慰安婦像で姉妹都市解消 虚偽に基づく像・碑文は受け入れられない!

慰安婦像で姉妹都市解消 虚偽に基づく像・碑文は受け入れられない!

大阪市長・吉村洋文


大阪市と60年に渡り、姉妹都市提携を行なってきたサンフランシスコ市に寄贈された「慰安婦像」と「碑」。その設置について、大阪市は再三にわたり、市長自ら撤回の申し入れを行ってきました。そして今回、7月にサンフランシスコ市長に就任したロンドン・ブリード氏宛てに、改めて「公共物化を撤回する意思の有無を確認する書簡」を送付したことが報じられました。


これに伴い、『月刊Hanada2018年3月号』に掲載された吉村洋文・大阪市長の記事を公開いたします。

サンフランシスコ市への申し入れまでの経緯、大阪市民の「民意」がよくわかる記事です。ぜひお読みください。

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残念な「慰安婦像受け入れ」

2017年12月12日、大阪市「議会はヘサンフランシスコ市における「慰安婦像及び碑文の受け入れ並びに慰安婦の日制定に対する反対決議」を可決しました。

サンフランシスコ市に慰安婦像と碑を民間団体が設置したのが、2017年9月末。その寄贈をサンフランシスコ市が正式に受け入れたのが、11月22日。まさに遅すぎた反対決議でした。

サンフランシスコ市では、慰安婦像の設置・市への寄贈について、市議会が市長の背中を押していました。サンフランシスコの市議会議員11人のうち4人が中国・韓国系の議員、そして市民の25%が中国系で、市議会に対する積極的なロビー活動が行われていたのです。さらには、サンフランシスコ市の前市長で12月12日に亡くなったエドウィン・リー市長の夫人も、この方針に積極的だったと聞いています。

市長の受け入れ決定に先だって、市議会では像の設置・受け入れと碑文の内容、さらに9月22日を慰安婦の日とする方針が決議されていました。特に碑文の内容は問題で、「性奴隷にされた何十万人の女性」「大多数は囚われの身のまま命を落とした」など、虚偽の内容が盛り込まれています。

これを黙って見過ごすわけにはいきません。そのため、橋下前大阪市長時代に3回、私が市長になってからは5回、サンフランシスコ市長宛に公開書簡による申し入れを行ってきました。これに加えて、サンフランシス市議会のカウンターパートである阪市議会が意思表示をすること「市長1人が自身の信条で抗議しいるのではなく、大阪市民の総意として異議を申し立てている姿勢をしてほしいと考えていたのです。

大阪自民党が「慰安婦像設置反対決議」に反対

大阪市議会では、2017年の5月と9月に「維新の会」の大阪市議団から「慰安婦像と碑文の設置計画を見直すよう求める決議」を提出しましたが、いずれも否決されています。公明党や共産党が反対するのはまだ理解できますが、この「慰安婦像に反対」する決議案に大阪自民党も反対したのは、理解に苦しみます。

いくら大阪自民党と大阪維新が政治的に対立する場面が多いとしても、慰安婦に関することは国内の政争の具にすべきものではなく、日本の名誉を守るために声を挙げなければならない問題のはずです。像設置反対に反対する理由にはならない。

大阪自民党の市議会の反対答弁では、「外交問題だから市がかかわるべきでない」という理由を挙げた議員もいました。しかし、サンフランシスコ側も市議会が中心となって像の設置や寄贈受け入れを進めている以上、カウンターパートである大阪市議会が市としての意思表示をすべきです。

にもかかわらず、寄贈を受け入れる前の時点で、市議会としての強い意思表示ができなかったことは非常に残念です。

ではなぜ、大阪自民党は慰安婦像の設置・受け入れが決定したあとになって、ようやく「受け入れ反対」の決議に賛成したのか。おそらく、国が動き始めたからでしょう。「安倍総理は11月21日、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の質問に対して、「慰安婦像の寄贈は、わが国政府の立場と相容れない極めて遺憾なことだ。政府としては、サンフランシスコ市長に拒否権を行使するよう申し入れを行った」と述べました。

また、河野外務大臣も11月28日の衆院予算委員会で、日本維新の会の下地幹郎議員の質問に対し、「サンフランシスコの慰安婦像の碑文には、史実でない極めて不適切な表現が含まれており、わが国政府の立場とは相容れない極めて遺憾なものだ」と述べています。しかし、像が設置され、寄贈受け入れが決まってからではすべてが遅すぎます。

