日本でも進む習近平の『目に見えぬ侵略』|クライブ・ハミルトン

日本でも進む習近平の『目に見えぬ侵略』|クライブ・ハミルトン

菅総理に伝えたい習近平の手口。中国の報復を恐れ出版停止が相次いだ禁断の書『目に見えぬ侵略』の著者が緊急警告!中国人による多額の献金、中国のエージェントと化した国会議員――オーストラリアで行われたことは日本でも確実に進行中だ!日本よ、目を醒ませ!


世界に大きな苦しみをもたらす

今回の新型コロナウイルス問題でも、国際社会は中国共産党の不透明性をつくづく思い知らされました。  

ウイルス発生に対する北京の反応で明らかになったのは、中国共産党が情報統制を失うことをきわめて恐れていた点です。これは中国政府が初動段階で、一般の人々に警鐘を鳴らし、情報を提供しようとしていた医師や科学者に対して、非常に懲罰的なアプローチを採用していたことからもよくわかります。  

北京は国際社会全体を欺こうと必死に動いていたのであり、その結果として世界に大きな苦しみをもたらすことになりました。  

私が中国問題に関心を持ったのは最近のことです。2016年頃からオーストラリアに対する中国共産党の介入が気になり、まず国内の中国専門家、特に中国共産党の影響工作に詳しい人々に話を聞きました。彼らは驚くほど協力的で、取材していろいろな文献を教わり、段々と全体像がまとまってきたので、さらに中国本土や香港、アメリカなどに出向いてインタビューを繰り返し、最終的に膨大な量の文献を読み込み、ようやく完成形が見えてきたのです。

Getty logo

『目に見えぬ侵略』の執筆開始

そこで、『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)の執筆を開始しました。2016年10月のことです。この年の夏頃からオーストラリアの新聞で、中国共産党が豪州政治に影響を与えようとしているという記事がいくつか出始めていました。そのため、過去に私の本を何冊か出してくれていた出版社の旧知の編集者に声をかけると、「素晴らしいアイディアだ、すぐやりましょう」という返事だったので、書き始めたのです。  

リサーチと執筆に2017年の丸1年間をかけ、草稿が完成したあとに3~4人の専門家に読んでもらいました。私にとって新しい分野ですし、専門家にチェックしてもらい、間違いや抜けがないか、調査が足りないところはどこか、教えてもらいました。

中国人実業家が議員に多額の献金

本書を書くもう一つのきっかけとなったスキャンダルがありました。サム・ダスティヤリという労働党の上院議員が中国人実業家から多額の献金をもらっていたことが発覚し、大騒ぎになった事件です。  

この実業家はオーストラリア在住ですが、中国共産党と密接な関係があり、その影響工作のネットワークに引き込まれたダスティヤリは、実に奇妙な行動を始めたのです。  

たとえば、オーストラリア国内の中国語メディア関係者を集めて記者会見し、「オーストラリアは南シナ海の問題に首を突っ込むべきではない」と言い出したりした。これは、まさに北京が我々に言わせたがっていたことでした。  

しかもこうした発言は、彼が属する労働党の方針にも反していたため、問題になりました。

中国のエージェントと化した議員

さらに火に油を注いだのは、彼の言動が問題化した数日後、件の中国人実業家であるホワン・シャンモ(黄向墨)のシドニーの豪邸に出向き、「オーストラリア政府があなたを盗聴しているかもしれないから気をつけろ」と忠告していたことを優秀な国内のジャーナリストがすっぱ抜き、発覚したのです。  

これが記事になり、スキャンダルとなったため、サム・ダスティヤリはホワン・シャンモとの関係を解消せざるを得なくなり、最終的には議員を辞任しました。上院議員のダスティヤリが完全に外国のエージェントとなって、その「ボス」に「マークされているから気をつけろ」とアドバイスしていたわけですから、ひどい話です。  

私がこうしたニュースを見て、とりわけ興味を持ったのが、主に3~4人の中国人もしくは中国系オーストラリア人が、オーストラリアの複数の政治家に多額の献金をしていた事実でした。しかも献金は、労働党だけでなく、ライバルの自由党(保守系)にも行われていたのです。  

これは一体何なのか、そして彼らが献金で求めているものは何なのか。多額の献金の見返りとして特定の政策を要求したのではなく、ただ単に影響力を増したがっているようにしか見えない。これが、私に「本を書かなければ」と思わせた直接のきっかけです。

