「慰安婦のヒロイン」の告発
2020年5月7日と25日の2回、韓国大邱市内で記者会見が行われた。会見したのは慰安婦ハルモニの李容洙(91)。内容は、慰安婦団体「正義記憶連帯」(通称「正義連」、韓国挺身隊問題対策協議会〈挺対協〉の後継団体)と、その元理事長で現在は「共に民主党」の国会議員である尹美香の不正疑惑、資金流用疑惑告発という衝撃的な内容であった。
文政権は昨年来、経済失政と北朝鮮政策によって支持率が下落、「文在寅弾劾」の声すら聞こえる危機状況にあったが、今年1月から始まったコロナ危機と保守派の内部対立・失言騒動の連続に救われて、左派政権の継続に成功、4月15日の総選挙では圧勝、「今後百年間、左派政権を維持する」と気勢を上げていた。
そんなタイミングで、文大統領の庇護下においていたはずの慰安婦ハルモニが反旗を翻すように、慰安婦団体幹部の不正を暴いたのだ。
李容洙ハルモニは過去四回も青瓦台に招待され、文大統領に会見。他にも二2007年には、米連邦下院で慰安婦決議案の可決を控える公聴会に参加し、被害状況を証言している。この時の模様は『I can speak』(私は話す)という映画になった。
2017年11月にはトランプ大統領の国賓晩餐会にも招待され、トランプ大統領とハグした映像が世界に流れた。
いわば「慰安婦のヒロイン」とも言われる李容洙ハルモニが、文政権と民主党左派が実権を握る挺対協・正義連の資金流用疑惑を暴露し、韓国で最も信頼されていた慰安婦団体を一晩のうちに、腐敗した醜悪でいかがわしい市民団体に転落させたのだ。
家5軒を現金購入
李容洙ハルモニは会見で、「水曜集会にはもう出ない」 「これまで参加した女子高校生たちは、反日感情だけを煽る正義連の言葉を信じないでほしい」と訴えた。
李容洙ハルモニの暴露内容は、過去30年間、尹美香や挺対協(正義連)は、多額の慰安婦のための寄付金を本人に届けず、横領していた、というものだ。
韓国メディアによると、これまでに団体には27億ウォンもの支援金が集まったが、ハルモニのために使われたのはたったの6400万ウォン。さらに2012年3月から8年間、尹美香名義の個人口座(4件)に11回にわたり支援金が振り込まれていたという。
金銭面だけではない。李容洙は尹美香に「性奴隷という言葉は嫌だ」と言ったが、「米国では性奴隷という言葉が受け入れられやすいから」と一蹴されたと証言した。
李容洙が挺対協幹部だった尹美香に初めて自分の身の上を告白したのは1992年6月25日のことだが、告発後、尹美香はこの時のことを「30年前に李容洙ハルモニと話した時、『私じゃなくて、私の知人の話だが』などと話していた。彼女が慰安婦でない可能性もある」などと中傷を始めた。
尹美香が4月15日の国会議員選挙前に選挙管理委員会に申告した預金額は、約3億2000万ウォン。尹夫婦が過去5年間に支払った納税額は約643万ウォンに過ぎない。
夫婦の年収は5000万ウォン前後なのに、なぜこれほど多額の預金残高があるのか。さらに彼女は家を5軒も購入しており、すべて現金で支払ったというから驚きだ。
娘を米国カリフォルニアに留学させており、現在でもUCLA(カリフォルニア州立大学)の音楽学部(ピアノ科)に在学中である。年間の学費や生活費は最低でも5000万ウォンから1億ウォンもかかると言われている。尹一家は、どうやってこの学費を工面したのだろうか。