今回の件については、国の対応にも疑問があります。現地の正確な情報を把握しづらい自治体としては、領事館の情報をあてにするしかない。しかし、サンフランシスコ市で慰安婦像の問題が発生しているという件について領事館に情報を求めても、的確な情報が入ってこない。それどころか、領事館の対応からは「慰安婦像の問題については触れてほしくない」という雰囲気さえ感じたほどです。

われわれはあくまでも一地方自治体であり、現地の情報を正確に把握して対応することは困難です。現地に活動部隊を持っているわけではなく、国際交流の窓口はあっても外交のための予算はありません。反対のロビー活動はおろか、情報収集をする体制すら整っていない。

今回も、サンフランシスコ市議会の背後で民間の「慰安婦正義連合」という中国系米国人を中心とする団体が動いていますが、彼らがどのようなロビー活動を展開していたのかまでは自治体では察知しきれません。

大阪市民は姉妹都市解消を支持

私が初めて「サンフランシスコ市が像と碑文の寄贈を受け入れるならば、大阪市は姉妹都市関係を解消する」と明言したのは、2017年9月25日のことです。

60年も続いた関係を解消することには当然、私自身も忸怩たる思いがありますし、不本意です。が、そこまでして初めて、日本側、大阪市側の抗議の意志が示せますし、信頼関係が完全に破壊された状態で姉妹都市交流を続けるほうが、自治体として問題です。

この決断について、大阪市民からは賛成の声を多くいただいています。11月末までに、市外居住者を含む方々から寄せられたご意見は1347件。そのうち、姉妹都市解消に賛成するものは969件。反対は104件でした。そのほか、合計で1100件あまりが、少なくとも慰安婦像の設置に反対するものでした。

朝日新聞大阪版が〈「姉妹都市解消、勝手にするな」「慰安婦像「問題」で抗議〉(2017年12月9日付)などと記事にしているように、たしかに特定の団体からは抗議の声が寄せられてはいます。

しかし市民の広い声に耳を傾ければ、「慰安婦像受け入れはけしからん」「姉妹都市解消もやむなし」とする声が圧倒的に多い。もちろん、姉妹都市交流の重要性を指摘する声もあります。私自身も交流を重視しているからこそ、サンフランシスコ市側に「姉妹都市交流60周年の節目の年に、信頼関係を破壊するような慰安婦像の受け入れを認めないでほしい」と再三にわたって要請してきたのです。

通常の都市間交流とは違い、姉妹都市の場合には英訳で「sistercity」というとおり、分野を問わない包括的な連携を行い、場合によっては特別な税を投入します。このような姉妹都市交流には当然、双方の間の強固な信頼関係と市民の理解が必要です。

にもかかわらず、大阪市の再三にわたる要請を置き去りにし、日本政府の要請までも無視して、サンフランシスコ市が積極的な姿勢で慰安婦像受け入れを決めたことで信頼関係が崩壊してしまった。こうなった以上は、むしろ何もなかったかのように交流を続けることのほうがおかしいのではないでしょうか。

事情に詳しい人のなかには、「姉妹都市解消は、日米分断を目論む中韓団体の思う壺だ」という理由で反対する声もあります。しかし像に加え、嘘ばかりの碑文に対して黙っているほうが思う壺です。形だけの抗議では、相手に「日本は慰安婦像について、国内向けに形ばかりの抗議はするが、国際的には最後は黙認する」という誤ったメッセージを与えることになります。

現在、姉妹都市関係の解消は、すでに大阪市役所内では意思決定を終え、相手に通知すれば完了する段階まで準備は整っています(注:2018年1月末時点)。リー前市長の急逝によって手続きを一時停止していますが、新市長が任命された段階で通知を行う予定です。

もちろん、これで終わりではありません。姉妹都市は解消となりますが、60年間継続してきた歴史は残ります。なぜ、ここまで続いてきた関係を解消するほど大阪市は強い抗議の意思を持っているのか、慰安婦像の設置、碑文の内容がどれだけ問題かなど、サンフランシスコ市が「慰安婦の日」と定めた9月22日に、改めて大阪市民にも閲覧可能な公開書簡で抗議の意を示す方針です。

許しがたい朝日新聞の社説

姉妹都市解消について、朝日新聞は、〈姉妹都市市民交流を続けてこそ〉と題する2017年11月19日の社説で次のように反対論を展開しました。

大阪市の吉村洋文市長は「不確かな主張で、日本へのバッシングだ」と再三抗議してきた。サンフランシスコ側が方針を覆さない限り、年内にも姉妹都市提携を解消する意向だ。ちょっと待ってほしい。姉妹都市の関係のもとで育まれてきた交流は、双方の市民の歴史的財産である。市長の一存で断ち切ってよいものではない。

