さらに、「日本をもう一度偉大に、面白くする」と題して、「悲観論もあるが、日本はまだまだ素晴らしい」と述べたのは、3月まで日銀副総裁を務めた早稲田大学教授の若田部昌澄氏だ。
今年2月、約10年の勤務を終えた英BBC放送のルーパート・ウィングフィールド・ヘイズ東京特派員が、「日本は未来だった、しかし今では過去にとらわれている」との「卒業論文」をデジタルニュースに書いたところ、1月20日の公開から2日間で閲覧数は300万に達するなど大きな反響を呼んだ。
しかし、若田部氏はこれにこう異議を唱えた。
「アベノミクスで労働人口の増加率は雇用率とともに向上し、雇用者数が増え、一人当たりの成長率も高くなった。もちろん女性や高齢者の働きも増え、デフレにはなっていない」と述べ、すでにデフレを脱却したとアピールし、「野球のWBCで活躍した米大リーグ・ロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手のような若者も出て来た。マンガやアニメ、カツカレーライス(英国)、ラーメンのソフトパワーも世界で輝きを持っている」「出生率も中国の1・2%や韓国の0・8%に対し、1・3%とそれほど悪い数字ではない。日本は今後もさらに成長を見込むことができる。まだまだ世界で輝ける」
これまで日本は「奈良時代、明治時代、第二次世界大戦後」の三つの時代に大きな成長を成し遂げた。今一度大きく成長する四度目の「Great Opening」が求められているという。
「他国に追いついていく余地はまだまだある。アベノミクスの完遂も変わらず目指さなければならない。そのためには、注意深く検討しながら市場をオープンにし、さらなる競争を喚起する政策が必要だ」
焦る必要はない。日本の良さを再認識して市場を開放し、競争を喚起してアベノミクスを淡々と進めていくことが肝要であると説いた。
中国の覇権を止められる政治家は安倍晋三以外にはいない
会議途中から参加したBGF会長のデュカキス元知事は、安倍元首相が「世界的な啓蒙リーダーだった」と敬意を表した。
「類まれな指導力で国際社会を束ねた安倍氏を悲劇的な暗殺で失い悲しく残念だ。ロシアの侵攻で新冷戦といえる困難な時代を迎えた国際社会は、安倍氏のリーダーシップとコンセプトを受け継ぎ、協力して国際問題に対処できるように努力していかねばならない」
国際問題とは様々な中国の脅威に他ならない。
トゥアン氏も続けた。
「世界を導いた安倍氏のリーダーシップは平和に重要だった。そのレガシーを引き継ぎ、より円滑にスマートに団結しなくてはならない。そして安倍氏を称えることで日米関係がさらに緊密になることを期待してやまない」
これほどまでに安倍元首相を高く評価するのは、米国が中国の覇権を止められる政治家はほかにいないと考えたからかもしれない。デジタル・データ分野でも中国が世界をリードし、IT技術を通じて「見えざる脅威」への恐怖心が強くなっている。
だとすると、国際社会が安倍元首相の遺産を引き継ぎ、民主主義国は一層、結束して抑止力と技術力を高め、中露による世界秩序の破壊に備えなければならないだろう。安倍元首相なき時代の歩むべき道は、安倍元首相が示してくれている。
「今後もデュカキス元知事、トゥアン氏らと力を合わせて世界の指導者だった安倍元首相を称えるシンポジウムを開催したい」。ボストン・グローバル・フォーラム日本代表の三田伸江氏は、意欲を語った。