【読書亡羊】高市自民大勝、議席増は「推し活」のせいなのか?  加山竜司『「推し」という病』(文春新書)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「推し活」と「ブーム」は何が違うのか

「推し活選挙」との文言が新聞やニュースサイトの文面に踊っている。特に朝日新聞は否定的な意味で「政治の世界に『推し活』が進出してきた結果がこれだ」との主旨の記事を複数掲載している。

高市総理による突然の解散、「私か、私以外か」を迫った争点設定、そして歴史的大勝という結果を経てのものだ。なぜ高市率いる自民党はここまで躍進することができたのか。その理由を初の女性総理誕生のお祝いムードや一時的なブーム、あるいは対中姿勢などではなく、あえて「推し活」に求めようというのである。

確かに高市総理は解散表明演説の時点から「私推し」を前面に出してはいた。選挙期間中はXでもあらゆる候補者の応援ポストにもれなく「誰それさんへの応援が、私、高市早苗の力になります」との一文が盛り込まれていたほどだ。

だが、今回の大勝は本当に「推し活的な投票が増えたから」なのだろうか。

そもそも、朝日記事で論客たちが言っている「推し活」の定義とは何なのか。ブームや「風」と何が違うのか。「推し活」とはどのようなものを指すのか、を考えるために手に取ったのが加山竜司『「推し」という病』(文春新書)である。

本書はアイドル、ホスト、バンド、Vtuberなどさまざまなジャンルや職業の人々を「推す」当事者への取材から、その業までを浮き彫りにしている。

著者の加山氏はマンガ家のインタビューなどサブカルやエンタメ業界での取材を重ねてきたライターで、本書でも病にも達するかというほどのコアな「推し活」実践者たちに接触している。

「推し」という病

「後悔はないが疑問はあった」

それぞれの推し方はさまざまだが、人生の多大なる時間と費用を投じていることでは共通している。ホストへの「推し活」となると金額は跳ね上がるが、アイドルやVtuber相手でも月10万円近くを投じ、それを10年も続けてきたという人ばかりだ。単純計算でも1000万円以上を「推し活」に投入していることになる。

推しに投じるためにこそ給料の良い職種を選び、イベントに参加したいがためにシフトの自由の利く職場を選ぶ。桁違いの金額が必要となるホストを推すには自らが体を売る必要さえあるのだ。

第四章に登場する、女性アイドルを14年間推し続けたという46歳の女性は、推し活に身を投じていた当時を振り返ってこう述べている。

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