大韓民国憲法第65条は弾劾に関するものであり、66条は大統領の義務に関するものである。
弾劾に関する憲法65条:
①大統領・首相・閣僚・行政各府の長・憲法裁判所裁判官・裁判官・中央選挙管理委員会委員・監査院長・監査委員、その他法律が定めた公務員が、その職務執行において憲法や法律を違背したときは、国会は弾劾の訴追を議決することができる。
②第1項の弾劾訴追は国会在籍議員3分の1以上の発議がなければならず、その議決は、国会在籍議員の過半数の賛成がなければならない。但し、大統領に対する弾劾訴追は、国会在籍議員の過半数の発議及び国会在籍議員3分の2以上の賛成がなければならない。
大統領の義務に関する憲法 第66条:
- ①大統領は国家の元首であり、外国に対して国家を代表する。
- ②大統領は、国家の独立・領土の保全・国家の継続性及び憲法を守護する責務を負う。
- ③大統領は、祖国の平和的統一のための誠実なる義務を負う。
- ④行政権は、大統領を首班とする政府に属する。
6日目に成立した弾劾(Impeachment in only 6 days)
国会は、朴槿恵大統領を性急に弾劾訴追した。 聴聞会もなく、捜査も行われなかった。 弾劾訴追案の議決は、弾劾訴追案の発議後6日目にして、迅速に処理された。 このように弾劾手続きは非合理的に、拙速に行われた。 たとえそれ自体に憲法違反がなかったとしても、独立的な2つの捜査が1年6カ月にわたって進められた米国のリチャード・ニクソン大統領の事例とは、はっきりと対比される。
当初、国会は2016年12月6日に弾劾関連の聴聞会を計画したが、予定された聴聞会の3日前に、野党議員らが電撃的に弾劾訴追案を発議した。 事件を論議する聴聞会も開かれないまま、弾劾訴追案が先に提出されたのだ。
弾劾訴追案は2016年12月3日に発議され、わずか6日後の12月9日の金曜日に表決された。 171人の国会議員が弾劾訴追案の上程に参加した。共に民主党(121人全員)、国民党(38人全員)、正義党(6人)、無所属(6人)。[5] 弾劾訴追案の発議から議決まで、十分な熟慮期間もなかった。 大半の国会議員は弾劾が議決するまで、弾劾訴追案を読んでもみなかったようである。[6] 重大な国家的事案である弾劾訴追案について、実際には国会で議論がなされなかったのである。
当時、国民党(現在、正しい未来党)所属のキム・グァンヨン国会議員が、12月9日午後、弾劾訴追案を説明し、国民らがろうそく集会を通じて大統領の弾劾を要求していると言ったことで、事実上結論を下した。 彼は同僚議員に「群衆の叫び声が聞こえませんか」と叫んだ。[7]すなわち、彼に弾劾の根拠は「群衆の叫び」であり、何らかの証拠に裏付けられた具体的な憲法違反や法律違反ではなかったのだ。 当時、政権与党だった数名のセヌリ党議員は、決議案に関する手続きについて説明を要請したが、たちどころに無視され、すぐに採決が始まった。[8]国会議員たちは弾劾訴追案の細部事項を聞いて、把握する暇もなく表決を強要されたのである。
韓国の国会には300人の議員がいる。 法案が通過するためには、3分の2以上の賛成が必要であるため、少なくとも300人のうち200人の賛成票が必要だった。 すなわち、101人かそれ以上の賛成がなければ法案は通過できない。朴槿恵大統領の所属党でもあり、現在の自由韓国党である当時のセヌリ党議員62人と院内代表を務めたキム・ムソンまで、弾劾訴追案に賛成票を投じた。 弾劾訴追案は賛成234人、反対56人、棄権2人、無効7人、欠席1人で、国会を通過した。
当時、国民の党の院内代表パク・チウォン、共に民主党院内代表ウ・サンホ、正義党院内代表ノ・フェチャンは、朴槿恵大統領弾劾に向けて連合戦線を立ち上げた。 彼らはセヌリ党を破るため団結することにした。 パク・チウォンは弾劾に必要な十分な票を集めるため、与党セヌリ党のキム·ムソン議員に接近した。
パク・チウォンは2019年2月14日TBSラジオに出演し、次のように明かした。:「(セヌリ党の)20票が必要だったので、私がキム・ムソン議員と会って『安全に40票を確保してほしい』と伝えました。続けてパク・チウォンは「キム・ムソン議員から『40票集まりました。』と言われた」が、「ところが、後に確認したところ、(セヌリ党内の弾劾賛成)62票で弾劾が可決された。」と回想した。 キム・ムソンは、翌日の2月15日、フェイスブックでこの事実を否定しながら、パク・チウォンに「その軽い口を閉ざせ。」と投稿した。