本書刊行の影響でオーストラリアの政治が変わったとまでは断定できませんが、この本が出た時期から潮目が変化したのは事実です。オーストラリア国民が中国共産党に対して抱く感情はかなり悪化しました。というより、むしろ怒りが向けられていると言ってもいいと思います。
オーストラリア人たちは徐々に、本書が明らかにしたような情報についてよく知ることになったため、公の場で中国共産党に対して阿る発言をする人々の存在が大きく目立つようになったのです。 たとえば鉱山業界の有力者、アンドリュー・フォレストというオーストラリア国内では著名な人物がいますが、彼が新型コロナウイルスへの対応で中国や習近平を称賛するコメントをした時には、それを批判する意見が多く聞かれましたし、フォレストが交渉して中国から医療関連器具や防護服などを融通してもらうと、彼に疑念の目が向けられました。
私の本が売れ続けているのはありがたいのですが、それ以上に、オーストラリア国内で、中国共産党に対してどう対峙すべきか、議論が巻き起こったことが嬉しかった。その議論のほとんどは、本書に追い風となってくれるもので、何よりも多くのオーストラリア人たちに実態を知ってもらえたのがありがたかった。 「目を覚まさせてくれてありがとう」というコメントもいただきました。
「人種差別主義者(レイシスト)だ」というレッテル貼り
ただし、猛烈な批判にも晒されました。とくにひどかったのは親中派、本書で「中国の友人」として取り上げている人々からの酷評でした。「北京(ベイジン)ボブ」と仇名される元外相のボブ・カーを筆頭に、本書に登場した現役の政治家や元有力政治家たちが、私に対して牙をいてきたのです。一週間に2人の元首相から、新聞で批判的な意見を書かれたこともありました。
主な批判は、私を人種差別主義者(レイシスト)であるとするもので、中国人を攻撃しているとか、「中国恐怖症に陥っている」というものでした。私は本書のなかで明確に「中国人」と「中国共産党」を区別して論じていたのですが。
他にも中傷のEメールやツイッター上での攻撃、さらにはパスワードを盗んで私のSNSアカウントを乗っ取ろうとするなど、嫌がらせは多々ありました。実際にここまでひどい目に遭うとは、思いもよらなかったほどです。