慰安婦「正義連」告発は文政権に致命的打撃|鄭炳喆

慰安婦「正義連」告発は文政権に致命的打撃|鄭炳喆

2020年5月、元慰安婦の李容洙が会見を開いた。その内容は、「正義記憶連帯」(通称「正義連」、韓国挺身隊問題対策協議会〈挺対協〉の後継団体)と、その元理事長の不正疑惑、資金流用疑惑告発という衝撃的なものだった。一体何が起こったのか。現地韓国のジャーナリストが徹底解説!(初出:月刊『Hanada』2020年8月号)


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左派から中傷の嵐

韓国では、正義連など慰安婦団体は「聖域」(タブー)だったが、李容洙ハルモニがその聖域を破った。だが、実はこれが最初のことではない。

2004年、沈美子ハルモニら慰安婦33人が「慰安婦ハルモニを二度泣かせた挺対協は解散しろ!」という声明を出した。

「慰安婦被害者のためといって、全国各地で集めた寄付金や募金額は全部で一体いくらか? その多額の金は一体どこに使用したのか?」

「挺対協は、いつ死ぬかわからない慰安婦ハルモニを金儲けの道具として人々の前で物乞いさせて、私腹を肥やしてきた悪党ども」

内容は、今回の李容洙ハルモニの告発に近いものだった。この声明を出した4年後の2008年に、沈美子ハルモニは亡くなった。彼女の名前は、挺対協など市民団体とソウル市がソウル南山公園に建てた慰安婦記念碑に刻まれていたが、それが削除されていたことがわかった。

削除を指示したのは、当時、挺対協幹部だった尹美香だった。挺対協・正義連に逆らえば、当事者の慰安婦ハルモニですら抹殺される。李容洙ハルモニも、これまで彼女を「慰安婦のヒロイン」として持ち上げてきた左派が、手のひらを返して「親日派」というレッテルを貼って、葬り去ろうとしている。

ある韓国メディアは、李容洙の過去を暴露した。彼女は1944年、16歳の時に故郷・大邱から従軍慰安婦として台湾に連れていかれ、神風特攻隊の兵士に出会った。

その兵士は1945年7月の出撃前夜、「俺がお前を無事に祖国に帰れるように守ってやる」と遺言を残した。その言葉を覚えていた李容洙(当時は「ヤスハラトシコ」という日本名を名乗っていた)は、98年8月、69歳の時に台湾を再訪し、その軍人の慰霊をし、台湾国会議員ら周囲のすすめで霊前結婚式を行った。

韓国メディアは、「日本人に対する愛情には敬意を表するが、日本人の妻だったら日本に帰ったらどうか。韓国民に対して謝罪するべきだ。恥ずかしくないのか」 「結局は売春婦か」という醜い中傷を浴びせた。

SNS上でもたちまち「記憶の歪曲」 「痴呆」 「土着倭寇」 「政治的欲望がある老婆」 「親日派勢力が背後で操っている」といった言葉が乱舞した。

韓国には「左派はで国を亡ぼす」「右派は内部分裂で国を亡ぼす」という言葉がある。左派勢力による手のひらを返した中傷や、で塗り固めた攻撃はその典型だ。

『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河世宗大学教授は、李容洙ハルモニの告発を受けて、5月26日、フェイスブックでこう書いた。

「難しい環境のなかで叫び声をあげたハルモニが攻撃され、『ナヌムの家』の告発者の身辺にも危険が迫っている状況がある。私が交流したハルモニたちも慰安婦団体を怖がり、最後まで沈黙して亡くなった。

今回の爆弾発言で世界の韓国に対する不信感が強まった。せっかく文化コンテンツやコロナ対策を通じて獲得した信頼感に致命的な打撃を与えることになる」

他にも、済州道知事の元喜龍がフェイスブックで、「歴史の犠牲者である慰安婦ハルモニに対して、(慰安婦団体が)居直ったように二度目の加害者となるような歴史にしてはならない。今回の事件は歴史に対する大韓民国の常識と良心にかかわる問題であり、反日陣営の論理で加害者(正義連・挺対協)を擁護するのは正当化できない」と書いている。

李容洙ハルモニの告発で、慰安婦問題そのものが根底から検証されることになった。今後、人権の名前を借りた、いかがわしい市民運動の実態が続々と暴かれることになるだろう。日韓関係の改善に向かう可能性すらある。

何の行動もとらない文在寅

2015年12月28日、朴槿惠政権と安倍政権が電撃的に日韓(韓日)合意したのは、慰安婦問題によってこれ以上、日韓関係の足を引っ張ってはならない、と両者が決意したからである。

日韓合意は、韓国民を100%満足させる合意ではないだろう。しかし慰安婦問題は、韓国の指導者がいかなる非難でも受ける覚悟をして、決断を下さなければ解決できない問題だ。朴槿惠前大統領はまさにこの問題を正面突破し、日本との合意を引き出した。 当時、野党代表だった文在寅はこの合意に「10億円で韓国民の魂を日本に売るのか!?」と大反対をした。

大統領に当選してからは、2017年5月には「積弊清算第一号」と規定して、日韓合意をひっくり返した。しかも「再交渉はしない」と意味不明な発言を繰り返し、日韓間での解決方法も提示しないまま棚上げ状態で今日までやってきた。

文在寅政権は「正義、公正、平等」を謳って誕生し、慰安婦被害者問題と日帝徴用被害者問題で「被害者中心主義」でやってきたはずだが、李容洙ハルモニの告発に対しては何の行動もとっていない。

これまで文大統領は、金学義前法務部次官の性接待疑惑、性暴力被害者のタレント、チャン・ジャヨン自殺事件、インターネットメッセンジャーを通じた性的虐待・性搾取事件などに対して迅速な捜査と監察、真相調査を指示してきた。 ところが、正義連と尹美香の不正疑惑については指示もない。

6月8日になって、ようやく首席補佐官会議で「慰安婦運動の大義を守れ」と発言しただけだ。そこでも「李容洙ハルモニは慰安婦運動の歴史」とは言ったものの、尹美香には触れなかった。「被害者中心主義」を主張していたはずの文政権は、不正疑惑の中心人物であり、加害者の尹美香議員を守ったのだ。

文大統領は、日本が10億円を拠出してできた「和解・癒やし財団」を2018年11月に解体し、日本に向けてこう主張した。

「日本が真実を認めて被害者ハルモニに心を尽くして謝罪し、そのようなことが再び起きないように、国際社会とともに努力する時になったらハルモニも日本を許すことができるだろう。それが完全な日本軍慰安婦問題の解決だ」

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