さて、トランプはこのデモをどう見ているのか。激戦州ウィスコンシン州での演説の中でトランプは、デモ参加者を「荒れ狂う狂人」と呼び、それを取り締まる警察を称賛している。また、全米の大学でも同様の行動をとるよう呼びかけた。そして、デモ参加者は国境問題から注意をそらすために雇われたのだとの独自の見解も示した。
自身のSNSサービス「Truth Social」には、それに関して、動画のみの投稿を4日に行っている。その約1分間半の動画は、様々なメディアの報道やデモ関係の映像を組み合わせたものだが、そこに映されているのは、デモ隊にカウンターをする米国の愛国的な学生たちだ。舞台となったノースカロライナ大学チャペルヒルでは、デモ隊が構内の星条旗(米国旗)をパレスチナの国旗に変えてしまった。そこで同大学の学生らが星条旗を戻し、デモ隊による下品な言葉やジェスチャー、そして投げ物に耐えながら星条旗が地に付かないよう守り、最後は現場にいた人々と「USA!USA!」と声をあげるという映像なのだ。トランプが再び偉大にしたい「アメリカ」がそこにあるわけである。
ちなみに、星条旗を守った愛国的な学生たちは、保守派の間で感動を呼んでいる。既に寄付金が50万ドル(約7,600万円)を超えている。カントリー音楽のシンガーソングライターであるジョン・リッチ氏は、彼らのために無料で歌いたいとのことで、大学と調整中と見られる。
ロシア、中国、イランが支持を表明した意味
ドラマ溢れる米大統領選だが、デモ隊やその支援団体の他にも、米国に対して牙を剝く勢力がいるので、しっかり把握しておきたい。NYタイムズは「ロシア、中国、イランに、米国の分断を利用する燃料を与える大学デモ」という記事を出し、その3カ国がいずれも、昨年10月以来、プロパガンダと偽情報でイスラエルとその主要な同盟国である米国の弱体化を目論む一方で、ハマスやパレスチナ人全般への支持を表明している点を指摘している。その3カ国は米国が弱体化すれば得をする敵側の勢力なのである。
同記事の大事な指摘は、①大学デモの拡大が、その3カ国のプロパガンダをバイデン政権のイスラエル支持を問うものに転換することを可能にした点、②同3カ国がガザを巡る米国の社会的・政治的対立を増幅させようとしている点、③それらをもって大統領選挙において、党派間の緊張を煽り、民主主義を否定し、孤立主義を促進しようとしている点、④同3カ国がいずれも、動機は異なるものの、米国の信用を落とすことで利益を得ている点、⑤そのためには、同3カ国が米国市民のアカウントやメディアを装うことを厭わない点、などであろう。常に情報戦が展開されていることを念頭に置きたい。