新型コロナ 政府の初期対応は 「敗戦」だった|乾正人

新型コロナ 政府の初期対応は 「敗戦」だった|乾正人

はっきり言えば初動は完全な失敗だった。「緊急事態宣言」に至るコロナ禍における安倍政権の迷走は、「敗戦」に等しい──産経新聞論説委員長の乾正人氏がズバリと明言。永田町取材を30年以上重ねてきた乾氏だからこそ言える、愛のある痛烈批判!(初出:『Hanada』2020年7月号)


「二階一強」構造の問題

二階幹事長について言っておくと、日本の政界と中国とは長い歴史がありますが、現在の「親中派」筆頭といえば、二階幹事長でしょう。

二階氏は県会議員出身。別に中国と太いパイプがあったわけではありませんが、2000年の小渕政権の時に運輸相を務めて北京を訪れました。その時、中日友好協会幹部にこんな”はったり”を言いました。

「今年は2000年だから、2000人の日本人の友人たちと一緒に、中国を再び訪れたい」

そして運輸相のポストを使って、観光業界や航空業界など業界団体に呼び掛けて、2000人を上回る5000人をかき集めて中国を再訪しました。前の訪中では中国共産党のトップクラスに会えなかったけれど、5000人を引き連れての訪中では当時の江沢民主席、胡錦濤副主席と共産党トップがずらりと揃っていた。

2000年はちょうど日中関係がおかしくなり始めていた頃で、中国としてもこの訪中は歓迎すべきものだったのです。

そこからパイプががり、何度も訪中を繰り返し、いつの間にか中国に関する重要な案件は二階氏を通さなければならず、また中国も言うことを聞いてくれる二階氏は都合がいいために重宝することになった。

国内を見れば、二階派は誰でも受け入れるので数は多い。まさに数は力という田中派の系譜です。数を揃えることで総裁選のキャスティングボートを握り、それによって自身の存在感を高めていく。幹事長でもあるので、自民党の金を自由に使えるのも大きい。

この「二階一強」は、自民党の構造的な問題でしょう。もはや、党内で論議は行われていないに等しい。「習近平国賓来日」に関して若手議員が反対をしていましたけど、おとなしいもので、かつての青嵐会のような激しさはありません。

ことほど左様に、自民党は変質しましたが、それは官僚組織にも言えることです。

かつてはエリート中のエリートが官庁、特に財務省、経産省に入っていくものでしたが、平成に入ってからはそういう傾向が少なくなり、もちろん優秀な人が一握りは存在しますが、大部分は”そうではない”人が占めるようになってしまった。優秀とは何も頭の良さだけでなく、時に「職を賭してでも」という気概をもって仕事に当たれるかどうか、ということです。

そういう人材が減ることは、政治主導の裏返しではあります。政治主導を目指せば、結果的に官僚の力が弱まってしまう。しかし、それにしても劣化が激しい。その顕著な例が文部科学省と厚生労働省で、言われたことしかやらない。自分から率先して仕事をしない。厚労省のケースは、新型コロナ対応を見れば明らかでしょう。

Getty logo

やっぱり小池は駄目

このように様々なことが変質していくなかで、コロナ後の日本の政治はどうなるのか。

まずはっきりしたのは、野党には政権は任せられないということ。

1月22日に行われた代表質問で、立憲民主党の枝野幸男代表は、新型コロナを素通りして「桜を見る会」を取り上げました。たしかにこれは問題があり、指摘するのも理解できますが、目の前にある危機を無視してまでやることではありません。

枝野代表に限らず、蓮舫副代表なども、野党議員は代表質問でコロナ問題にはほとんど触れませんでした。

この日だけでなく、武漢が閉鎖されたあとも、野党議員はひたすら「桜を見る会」ばかり。これでは、いくら安倍政権が失点しても野党待望論は起きない。危機予知能力どころか、現在ただいまの危機すら認識していないのですから。

そんな野党の中で維新の支持率だけが上がった理由は、大阪の吉村洋文府知事がコロナ対応で善かれ悪しかれ脚光を浴びたからでしょう。

コロナ後の政治において、こういうタイプの政治家が出てきたことが一つの”救い”になります。指導力、リーダーシップを発揮し、自ら動く。間違いがあれば撤回し、謝罪と反省をしてまた次へと動いていく。言い換えれば、「行動を国民に見せる」タイプの政治家です。

ちなみに、小池百合子都知事は権力に対する執着があからさまに出ていて、たとえば今回のコロナ対応でも次の選挙にげようとしているのが透けて見える。彼女の場合、もう少し政治的野心をコントロールしないと駄目です。