意見を受け入れなければ友好関係を解消するというのは、冷静さを欠いている。

私は朝日新聞に「ちょっと待ってほしい」と言われましたが、「ちょっと待ってほしい」と言いたいのはこちらのほうです。朝日新聞は、慰安婦問題について最も大きな責任を負っている新聞社であることを全く自覚していないのではないでしょうか。

先に引いたサンフランシスコ市の碑文を見ても、この虚偽の内容を広めた張本人こそ、まさに朝日新聞です。朝日新聞は2014年に、慰安婦問題に関して事実と異なる報道をしてきたと謝罪・訂正した件について、もう少し真摯に考えるべきではないでしょうか。

「訂正したのだからいいだろう」という話ではなく、海外の論調に影響を与えたことについて反省し、誤解を解くための海外向けの発信を自ら行うべきでしょう。

何より、日本国民の多くが、慰安婦問題の「嘘」について知ってしまった。碑文の内容ひとつとっても、事実でないことを多くの人が知っている。気づいているのです。だからこそ、大阪市に寄せられる声も、慰安婦像設置に反対し、姉妹都市解消に賛成するものが多いのでしょう。

アメリカでも、クリントン、ブッシュ政権時代に約8年もかけて徹底的に調査した日独の戦争犯罪に関する850万ページの資料によっても、「日本軍による組織的な慰安婦の奴隷化」を示すものは発見されなかったと結論づけられています。

たしかに、戦場における女性の性の問題は、日本も積極的に取り組んでいくべき大きな課題です。そのためには、何よりも事実」を明らかにすることが重要です。また、旧日本軍のみを問題にするのではなく、米軍、ソ連軍、ドイツ軍、時代を下ればベトナム戦争時の韓国軍の問題も含めて考える必要がある。

敗戦国である日本の行状は「悪事」に結びつきやすいのでしょうが、「日本軍だけが極めて特殊なことをやっていた」という認識では、「戦場における女性の性の問題」という大きな問題が、「旧日本軍による特異な問題」に矮小化されかねません。

また、この慰安婦像や碑文の設置を推進している団体は、「女性の人権」を隠れ蓑に日本に対する政治バッシングを行い、慰安婦を政治利用しているのだと申し上げたい。このような運動を続けても、本当の解決にはならないのです。

これは日本全体の問題

今回のサンフランシスコ市での経緯を振り返ると、その手段は非常に「練られた」ものだったと実感しています。

民間団体が慰安婦像を建て、将来にわたるメンテナンス費用までを寄付するといって市議会議員にロビー活動をかけ、市議会が寄贈受け入れ決議をし、市長に認めさせる。この場合、自治体としては税金の持ち出しがないため、手続きを含む負担が非常に軽いのです。

リー前市長は私に宛てた書簡で、寄贈受け入れについて「地域の声に応える必要がある」と述べていましたが、税金を投入するとなれば、慰安婦像や碑の設置に必ずしも積極的ではない市民に対する税負担についての説明責任を問われますし、反対意見も出る可能性が高いため、実現までのハードルが高い。

しかし、維持費までを含めて寄付するということになれば、自治体の持ち出しは一切なく税的負担がないため、市民に対する説明責任は薄まります。相手は最も効率的な手段を考え抜いたうえで行動していると見るべきではないでしょうか。

今回、この方法でうまく事が運んだことは「運動」の成功事例となり、海外の各地で同じような手法が展開される可能性があります。自治体では対応は限られるため、国が早急に手を打たなければならない。なかには、像の建設や寄贈を容認してしまう日本側の自治体や首長も出てきかねません。

このような事態の頻発を防ぐためには何事も初動が大事で、像が建ってしまってからでは遅い。第二、第三のサンフランシスコ市が生まれないよう、国にはより強い対応を求めたい。

何よりもこの慰安婦像問題についての対応は大阪市民だけではなく、日本人が国全体の問題として考え直さなければならないと考えています。

 

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著者略歴

吉村洋文

大阪市長 1975年、大阪生まれ。98年、九州大学法学部卒業、司法試験に合格。弁護士、大阪市議を経て、14年、「維新の党」から国政に立候補し、衆議院議員選挙で初当選。15年、衆議院議員を辞職し、橋下徹氏の大阪市長辞職に伴う市長選に出馬、初当選を果たす。


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