財界に「友人」を作り共産党のスピーカーになってもらう

Getty logo

本書を一言で要約すれば、オーストラリアに対する中国共産党の影響工作を体系的に解説したものといえます。たとえば、一章を割いて、政治面での工作に、どのような人物がどれくらい多くの献金をしていて、なぜ労働党や自由党はそれを受け取っているのか、献金者たちの中国共産党との関係はどのようなものかを具体的に明らかにしています。  

さらには、中国共産党がオーストラリアの大学や研究機関に大きな影響を行使している実態も解説しています。大学には中国からの留学生が多数いるため、中国共産党が嫌う台湾問題やチベット問題その他、微妙な争点に関して発言する言論の自由が侵害されるという重大な問題が発生しています。  

また、中国共産党がオーストラリアの実業界にどのような影響を与えているかも検証しています。彼らはまずオーストラリア財界に「友人」を作って、彼らに共産党のスピーカーになってもらうやり方を取っています。

100万人超の中国系移民コミュニティ

Getty logo

本書全体を通して説かれているのは、中国の統一戦線工作の危険性です。オーストラリアには中国系移民が多く、100万人を超えるコミュニティがあり、なかにはすでに第三世代、つまり最初に移民してきた世代の孫にあたる世代や、それ以上の長い定着の歴史を持つ家族もいます。  

問題なのは、ここ二十年くらいの間に中国本土から移民してきた人々です。もちろん彼らの全てとは言いませんが、なかには北京の中央統一戦線工作部に協力する団体を作り、あるいは既存の中国系団体に入り込み、組織の主導権を奪取する者もいます。  

ここで、統一戦線工作について簡単に説明しておきます。これは北京の影響力を世界に広げるネットワークで、主に北京の中国共産党中央統一戦線工作部という部局が担当しています。  

彼らは、海外に住む華僑が組織した団体に対して影響力を行使するわけです。そのなかのいくつかの団体はオーストラリアの政界、財界、そして大学などに影響を与えようと積極的な活動をしています。これはオーストラリアだけでなく、注意すべきは日本でも同じことをやっているということです。  

こうした統一戦線工作の全体像が手に取るように見えてくるのが、本書の大きな特徴です。これまでにも何人かの優秀なジャーナリスト、たとえば本書でもたびたび引用しているジョン・ガーノート(シドニー・モーニング・ヘラルド紙記者)などは北京での滞在歴も長く、オーストラリアで行われていた工作の側面を素晴らしい調査力で暴いています。ですが、奇妙な巡り合わせから、その全体像を描き出す仕事は、私に任されることになったのです。

Getty logo

北京の報復を恐れ出版を拒否される

出版にこぎつけるまでの経緯は、思い返すにつけ苦々しい経験の連続でした。2017年秋頃には草稿を書き終え、専門家のチェックと、さらに法的な問題、つまり書いていることが名誉毀損にならないかまでチェックしてもらったのが10月頃で、完成稿はほぼ出来上がっていました。  

出版社(アレン&アンウィン社)も初めから最後まで熱心に応援してくれていたのですが、あとは印刷するだけとなった11月末、突然私に電話をかけてきて、「北京からの報復を懸念しているため、あなたの本は出版できない」と言ってきたのです。契約まで全て終わっていたのに、こんなひどいことになり、呆れると同時に怒りがこみ上げてきました。  

なぜかというと、このような事態は、まさに本書のなかで議論していたことを証明してしまったからです。「言論の自由」を脅かす、由々しき事態そのものですから。  

考えてもみてください。オーストラリアの大手出版社が、中国共産党に批判的な内容の本を出したがらないということを。その理由は、中国共産党からの報復が怖いからなのです。「もう、オーストラリアでは中国共産党に批判的な本は誰も出せなくなったのか? どうなってるんだ?」と私は思いました。  

彼らが恐れているのは、たとえば先述したホワン・シャンモのような億万長者が法的に訴えてきた際、むこうは名誉毀損裁判では負けると分かっていても、あえて訴訟を提起すれば、弁護士費用などを出版社や著者に強いて、破産まではいかなくとも、財政的に大きな負担を負わせる。牽制する意味でも非常に効果的だということなのです。  

