実行力があるトランプ氏に軍配
米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。勝因はいくつかあるが、バイデン政権の経済政策の失敗から、トランプ前大統領の政策に期待が集まったことが大きい。バイデン政権は、インフレを生み、米国民の苦境感は強かった。
主要メディアと連携するエジソン・リサーチの出口調査によると、経済を主な関心事とした有権者のうち、79%がトランプ氏に投票した。また、インフレに「苦しんだ」と答えた人は70%を超え、「非常に苦しんだ」とする22%のうち74%の人がトランプ氏に投票した。
さらに、トランプ氏は低所得に苦しむ層に支持を広げ、トランプ氏に投票したヒスパニック系有権者は46%となり、前回4年前の大統領選より14%も高くなった。これらの層は、本来は民主党支持者が圧倒的多数であるが、如実にトランプ氏への投票が増えた。
トランプ政権においては、法人税率引き下げ、規制改革、適切な財政出動により大胆な経済政策が期待される。すでにニューヨーク株式市場では、ハイテクやAI関連銘柄が多いナスダックの株価指数と、主要な500社の株価で算出する「S&P500」の株価指数は、いずれも2日連続で最高値を更新した。
これらの動きは、まさにトランプ氏の実行力への期待の表れでもあり、トランプ氏が演説において強いアメリカ経済を構築することを自身の言葉で述べたのに対し、ハリス氏は演説原稿に頼る場面が多かった。10月4日にミシガン州で開いた選挙集会での演説では、プロンプターが故障したのか、「あと32日」と4回繰り返した。
強調したのではなく、文章を目で探すかのような動きであった。米国民はこうした演説の状況からも、実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。
正確かつ深い情報を打ち込み続けた安倍総理
では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。
経済面においては、我が国は積極的な予算編成をしなければ米国経済に大きく引き離され、米国の要求に受け身になることが考えられる。今月から編成が始まる補正予算が極めて重要だ。我が国経済の強さを生み出すため、ものづくりの再生・強化と、先端技術への投資に一層注力すべきである。
そして、日本を含む極東の安全保障については、正確な情報をトランプ氏に伝え、トランプ氏と共有することが肝要である。米国の外交安全保障における関心は、第一に中東情勢、第二に欧州情勢、第三に極東情勢であり、トランプ氏は大統領から4年間離れていたため、正確な極東情勢についての情報の更新が行われていない可能性がある。
それは、機密事項もあるので言わば当然の面もあるが、トランプ氏に対し最新かつ正確な極東情勢を打ち込む必要がある。米国内のトランプ政権移行チームからもそうであるが、我が国からも強いアプローチを行わなければならない。
前回のトランプ政権の時は安倍晋三総理がその役割を担っていた。大統領就任前のトランプタワーでの会談から、正確かつ深い情報をトランプ大統領に打ち込み続けた。その情報力と分析にトランプ大統領は感心し、安倍トランプ関係は極めて強いものとなっていった。
では、現在はどのような関係構築を政府与党で行っているのか。この上ない強い関係を築いていた安倍元総理は逝去してしまった。そのため、我が国は現在、トランプ氏側近のハガティ元駐日大使ルートを重視している。