LGBTの皮を被った反日活動家と弱者ビジネス
北陸地方のとある街に住むかずと氏は40代半ば。一回り年下の相方と暮らすゲイの男性である。彼は、『新潮45』2018年8月号に掲載された杉田水脈論文が、LGBTに対する差別だと猛烈な批判を浴びたことに、当事者として大きな疑問を感じた。
この思いを自身のブログにぶつけたところ、その文章が『新潮45』編集部の目に留まり、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と名付けた10月号の特集の7名の執筆者の一人になった。しかし、当事者であるかずと氏のこの論文は、なぜか黙殺されてしまった。
私は彼に会いに、北陸の街を訪れた。駅に出迎えてくれた彼は、感じのいい小柄な普通の男性である。彼は「ホモも単なる男です」という。「ホモ」という言葉は最近、差別語ともいわれるが、彼はあえてこの言葉を使う。そして、「私はLGBTとは無縁なホモにすぎない」ともいう。
「気がつけば、当事者とは無縁なところに、LGBTなんていう世界が完成していた。一緒に暮らす相方も知り合いの若いゲイたちも、だれひとり、自分をLGBTとは思っていません。同性愛者=弱者、不幸、なんてとんでもない。同世代のノンケが、家のローンだの子供の教育費に頭を悩ませているのに比べると、生活ははるかに楽。ホモでよかったと思います。相方と、『生産性』という言葉に過剰反応すべきじゃない、と話してますよ」
2018年の『新潮45』騒動で、図らずも露呈したことがある。テレビや新聞で騒動についてコメントした当事者の多くは、いわゆるLGBT活動家であり、その主張は必ずしも、市井に生きる普通の性的マイノリティの本音を代弁してはいないということだ。それどころか、両者の間には深刻な断絶があり、「活動家嫌悪」という感情さえ生まれている。
現在、ネット上で性的マイノリティであることを公言し、さまざまな意見を発信している当事者は多いが、彼らの間では「差別」を糾弾した活動家や第三者を批判し、『新潮45』を擁護する逆転現象すら起きている。
「今回の弱者は、たった1万6000部しか発行してない、不当なメディアバッシングに対抗する術もない『新潮45』と、当事者なのに全く意見を汲み取ってもらえなかった俺ら普通の性的マイノリティだよ。で加害者は、ロクに読みもしないで気に入らない本を燃やして狂喜乱舞している奴ら」
「そういう奴らは結構身近にもいるよ。LGBTの皮を被った反日活動家。俺たち当事者は結局無視され、LGBTの名は道具として利用されるだけ。自由な言論すら封殺され、一般の文芸誌が廃刊に追い込まれた……」
その他、「差別もないのに活動家が騒ぎすぎだ」 「弱者ビジネスだ」 「自分たちの代表面するな」等々、活動家に対する批判は噴出している。
問題なのは、こうした声がマスコミに見事に黙殺されたことだ。うっかり非活動家の当事者の声を取り上げると、マスコミや活動家が描いた「これは差別事案である」という構図が崩れてしまうからではないか。かずと氏は、そうした“不都合な当事者”の一人である。
当事者の気持ちを理解してくれた杉田水脈議員に信頼感
杉田論文の感想を彼はこういう。
「『生産性』という言葉に引っかかるかもしれないけど、その前後の文章を読めば何らおかしくない。要は、LGBTのカップルより、子供ができないカップルへの不妊治療や子育て支援に優先的に税金を使いましょうっていう主旨で、当然の話ですよ」
むしろかずと氏は、杉田氏に信頼感を抱いたという。なぜなら、彼女の論文中に自分の心境を言い当てたような次の一文があったからだ。
〈LGBTの当事者の方たちから聞いた話によれば、生きづらさという観点でいえば、社会的な差別云々よりも、自分たちの親が理解してくれないことのほうがつらいと言います〉
正直、杉田氏が当事者の気持ちをここまで理解していることに驚いた。彼女がきちんと当事者に話を聞いている証拠だと思った、とかずと氏はいう。
「よく親ならわかってくれるなんて話を耳にしますが、親がノーマルだからこそ私たちが産まれているわけで、一番理解してくれないのは実は親なんです。私も両親にカミングアウトしたら、母親から『意味がわからない』といわれてしまった」