前代未聞の予算組み替え
実は新型コロナ対応をめぐって、誰も指摘していない大きな出来事が一つありました。
政府・与党は新型コロナの経済対策として、減収世帯に限った30万円給付案を考え、補正予算案を組んでいましたが、国民から猛反発を受けて、対象を絞らずに一律10万円を給付する案に切り替え、補正予算案も新たに組み替えました。
「予算を組み替える」なんて前代未聞のことです。しかも連立を組んでいるとはいえ、他党である公明党の要求をんだ形になる。本来なら、これだけで内閣総辞職ものの失態と言えるのですが、非常時ゆえに問題視されずに終わりました。
しかし見方を変えたら、「予算を組み替えることができる」前例になったと言えます。これまで政府は財務省が決めた案を提案し、きっちり国会で通すことが役目でした。前例主義の国会では、予算を組み替える前例がないので、それを通すのは当然だった。
ところが今回、前例ができてしまったので、今後は財務省の案に対して、与党が考えを示し、組み替えさせることができるようになった。政治主導として、これはエポックメイキングな出来事と言えるのです。
新型コロナウイルスは日本の政治をはじめとして、様々なことが変化するきっかけになる。それをできるだけ良い変化にするのが、我々の務めです。
著者略歴
産経新聞論説委員長。平成元年より政治部記者。竹下・宇野・海部首相の番記者を経て、首相官邸、自民党や社会党など政党を主に担当。平成八年から防衛研究所で安全保障政策を学ぶ。民主党政権時代には発足当初からその無責任ぶりを厳しく批判。編集局長時代にはトランプ大統領当選翌日の一面コラムでトランプ肯定論を執筆、大きな反響を呼んだ。