世界に大きな苦しみをもたらす
今回の新型コロナウイルス問題でも、国際社会は中国共産党の不透明性をつくづく思い知らされました。
ウイルス発生に対する北京の反応で明らかになったのは、中国共産党が情報統制を失うことをきわめて恐れていた点です。これは中国政府が初動段階で、一般の人々に警鐘を鳴らし、情報を提供しようとしていた医師や科学者に対して、非常に懲罰的なアプローチを採用していたことからもよくわかります。
北京は国際社会全体を欺こうと必死に動いていたのであり、その結果として世界に大きな苦しみをもたらすことになりました。
私が中国問題に関心を持ったのは最近のことです。2016年頃からオーストラリアに対する中国共産党の介入が気になり、まず国内の中国専門家、特に中国共産党の影響工作に詳しい人々に話を聞きました。彼らは驚くほど協力的で、取材していろいろな文献を教わり、段々と全体像がまとまってきたので、さらに中国本土や香港、アメリカなどに出向いてインタビューを繰り返し、最終的に膨大な量の文献を読み込み、ようやく完成形が見えてきたのです。
『目に見えぬ侵略』の執筆開始
そこで、『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)の執筆を開始しました。2016年10月のことです。この年の夏頃からオーストラリアの新聞で、中国共産党が豪州政治に影響を与えようとしているという記事がいくつか出始めていました。そのため、過去に私の本を何冊か出してくれていた出版社の旧知の編集者に声をかけると、「素晴らしいアイディアだ、すぐやりましょう」という返事だったので、書き始めたのです。
リサーチと執筆に2017年の丸1年間をかけ、草稿が完成したあとに3~4人の専門家に読んでもらいました。私にとって新しい分野ですし、専門家にチェックしてもらい、間違いや抜けがないか、調査が足りないところはどこか、教えてもらいました。