『目に見えぬ侵略』の続編となる『隠された手(Hidden Hand)』(ドイツの中国専門家マレイケ・オールバーグ氏との共著)が、オーストラリアで6月半ばに発売となります。この続編を書いていて気づいたのは、中国共産党によって影響力を発揮するために実行されている計画の青写真は、世界各国すべて共通しているということでした。
とりわけ興味深いと思ったのが、中国共産党が毛沢東の「農村から都市を包囲する」という戦略をどこでも採用していることです。
実例を挙げましょう。オーストラリアの首都キャンベラは連邦政府の本拠地で、この地の対中姿勢はここ数年間で劇的に変わりました。経済から安全保障へと舵が切られ、外国、つまり北京からの介入に対する警戒感が広まっています。以前は貿易や投資を中国からいかに呼び込むかだけが語られていましたが、いまや注意深い姿勢に変わり、オーストラリアの主権や規制という言葉が聞かれるようになりました。
すると、北京は戦略を変えました。オーストラリアの州政府や各都市など、地方自治体との関係強化に動き出したのです。姉妹都市関係は、オーストラリアと中国の都市の間で数多く締結されています。この関係を使って影響を与える方向にシフトしたのです。
オーストラリアの田舎の地域とまず関係を強化してから、中心部である都市に攻め込む。これは、まさに中国共産党が国民党に都市部から追われたあと、再編して再び攻め上がっていった歴史的な実例に基づく戦略です。これを外国への影響工作、つまり統一戦線工作においても使っているのです。
たとえばアメリカなら、連邦政府のトランプ大統領や政権と関係が悪化しているので、各州政府との関係を改善する動きが見られます。大都市の市長や州知事への工作が盛んになっているのです。
実際、米中貿易紛争のさなかに、ワシントンDCの連邦政府・トランプ政権に対して地方の州政府らが抵抗し、反旗を翻している姿が数多く見られたのはそのためです。これらすべてが中国共産党の仕掛けていることとは言い切れませんが、その原因の一部は彼らの工作によるところもあるのです。これはドイツでも、オーストラリアでも同じです。
世界の金融街への凄まじい工作
もう一つの興味深い動きはイギリスです。続編の調査を始めた時、ベルリン在住のオールバーグ氏に、イギリスを調べ始めたが、中国共産党による工作の証拠は何も見つけられなかった、と報告したことがありました。しかし彼女は、「実際は凄まじく活発な活動が行われているから調べ続けて」と言うのです。それで仕方なく、中国語の文献を読めるアシスタントを雇って資料を探し続けると、イギリスに対し非常に深刻な工作が行われていることが判明したのです。
あの諜報大国イギリスに対してありえないと思われるでしょうが、実際はとんでもない影響工作が成功していました。中国共産党はイギリスの超エリートたちと密接な関係を築き、権力の源泉であるロンドンの金融街・シティにも多くの工作を行っていたのです。それ以外にも、アメリカのウォール街やドイツのフランクフルトなど、金融関係への影響工作や「友人」の獲得に極めて熱心だとわかりました。
続編で、こうした新事実を詳しく説明しました。実にショッキングな内容です。日本の皆様もぜひ楽しみにしていてください。