解散総選挙の時期、タイミングは妥当か
10月1日に臨時国会が召集され、首班指名選挙を受け石破茂内閣が発足した。石破首相の所信表明演説、与野党による代表質問が行われ、本日9日、衆院が解散された。15日公示、27日投開票で総選挙が実施される。
これを受け、自民党の公認候補者が発表されたが、非公認者が12人となることが判明した。いずれも派閥パーティーにおける政治資金不記載があった議員である。非公認については、すでに処分を受けているのに厳しい対応だとの声があるが、党執行部の決定事項であるので、とにかく公認であろうと非公認であろうと全員が勝ち抜くため力を尽くすしかない。
また、政治資金不記載により比例重複名簿に登載されない小選挙区候補者もいるが、こうした候補も含め勝利のため私は全力で支援する。衆院選は政権選択選挙であり、公認候補、自民党籍の候補により絶対に過半数を取らなくてはならない。
しかしながら、政治資金不記載においての公認・非公認の判断に時間がかかったことで、「不記載問題」として蒸し返されてしまったことはとても痛い。私は、党が不記載が生じた議員に対し、不記載部分の資金を党に返納させるなどの対応ができなかったのか、と思う。
問題視する人たちの声は「裏金」「脱税ではないか」というものであり、不記載部分の資金を、派閥は解消しているので党に返納し、党から能登半島の被災地に寄附するなどの工夫ができたのではないかと考える。そうすれば問題視する人たちの声も変わったのではないか。
なお、解散総選挙の時期について、早まったのはなぜかとの声もあるが、私は賢明な判断であったと思う。岸田政権が3年継続したのも、発足直後に解散総選挙を行い、国民の信託を得たからである。菅政権については発足直後に解散総選挙を行っていれば勝利し、1年ではなくもっと長く続いたのでないかという方もいるが、実は私もそう思う。
しかし、菅首相はとにかく懸案をどんどん解決するため行動あるのみだとして、解散総選挙より政策の実行を優先した。1年で公約のほとんどを実現できたので、菅首相におかれても後悔はないと思う。
また、解散のタイミングであるが、「総裁選において石破候補は、野党としっかり議論してからと言っていたのにこんなに早いのか」との声がある。これについては、岸田首相も所信表明、代表質問後に予算委員会を開かず解散をしているので何らおかしなことではない。
新たに政権を発足させたのであれば、速やかに国民に信を問うのは当然のことであり、野党も政権獲得の可能性がある総選挙が行われるのであるから、歓迎すべきものではないかと思う。
アベノミクスの神髄とはなにか
では、総選挙においてどういった点を自民党が訴えていくかであるが、これは石破首相の所信表明演説がもとになる。
石破首相は、「物価に負けない賃上げ」について重点的に述べた。これは、アベノミクスの継承、すなわち安倍政権、菅政権、岸田政権路線の継承である。アベノミクスについて野党から問われた石破首相は、「デフレではない状況を作り出し、国内総生産(GDP)を高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながった」とアベノミクスを評価した。
一方で、「1人当たり平均の実質賃金が伸び悩むとともに個人消費も力強さを欠いていた」とも述べたが、これはアベノミクスの未完の部分であり、石破首相はアベノミクスを完成させることを掲げたことになる。
アベノミクスの最大の目標は、デフレからの脱却と経済成長、雇用の安定。その上で継続して賃金を上昇させることであった。最後の部分の賃金上昇は、具現化しつつあるが、地方部においてはまだまだである。
「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるが、総理となり国を牽引するとなれば、経済財政政策においてはアベノミクス路線を継承するしかないのである。それが経済発展への正しい道であるからだ。
岸田政権は財源確保に増税も否定しなかったが、経済を成長させれば税収が増え、増税せずに財源を確保することができるという考えがアベノミクスの神髄である。国民の支持が高いこの考えを石破政権が前面に打ち出せるかも、総選挙での鍵となる。
安全保障については、「アジア版NATO」、「日米地位協定改定」などを総裁選で掲げた。どのように実現していくかであるが、私は日米地位協定は不平等条約に近いと考えており、根本改定は賛成である。アジア版NATOについては、実現を疑問視する見方もあるが、日米豪印のクアッドをはじめ多国間連携は進みつつある。
これも安倍政権、菅政権で強力に推進してきたものであり、石破首相はこの考えを発展させようというものである。
憲法改正については、石破首相は9条2項の改正、自衛隊を改組し国防軍の創設をこれまで述べてきた。私も安倍政権当時、自民党憲法改正推進本部で石破議員と議論したが、自衛隊明記ではなく根本改正を主張していた。私はまず自衛隊明記で憲法改正をした後、9条をはじめとした根本的な憲法改正に着手すべきという考えであるが、石破首相は憲法改正の発議を実現すると明言している。
石破総裁の下、9条2項の根本改正を行うことを議論するのであれば、速やかに議論を束ね、あと一歩の所まで来た憲法改正国会発議と国民投票実施は速やかに実現していかなくてはならない。
これらの政策をはじめとして、安倍政権が掲げた国家と国民を守り発展させる政策を菅政権、岸田政権でも受け継ぎ実現を図ってきた。これを石破政権でも総選挙で訴え、実現していかなければならない。衆院過半数233議席を確保し政権を維持するために、自民党一丸となって全力を尽くす。