残念な「慰安婦像受け入れ」
2017年12月12日、大阪市「議会はヘサンフランシスコ市における「慰安婦像及び碑文の受け入れ並びに慰安婦の日制定に対する反対決議」を可決しました。
サンフランシスコ市に慰安婦像と碑を民間団体が設置したのが、2017年9月末。その寄贈をサンフランシスコ市が正式に受け入れたのが、11月22日。まさに遅すぎた反対決議でした。
サンフランシスコ市では、慰安婦像の設置・市への寄贈について、市議会が市長の背中を押していました。サンフランシスコの市議会議員11人のうち4人が中国・韓国系の議員、そして市民の25%が中国系で、市議会に対する積極的なロビー活動が行われていたのです。さらには、サンフランシスコ市の前市長で12月12日に亡くなったエドウィン・リー市長の夫人も、この方針に積極的だったと聞いています。
市長の受け入れ決定に先だって、市議会では像の設置・受け入れと碑文の内容、さらに9月22日を慰安婦の日とする方針が決議されていました。特に碑文の内容は問題で、「性奴隷にされた何十万人の女性」「大多数は囚われの身のまま命を落とした」など、虚偽の内容が盛り込まれています。
これを黙って見過ごすわけにはいきません。そのため、橋下前大阪市長時代に3回、私が市長になってからは5回、サンフランシスコ市長宛に公開書簡による申し入れを行ってきました。これに加えて、サンフランシス市議会のカウンターパートである阪市議会が意思表示をすること「市長1人が自身の信条で抗議しいるのではなく、大阪市民の総意として異議を申し立てている姿勢をしてほしいと考えていたのです。
大阪自民党が「慰安婦像設置反対決議」に反対
大阪市議会では、2017年の5月と9月に「維新の会」の大阪市議団から「慰安婦像と碑文の設置計画を見直すよう求める決議」を提出しましたが、いずれも否決されています。公明党や共産党が反対するのはまだ理解できますが、この「慰安婦像に反対」する決議案に大阪自民党も反対したのは、理解に苦しみます。
いくら大阪自民党と大阪維新が政治的に対立する場面が多いとしても、慰安婦に関することは国内の政争の具にすべきものではなく、日本の名誉を守るために声を挙げなければならない問題のはずです。像設置反対に反対する理由にはならない。
大阪自民党の市議会の反対答弁では、「外交問題だから市がかかわるべきでない」という理由を挙げた議員もいました。しかし、サンフランシスコ側も市議会が中心となって像の設置や寄贈受け入れを進めている以上、カウンターパートである大阪市議会が市としての意思表示をすべきです。
にもかかわらず、寄贈を受け入れる前の時点で、市議会としての強い意思表示ができなかったことは非常に残念です。
ではなぜ、大阪自民党は慰安婦像の設置・受け入れが決定したあとになって、ようやく「受け入れ反対」の決議に賛成したのか。おそらく、国が動き始めたからでしょう。「安倍総理は11月21日、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の質問に対して、「慰安婦像の寄贈は、わが国政府の立場と相容れない極めて遺憾なことだ。政府としては、サンフランシスコ市長に拒否権を行使するよう申し入れを行った」と述べました。
また、河野外務大臣も11月28日の衆院予算委員会で、日本維新の会の下地幹郎議員の質問に対し、「サンフランシスコの慰安婦像の碑文には、史実でない極めて不適切な表現が含まれており、わが国政府の立場とは相容れない極めて遺憾なものだ」と述べています。しかし、像が設置され、寄贈受け入れが決まってからではすべてが遅すぎます。
今回の件については、国の対応にも疑問があります。現地の正確な情報を把握しづらい自治体としては、領事館の情報をあてにするしかない。しかし、サンフランシスコ市で慰安婦像の問題が発生しているという件について領事館に情報を求めても、的確な情報が入ってこない。それどころか、領事館の対応からは「慰安婦像の問題については触れてほしくない」という雰囲気さえ感じたほどです。
われわれはあくまでも一地方自治体であり、現地の情報を正確に把握して対応することは困難です。現地に活動部隊を持っているわけではなく、国際交流の窓口はあっても外交のための予算はありません。反対のロビー活動はおろか、情報収集をする体制すら整っていない。
今回も、サンフランシスコ市議会の背後で民間の「慰安婦正義連合」という中国系米国人を中心とする団体が動いていますが、彼らがどのようなロビー活動を展開していたのかまでは自治体では察知しきれません。