その他にも、出版社は自社サイトへの中国からのサイバー攻撃に怯えていました。マーケティング的にホームページは非常に大事なものですから。

印刷所を中国に握られている

また、彼らは私が考えもしなかったことを恐れていました。それは印刷についてです。日本の出版業界ではどうかわかりませんが、オーストラリアの大手出版社は、本の印刷を中国国内の工場に委託しています。安くて質の良いものは、全て中国本土に集まっているからです。彼らは私の本を出してしまうことで、中国国内でこれまでのように安価に印刷することができなくなってしまうのではないか、と恐れたのです。  

このような事情で、出版を断られたわけですが、その電話を受けたあと、私はどうすべきか途方に暮れて、気持ちを鎮めるために外に歩きに出たほどです。  

散歩から帰ってきて、私は次の出版社を探そうと気持ちを切り替えました。すると数日後に、大手出版社が出版を拒否したというこの話がニュースに取り上げられ、国際的にも大々的に知られるようになったのです。  

それは当然のことでした。なぜなら、誰がどう見ても「言論の自由」の原則を脅かすと、ひと目でわかったからです。記者や作家もこの手の言論の自由の問題については敏感なので、大いに注目してくれました。  

各紙で取り上げられ、国際的にも大ニュースとなり、私は「本が出る前からマーケティングも終わった、これで出版社が押し寄せてくるに違いない!」と考えたのですが、甘かった。実際は全く逆でした。  

オーストラリアの他の大手出版社も、トラブルを恐れて本書の出版から逃げるようになってしまったのです。がっかりした私は、大学の出版局だったらいいだろうと思い、メルボルン大学に声をかけると、彼らは大歓迎で、すぐに契約書を交わし、いつでも出せる状態にこぎつけたのです。ところが、結局、ここでも断られることになりました。出版局が「念のために大学の理事会に許可をとる」と言い出してしばらく待っていると、やはり「拒否された」と言ってきたのです。  

あとで内部情報として小耳に挟んだのは、メルボルン大学は他のオーストラリアの大学と同じように多数の中国人留学生を受け入れているため、彼らに嫌われることはできないという理由だったようです。

ついに身の危険を感じるように

いずれにせよ、これで3社に出版を断られ、海外の出版社も視野に入れ始めたのが2018年の1月頃でした。その時、ある人からハーディー・グラントという小規模な出版社を教えてもらい、電話してみると「言論の自由は大事です。わが社で出版させてください」とすぐに返事をくれて、めでたく2018年の2月に出版の運びとなったわけです。

本書はこれまで国内で4万部売れました。この数字はオーストラリアではベストセラーを意味します。世界中の言語にも翻訳され、中国語(繁体字)版は台湾の出版社が手がけてくれました。国際的にも注目されていることを実感しています。  

そのなかで不思議だったことは、2018年の本書出版後に、日本のメディアや大手新聞社の記者から、取材の申し込みが殺到したことです。  

すぐに私は、日本でも政財界などへの北京の浸透や影響力の行使は大きな問題になっていることに気づきました。ただし、それを意識しているのはごく一部の少数の人々で、それ以外の大多数は何も知りたくないという態度のようですね。  

取材に来た日本の方々が言っていたのは、本書が日本語で翻訳されたら、北京の手法が日本でも使われていることが明らかになる、ということでした。もちろん、本書で取り上げる事例はオーストラリアですが、中国共産党はまったく同じ手法を日本でも使っています。  

さらに本の出版後に、奇妙なことが次々と起こりました。最初に大学や警察から気をつけろと言われたのがサイバー面でのセキュリティーで、実際におかしなEメールが私のアカウントに大量に届くようになりました。また、私のオフィスに見知らぬ人が突然訪ねてくるようになりました。私が出入りする大学のカフェには、さらに頻繁におかしな人々が現れるようになったのです。  

オーストラリア政府の公安関係者に会うようになったのも、本書刊行の影響です。身の安全をどう確保すればよいか、どのようなことに気をつければよいか、教えてもらいました。

自宅に強盗が

本書の内容についても、極めて多くの人々から辛辣なコメントや批判を受けたため、精神的に不安な時期もありました。発売当初は出版イベントなどもなるべく行わず、やるとしても警備員を多く配置するなど、かなり気をつけたつもりです。  

ニュージーランドに、中国共産党を専門に研究しているアン=マリー・ブレディという学者がいます。私の本が出た数週間後、彼女の自宅に盗みが入りました。その数カ月前の2017年後半には、彼女の大学のオフィスに空き巣が入っていた。とうとう家までやられてしまったわけです。  