ともあれ、日本の首長は大統領型で、総理大臣に比べてリーダーシップを発揮しやすい。その点で、今回の新型コロナ対応では優劣がはっきりし、大阪の吉村知事と松井一郎市長のコンビはうまく力を発揮できた。それが維新の支持率にがった。

今後は、地方首長のなかから国政を担う政治家が出てくることになるでしょう。いかに見える形でリーダーシップを国民に見せるかが、政治家の大きな課題になる。

これはむろんポピュリズムと紙一重で、危うさを孕んではいますが、もうこういう形でしか国民は政治家についてこない。

関連する投稿


安全が保障されてこその国民生活ではないか|太田文雄

安全が保障されてこその国民生活ではないか|太田文雄

財務省は4月20日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、自民党内で広がる防衛費増額論を「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」と牽制したと報じられている。国家の安全が保障されず今日のウクライナのような状況になれば、国民の生活や経済は成り立っていかない。


ロシアによる北海道侵略、日本が強化すべき2つの力|和田政宗

ロシアによる北海道侵略、日本が強化すべき2つの力|和田政宗

プーチン政権は完全に正気を失っている――。今後の状況いかんによってはウクライナへの核使用、NATO諸国への攻撃、我が国へのミサイル攻撃、または北海道への侵略を行う可能性すらある。「まさか」はもう通用しない!いますぐ日本がすべきことを和田政宗議員が緊急提言!


ロシアによる“北海道侵略”に備えろ!|和田政宗

ロシアによる“北海道侵略”に備えろ!|和田政宗

世界各国はロシアが「まさか」ウクライナに全面侵略するとは思っていなかった……。「まさかしないだろう」という性善説はもう通用しない! 予期せぬことがいつでも起こり得る「まさかの時代」と日本はどう向き合えばいいのか。また、どうすれば「プーチンの戦争」を止めることができるのか。日本が果たすべき役割を和田政宗議員が緊急提言!


岸田首相はデフレの泥沼に日本を沈めるのか|田村秀男

岸田首相はデフレの泥沼に日本を沈めるのか|田村秀男

岸田文雄政権は財務官僚の均衡財政主義に引きずられ、日銀審議委員人事では反金融緩和派を指名した。財務省の政権に対する影響力は絶大だ。このままでは日本再生の見込みは完全に失せ、国家と国民はデフレの泥沼に沈んで行くだろう。


「プーチンの戦争」を止められるのは誰か|和田政宗

「プーチンの戦争」を止められるのは誰か|和田政宗

核の恫喝、極超音速ミサイルの使用。ロシアは市民に対する無差別爆撃を繰り返しており、多くの子供が亡くなっている。プーチン大統領の狙いはどこにあるのか。誰がプーチン大統領の暴走を止めることができるのか。日本外交の真価がいま問われている――。


最新の投稿


岸田政権の〝増税〟に反対!|和田政宗

岸田政権の〝増税〟に反対!|和田政宗

時事通信は5月19日、『法人税率、引き上げ案が浮上』との見出しで、与党の税制調査会で法人税の実効税率を引き上げる案が浮上していると伝えた――。日本経済の閉塞感が強まっているなか、積極的な財政出動を行わなければ経済は支えられないのに、増税という論が出てくること自体が滅茶苦茶であり、私は明確に反対である。


払拭できない沖縄の反ヤマト感情|田久保忠衛

払拭できない沖縄の反ヤマト感情|田久保忠衛

沖縄返還の「核抜き」(沖縄からの核兵器撤去)の要求をニクソン政権がのんだことは、米国から中国への関係改善のシグナルとなり、ニクソン大統領の歴史的な訪中につながった。「核抜き」で最も喜ぶ国が中国であったことを、日本は今でも理解しているだろうか。


日本の核不安の一因はバイデン政権にある|太田文雄

日本の核不安の一因はバイデン政権にある|太田文雄

ウクライナ侵略後、ロシアが核兵器使用をほのめかして威嚇する中で、我が国においても核攻撃に対する不安から、米国との核共有や日本独自の核保有を検討すべきだとの議論が高まっている。そうした不安の一因はバイデン政権の政策にある。


【読書亡羊】皇室を巡る「公と私」の軋轢 江森敬治『秋篠宮』(小学館)

【読書亡羊】皇室を巡る「公と私」の軋轢 江森敬治『秋篠宮』(小学館)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


【にゃんこ四字熟語辞典クイズ】⑮これはどんな四字熟語?

【にゃんこ四字熟語辞典クイズ】⑮これはどんな四字熟語?

『Hanada』で書評を連載している西川清史さんが、世界中から集めた激カワにゃんこ写真に四字熟語でツッコミを入れた『にゃんこ四字熟語辞典』が発売されました。本書から一部を抜粋してクイズです。この写真はどんな四字熟語を現した一枚でしょうか?