我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

衆院選が終わった。自民党は過半数を割る大敗で191議席となった。公明党も24議席となり連立与党でも215議席、与党系無所属議員を加えても221議席で、過半数の233議席に12議席も及ばなかった――。


早期の解散の判断は誤りではなかった

Getty logo

早期の解散の判断は誤りではなかったと思う。新総理が誕生すれば、解散して国民に信を問うことは何らおかしなことではないし、岸田政権においても総理就任後すぐに解散総選挙を実施した。

では、なぜこのような結果となってしまったのか。それは、政治資金不記載問題での公認・非公認がクローズアップされたことによるものと考える。共同通信の出口調査では、政治資金問題を考慮して投票した人が74%に上った。

非公認となった候補はメディアに大きく取り上げられ、重複立候補とならなかった候補も折々に取り上げられ、ほとんどの野党候補は演説の冒頭で「裏金問題」と述べ、自民党を攻撃した。政策の中身というよりも、政治資金不記載問題を一番の争点にされてしまった。

しかも、この不記載問題が再クローズアップされるきっかけは自民党が作ってしまった。10月1日に石破茂新総裁が解散総選挙を行うとの方針を示した後、6日には不記載があった議員のうち「党員資格停止」の処分を受けた議員などを公認しない方針を示した。また、不記載があった議員は処分の有無にかかわらず、小選挙区と比例代表の重複立候補を認めない考えを示した。

そして、9日に非公認候補の最終決定がなされたが、この間、ワイドショーやニュースにおいては、誰が非公認になるのか、誰が重複立候補できないのか、不記載の金額はいくらなのか、こうした内容が繰り返し放送された。これにより国民は、改めて政治資金の不記載問題に着目することとなった。

国民民主党にお株を奪われた?

私は、公認・非公認を区別するにしても、1日で判断できなかったのか、と思う。

さらに、私は区別するのではなく別のやり方もあったのではないかと考える。不記載のあった議員も一括で公認するという方法である。その前提として、まだ各議員の政治団体にある不記載の額を返納させる。派閥は解消しているので党に返納させる。そして、それを能登の震災の被災地などに寄付をする。

そうすれば、「政治資金として使ったのではなく自分の懐に入れたのではないか」「懐に入れているのだから税金を払うべきだ」などの論は、返金しているのでなくなる。あとは、法的責任の有無や、道義的責任について、有権者にしっかりと説明を尽くす。一括公認し、党全体が一丸となって不記載問題を反省し、党改革、政治改革を行っていく。こうであれば、公認・非公認がクローズアップされることもなかった。

一方、政策面での国民の反応はどうだったのか。私は全国各地に応援に入ったが、「石破政権はどんな経済政策なのか?」との質問をあちこちで受けた。党の広報本部の分析などにおいても国民の間には同様の意見が多く、選挙戦序盤の18日には党より石破総理総裁サイドに、演説における経済政策の強い打ち出しが提言され、それ以降、石破総理も演説において経済政策を強く打ち出すようになった。

しかし、安倍政権における「アベノミクス」などのわかりやすいフレーズを打ち出すことが出来なかった。菅政権では国政選挙はなかったが「規制改革」、岸田政権においては「賃上げ」といったわかりやすいフレーズを用いていた。

これに対し、躍進した国民民主党の玉木代表は「手取りを増やす」というわかりやすいフレーズを多用し、支持を広げた。「103万円の壁」についてもそうである。しかしながら、そもそもこれらの政策は、自民党が強く打ち出してきたものであり、アベノミクスに近い経済政策を打ち出している国民民主党にお株を奪われてしまった。我が党は経済政策におけるわかりやすいフレーズを国民に示していかなければならない。

関連する投稿


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

とるべき財政政策とエネルギー政策を、アメリカの動きを参照しつつ検討する。自民党総裁候補者たちは「世界の潮流」を本当に理解しているのだろうか?


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。