私の所属する大学も、私の身辺の安全を深刻に懸念するようになり、以前はかなりオープンだった私のオフィスも「ロックダウン状態」と化し、セキュリティーカメラが設置され、定期的に警察の車が来るようになったのです。

「目を覚まさせてくれてありがとう」

Getty logo

本書刊行の影響でオーストラリアの政治が変わったとまでは断定できませんが、この本が出た時期から潮目が変化したのは事実です。オーストラリア国民が中国共産党に対して抱く感情はかなり悪化しました。というより、むしろ怒りが向けられていると言ってもいいと思います。  

オーストラリア人たちは徐々に、本書が明らかにしたような情報についてよく知ることになったため、公の場で中国共産党に対して阿る発言をする人々の存在が大きく目立つようになったのです。  たとえば鉱山業界の有力者、アンドリュー・フォレストというオーストラリア国内では著名な人物がいますが、彼が新型コロナウイルスへの対応で中国や習近平を称賛するコメントをした時には、それを批判する意見が多く聞かれましたし、フォレストが交渉して中国から医療関連器具や防護服などを融通してもらうと、彼に疑念の目が向けられました。  

私の本が売れ続けているのはありがたいのですが、それ以上に、オーストラリア国内で、中国共産党に対してどう対峙すべきか、議論が巻き起こったことが嬉しかった。その議論のほとんどは、本書に追い風となってくれるもので、何よりも多くのオーストラリア人たちに実態を知ってもらえたのがありがたかった。 「目を覚まさせてくれてありがとう」というコメントもいただきました。

「人種差別主義者(レイシスト)だ」というレッテル貼り

ただし、猛烈な批判にも晒されました。とくにひどかったのは親中派、本書で「中国の友人」として取り上げている人々からの酷評でした。「北京(ベイジン)ボブ」と仇名される元外相のボブ・カーを筆頭に、本書に登場した現役の政治家や元有力政治家たちが、私に対して牙をいてきたのです。一週間に2人の元首相から、新聞で批判的な意見を書かれたこともありました。  

主な批判は、私を人種差別主義者(レイシスト)であるとするもので、中国人を攻撃しているとか、「中国恐怖症に陥っている」というものでした。私は本書のなかで明確に「中国人」と「中国共産党」を区別して論じていたのですが。  

他にも中傷のEメールやツイッター上での攻撃、さらにはパスワードを盗んで私のSNSアカウントを乗っ取ろうとするなど、嫌がらせは多々ありました。実際にここまでひどい目に遭うとは、思いもよらなかったほどです。

批判派は『目に見えぬ侵略』を一切読んでいない

以前に気候変動の問題を論じていた際にも脅迫メールを受け取った経験があるので慣れてはいましたが、今回驚いたのは、私に対し最も激しく攻撃をしてくるのが、白人のオーストラリア人だった点です。  

政治家や学者が、私を人種差別主義委員会にかけて訴えようとする動きもあり、実に知的分別がない人々だと愕然としました。そのほとんどが、オーストラリア内の左派から行われたことも特筆すべきかもしれません。私自身がリベラル左派寄りの人間なので、これは極めて不快に感じたところです。  
とはいえ、批判されてみてわかったのは、批判したほとんどの人々が、私の本の中身を実際には読んでいなかったことです。

米公聴会で証言

2018年夏、私はアメリカ連邦議会上院の公聴会(マルコ・ルビオ委員会)に証人として呼ばれ、オーストラリアの状況を証言しました(https://youtu.be/fIb0laof-x8)。

トランプ政権によって中国問題がクローズアップされるなか、アメリカで私の本は大きな関心を集めており、上院に加えて、国務省や複数の大手シンクタンクで話をしました。  

オーストラリアは「炭鉱のカナリア」でして、小国ですから先に問題が先鋭化しやすい特徴があります。他の国々、とりわけアメリカ人たちはオーストラリアの状況を見て、「彼らがこういう状況になっているから、これから我々にも同じことが起こるな」と考える利点があるようです。  

