以前に気候変動の問題を論じていた際にも脅迫メールを受け取った経験があるので慣れてはいましたが、今回驚いたのは、私に対し最も激しく攻撃をしてくるのが、白人のオーストラリア人だった点です。
政治家や学者が、私を人種差別主義委員会にかけて訴えようとする動きもあり、実に知的分別がない人々だと愕然としました。そのほとんどが、オーストラリア内の左派から行われたことも特筆すべきかもしれません。私自身がリベラル左派寄りの人間なので、これは極めて不快に感じたところです。
とはいえ、批判されてみてわかったのは、批判したほとんどの人々が、私の本の中身を実際には読んでいなかったことです。
米公聴会で証言
2018年夏、私はアメリカ連邦議会上院の公聴会(マルコ・ルビオ委員会)に証人として呼ばれ、オーストラリアの状況を証言しました(https://youtu.be/fIb0laof-x8)。
トランプ政権によって中国問題がクローズアップされるなか、アメリカで私の本は大きな関心を集めており、上院に加えて、国務省や複数の大手シンクタンクで話をしました。
オーストラリアは「炭鉱のカナリア」でして、小国ですから先に問題が先鋭化しやすい特徴があります。他の国々、とりわけアメリカ人たちはオーストラリアの状況を見て、「彼らがこういう状況になっているから、これから我々にも同じことが起こるな」と考える利点があるようです。
先述のジョン・ガーノート記者や本書でたびたび引用した中国専門家のジョン・フィッツジェラルド教授も同委員会に呼ばれていました。
一方、本書に対するヨーロッパの反応は芳しくなく、ほぼ皆無でした。ドイツから何度か呼ばれたのと、北大西洋条約機構(NATO)本部で話をするという、夢にも思っていなかった機会に恵まれましたが、それでも2018年時点ではヨーロッパ全体の状況はあまり変わっておらず、中国共産党の影響工作に関心は薄かったというのが実感です。
本書に最も熱心に興味を持ってくれたのは台湾で、次に日本、アメリカ、そしてカナダでした。
カナダには二度行き、何度か講演も行いました。カナダにも中国系移民が多く、彼らのなかにも北京の影響力に懸念を持つ人々がいたからです。実際にカナダでも、我々と似たようなことが起こっていたわけですが、目覚めたのはオーストラリアのほうが早かったように思います。