続けに問題が発覚していた。  

組織ぐるみではなく個人による犯罪だったとしても、「長期にわたって、子会社の経理が適切に行われていなかったこと」 「NHK本体が、出資先の子会社の経理をチェックできなかったこと」は大きな問題だ。   

当時の籾井勝人会長に対しては「抜本的な子会社改革」を要請したが、現在も残る課題があり、それらは後記する。  

2019年秋、2年1カ月ぶりに総務省に戻ってみると、日本郵政グループとNHKの間で、かんぽ生命不正勧誘問題を取り上げたNHKの番組の取材手法などを巡って争いが勃発していた。  

国民の皆様のご批判は、不適切な勧誘活動をしていながらNHKに圧力をかけたとされる日本郵政グループにも、日本郵政グループに対して弱気な対応をしたNHKにも向けられており、国会でも本件と『放送法』の解釈が取り上げられ、私も答弁対応に苦慮することとなった。  

私宛の手紙や公式サイトのご意見コーナーでも、「NHKの受信料が高過ぎる」「左傾化した番組が多いので、NHKを観たくない。NHKにスクランブル(衛星放送などで使われているが、特定チャンネルを受信できないように変調すること)をかけて、テレビを持っていてもNHK受信料を払わなくていいように制度を変えて欲しい」「急に訪ねてきたNHKの訪問員が、テレビの有無を確認すると言って無理やり部屋に上がり込んできて、怖かった」など、多くの苦情やご意見が寄せられていた。

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