先述のジョン・ガーノート記者や本書でたびたび引用した中国専門家のジョン・フィッツジェラルド教授も同委員会に呼ばれていました。  

一方、本書に対するヨーロッパの反応は芳しくなく、ほぼ皆無でした。ドイツから何度か呼ばれたのと、北大西洋条約機構(NATO)本部で話をするという、夢にも思っていなかった機会に恵まれましたが、それでも2018年時点ではヨーロッパ全体の状況はあまり変わっておらず、中国共産党の影響工作に関心は薄かったというのが実感です。  

本書に最も熱心に興味を持ってくれたのは台湾で、次に日本、アメリカ、そしてカナダでした。  

カナダには二度行き、何度か講演も行いました。カナダにも中国系移民が多く、彼らのなかにも北京の影響力に懸念を持つ人々がいたからです。実際にカナダでも、我々と似たようなことが起こっていたわけですが、目覚めたのはオーストラリアのほうが早かったように思います。

続編『隠された手(Hidden Hand)』の衝撃

『目に見えぬ侵略』の続編となる『隠された手(Hidden Hand)』(ドイツの中国専門家マレイケ・オールバーグ氏との共著)が、オーストラリアで6月半ばに発売となります。この続編を書いていて気づいたのは、中国共産党によって影響力を発揮するために実行されている計画の青写真は、世界各国すべて共通しているということでした。  

とりわけ興味深いと思ったのが、中国共産党が毛沢東の「農村から都市を包囲する」という戦略をどこでも採用していることです。  

実例を挙げましょう。オーストラリアの首都キャンベラは連邦政府の本拠地で、この地の対中姿勢はここ数年間で劇的に変わりました。経済から安全保障へと舵が切られ、外国、つまり北京からの介入に対する警戒感が広まっています。以前は貿易や投資を中国からいかに呼び込むかだけが語られていましたが、いまや注意深い姿勢に変わり、オーストラリアの主権や規制という言葉が聞かれるようになりました。  

すると、北京は戦略を変えました。オーストラリアの州政府や各都市など、地方自治体との関係強化に動き出したのです。姉妹都市関係は、オーストラリアと中国の都市の間で数多く締結されています。この関係を使って影響を与える方向にシフトしたのです。  

オーストラリアの田舎の地域とまず関係を強化してから、中心部である都市に攻め込む。これは、まさに中国共産党が国民党に都市部から追われたあと、再編して再び攻め上がっていった歴史的な実例に基づく戦略です。これを外国への影響工作、つまり統一戦線工作においても使っているのです。  

たとえばアメリカなら、連邦政府のトランプ大統領や政権と関係が悪化しているので、各州政府との関係を改善する動きが見られます。大都市の市長や州知事への工作が盛んになっているのです。  

実際、米中貿易紛争のさなかに、ワシントンDCの連邦政府・トランプ政権に対して地方の州政府らが抵抗し、反旗を翻している姿が数多く見られたのはそのためです。これらすべてが中国共産党の仕掛けていることとは言い切れませんが、その原因の一部は彼らの工作によるところもあるのです。これはドイツでも、オーストラリアでも同じです。

世界の金融街への凄まじい工作

もう一つの興味深い動きはイギリスです。続編の調査を始めた時、ベルリン在住のオールバーグ氏に、イギリスを調べ始めたが、中国共産党による工作の証拠は何も見つけられなかった、と報告したことがありました。しかし彼女は、「実際は凄まじく活発な活動が行われているから調べ続けて」と言うのです。それで仕方なく、中国語の文献を読めるアシスタントを雇って資料を探し続けると、イギリスに対し非常に深刻な工作が行われていることが判明したのです。  

あの諜報大国イギリスに対してありえないと思われるでしょうが、実際はとんでもない影響工作が成功していました。中国共産党はイギリスの超エリートたちと密接な関係を築き、権力の源泉であるロンドンの金融街・シティにも多くの工作を行っていたのです。それ以外にも、アメリカのウォール街やドイツのフランクフルトなど、金融関係への影響工作や「友人」の獲得に極めて熱心だとわかりました。  

続編で、こうした新事実を詳しく説明しました。実にショッキングな内容です。日本の皆様もぜひ楽しみにしていてください。

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画

著者略歴

クライブ・ハミルトン

https://hanada-plus.jp/articles/371

オーストラリアの作家・批評家。著作に『目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画』(Silent Invasion: China’s Influence in Australia)『成長への固執』(Growth Fetish)、『反論への抑圧』(Silencing Dissent:サラ・マディソンとの共著)、そして『我々は何を求めているのか:オーストラリアにおけるデモの歴史』(What Do We Want: The Story of Protest in Australia)などがある。14年間にわたって自身の創設したオーストラリア研究所の所長を務め、キャンベラのチャールズ・スタート大学で公共倫理学部の教授を務めている。

