慰安婦「正義連」告発は文政権に致命的打撃|鄭炳喆

慰安婦「正義連」告発は文政権に致命的打撃|鄭炳喆

2020年5月、元慰安婦の李容洙が会見を開いた。その内容は、「正義記憶連帯」(通称「正義連」、韓国挺身隊問題対策協議会〈挺対協〉の後継団体)と、その元理事長の不正疑惑、資金流用疑惑告発という衝撃的なものだった。一体何が起こったのか。現地韓国のジャーナリストが徹底解説!(初出:月刊『Hanada』2020年8月号)


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慰安婦問題は北の戦術

いまや、この文大統領の言葉は虚しく聞こえる。現在、文政権が主張すべきことは、「正義連(挺対協)は真実を認めてハルモニたちに心を尽くして謝罪すべきであり、また政府はこのようなことが二度と起こらないように約束し、不正疑惑の真相を究明する」ことだろう。

文政権が慰安婦問題の解決策を提示せず、慰安婦問題での合意を、すなわち日韓合意の精神を無視しているのは、北朝鮮の対南統一戦線戦術に呼応しているからに他ならない。

北朝鮮の対南統一戦略戦術の核心は、韓国内の「反米」と「反日」を扇動することであり、それによって韓国から米国と米軍を追い出して、親日派の清算を通じてわが民族同志による統一を実現することである。

文政権の大統領直属の政策企画委員会委員長を歴任した同党の丁海亀氏の論文「解放前後史の認識」によると、

「韓国における国家権力掌握において、米軍政の支援を受けた極右勢力が反革命の分断政権創出に成功した。 反帝反封建の民主主義革命のために、人民政権を立てようとした左翼勢力は国家権力掌握に失敗。 これは米国を追い出さず、親日派清算をしなかったという反省に立っている」

北朝鮮の対南戦略は一貫している。金日成主席の「冠(笠)の紐理論」が基本路線だ。2007年、元朝鮮労働党国際担当書記の黄長は「冠(笠)の紐理論」をこう説明した。

「金日成は反米統一戦線戦略を立てる時、韓国の政権は冠(笠)を被った政権のようだと見た。 冠(笠)の紐の片方は米国との同盟であり、他方は日本との同盟だ。

冠(笠) というものは、どちらの紐であっても、一本切ってしまえば口で吹いても飛んでいってしまうものだ。我々(北朝鮮)の戦略的目標は、韓米同盟、韓日関係を悪化させて、韓国と米国の関係、日本との関係を切り離すことなのだ。そのために韓国で反日、反米勢力を強化するようにしてきた」

まさにこれこそが慰安婦問題の本質である。すなわち慰安婦問題は、韓国と日本を離間させるためのもので、文政権が半永久的にこの問題を争点化にし続ける理由がこれなのだ。

韓国で反共主義を掲げる自由共和党は、「親日派の清算」を主張する文政権左派勢力を「土着化したパルゲンイ(共産主義者)」と批判。代表の趙源震も、「文在寅政権は親中、親北朝鮮、従北政権だ。 大韓民国の共産主義者たちが凝縮した政権」と主張している。

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尹美香を囲む北朝鮮人脈

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