いったん「中台戦争」が開始されたら、台湾に味方する国々は多い。新軍事同盟である「AUKUS」(米英豪)、安倍晋三首相が提唱した戦略同盟「Quad」(日米豪印) 、機密情報共有枠組みの「Five Eyes」(米英豪加NZ)等のメンバーは、真っ先に台湾を支援するだろう。
その他、フランスも台湾側に立って「米中戦争」に参戦するのではないか(場合によっては、ドイツも参戦するかもしれない)。
既述の如く、近年に至るまで、習近平政権は対外強硬路線の「戦狼外交」を展開し、“四面楚歌”の状態にある。したがって、中国に味方する国はほとんどないだろう。「親中」のイランやパキスタンが積極的に中国を支援するとは考えにくい。一方、ロシアや北朝鮮は「米中戦争」に関して高みの見物をするのではないか。
したがって、「海洋国家」群の台湾・米国・日本・英国・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・フランス+インドVS. 「大陸国家」中国という図式になる。中国共産党は、苦しい戦いが強いられるだろう。
実は、昨2020年の夏、北戴河会議では「対外的にはソフトな(柔軟な)対応、対内的にはハードな(強硬な)対応」が決定された。それにもかかわらず、依然、北京政府は、「戦狼外交」を継続している。習政権は党内闘争が激しいため、対外的に強硬姿勢を取らざるを得ないのかもしれない。
人民解放軍の問題
たとえ中台だけで戦火を交えても、中国軍が台湾軍に勝利するとは限らない。今年7月、米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」研究員のイアン・イーストンは「通常、攻撃側は防御側の3倍の兵力が必要である。台湾はおよそ45万人(予備役を含む)の兵力を持つ。もし地形が不利な場合、攻撃側は5倍以上の兵力が必要となる。そうすると、人民解放軍幹部は台湾へ派遣する兵力は、少なくても約135万人、できれば約225万人欲しいだろう」(「敵対的な港:台湾の港湾と中国解放軍の侵略計画」)と鋭く指摘した。
現在、中国人民解放軍は総数約200万人である。仮に、約135万人の兵力を台湾へ投入したとしても、台湾軍に勝てるかどうかはあやしい。ひょっとすると、中国の周辺国が、その隙を突いて兵を動かすかもしれない。残りの兵力(約65万人)で国内を防衛できるのだろうか。