関連する投稿


自由世界の勝利へ日本は戦え|櫻井よしこ

自由世界の勝利へ日本は戦え|櫻井よしこ

米中両大国の常軌を逸した振る舞いで幕を開けた今年、国際社会の直面する危機は尋常ではない。現在の危機は黒船来航から始まった160年余り前のそれよりも、はるかに深刻だ。


「全家腐」から見た中国的道徳心の異質性(上)|石平

「全家腐」から見た中国的道徳心の異質性(上)|石平

中国が、共産党幹部による腐敗が酷い「腐敗大国」であることはよく知られている。だがその「腐敗」には中国ならではのある特徴がある。日本人の想像を超えた「腐敗大国」の実態。


“新冷戦”で「命」が守れない日本人|門田隆将

“新冷戦”で「命」が守れない日本人|門田隆将

ウイルスと共に世界を侵略し、民主主義の本家・米大統領選まで破壊した中国。2021年も、中国の覇権主義は止まらないだろう。このままでは日本が滅びかねない――日本が生き残るための唯一の道とは。


元旦早々、読売の渡邉恒雄主筆に問いたい| 花田紀凱

元旦早々、読売の渡邉恒雄主筆に問いたい| 花田紀凱

新聞はもう終わってしまったのか。朝日新聞ではなく、毎日新聞でもなく、「元旦の読売の1面はなんだ!」と花田編集長が読売新聞に大激怒!読売新聞オンラインには「独自」の文言も……。『週刊新潮』の焼き直しを「独自」と呼ぶ、恥知らずな読売新聞に物申す!


背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社刊)を読むのは、私にとっては近年に滅多にない、強烈な読書体験であった。


最新の投稿


自由世界の勝利へ日本は戦え|櫻井よしこ

自由世界の勝利へ日本は戦え|櫻井よしこ

米中両大国の常軌を逸した振る舞いで幕を開けた今年、国際社会の直面する危機は尋常ではない。現在の危機は黒船来航から始まった160年余り前のそれよりも、はるかに深刻だ。


韓国の不当判決に事実に基づき反論せよ|西岡力

韓国の不当判決に事実に基づき反論せよ|西岡力

1月8日、ソウル地裁は、慰安婦制度を「主権免除」が適用されない「反人道的犯罪」であると決め付けた。国際法を無視した韓国の不当判決と、それを事実上後押しした「反日日本人」たち。今回の判決を批判するためには、「日本発の二つの嘘」に対する反論もする必要がある!


「全家腐」から見た中国的道徳心の異質性(上)|石平

「全家腐」から見た中国的道徳心の異質性(上)|石平

中国が、共産党幹部による腐敗が酷い「腐敗大国」であることはよく知られている。だがその「腐敗」には中国ならではのある特徴がある。日本人の想像を超えた「腐敗大国」の実態。


“서부지검 공소장을 마주하며”|류석춘(전 연세대 교수)

“서부지검 공소장을 마주하며”|류석춘(전 연세대 교수)

"위안부는 매춘의 일종"- 한국의 명문 연세대학교에서 수업 중에 한 발언에 의해 사회에서 말살될 정도로 비난을 받은 류석춘 전 교수. 검찰은 류 씨를 명예 훼손 혐의로 기소하고, 조만간 재판이 열린다."독재 정권이 사회를 지배하고, 역사적 사실조차 말하지 못하고, 학문과 사상의 자유를 짓밟는 현재 한국에 미래는 없다. 나는 단호히 싸운다!"


ソウル西部地方検察庁の起訴状を受けて|柳錫春(元延世大学教授)

ソウル西部地方検察庁の起訴状を受けて|柳錫春(元延世大学教授)

「慰安婦は売春の一種」―- 韓国の名門・延世大学で授業中に行った発言により社会から抹殺されるほどのバッシングを浴びた柳錫春元教授。検察は柳氏を名誉棄損の罪で起訴し、まもなく裁判が行われる。「独裁政権が社会を牛耳り、史実を口にすることすらできず、学問と思想の自由を踏みにじる今の韓国に未来はない。私は断固闘う!」