“弱毒”のオミクロン株に翻弄!岸田内閣は“ワイドショー内閣”だ|坂井広志

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「聞く力」がトレードマークの岸田首相だが、いったい誰の声を聞いているのか。「まん延防止等重点措置」の適用について、ある政府関係者は「先手の対応だ」とご満悦だったが、浮かれている場合ではない。そもそも本当に「先手」なのだろうか。「聞かなきゃわからない岸田首相」のコロナ対策を、産経新聞編集委員の坂井広志氏が斬る!


「仕事中毒」の大臣と会見での「尾身外し」

後藤氏は旧大蔵省出身とあって、社会保障制度に精通しているのは間違いない。しかし、勉強熱心なあまり、厚労省に午後10時過ぎまで在庁しているのはざら。国会答弁や記者との想定問答などを説明する「大臣レク」では、「非常に細かく聞いてくる」(幹部)という。

このため1回にかけるレクの時間も長くなり、働き方改革を率先して行うべき官庁にもかかわらず、夜遅くまで付き合わされる官僚は少なくない。省内からは「いずれ倒れる人が出てくる」との声が漏れるほどだ。

別の幹部は、「目立ちたがり屋で何かとぶら下がりをしたがる」と語る。実際、田村前厚労相と比較してもたしかに多い。厚労省クラブに詰めている筆者から見れば、「わざわざ大臣自らが発表すべきものなのか」と思ったものも少なからずあるが、これまた菅前政権時の反省からなのか、政権として情報の発信を強化しているようだ。事の軽重を判断し、メリハリをつけてほしい、とだけ申し添えておきたい。

山際氏については、国会答弁を聞いていてもそつがないという印象だ。可もなく不可もなくといったところか。前政権との違いは、岸田首相もそうなのだが、分科会の尾身茂会長と並び立つ形で記者会見を行わない点だ。菅氏も西村氏も、尾身氏と一緒に会見することが多かった。

岸田首相にしても山際氏にしても、専門家に政策決定の主導権を握られている印象を与えるのを避けたいのだろう。3県への重点措置の適用を決めた7日も、山際氏の記者会見に尾身氏はいなかった。

しかし、専門家として発信はしておきたかったのだろう。記者側の要望もあり、政府方針を了承した専門家でつくる基本的対処方針分科会(この分科会の会長も尾身氏)のあと、尾身氏のぶら下がり取材が行われた。

記者からの質問が多かったというのもあるが、ぶら下がりなので立ったまま、なんと約55分間も行われた。「これならちゃんと記者会見をセットしてほしい」という声が記者側からもれたのは、言うまでもない。

感染症法改正案を先送り……

さて、最悪の事態を想定してここまで突っ走ってきた首相だが、ここにきて急ブレーキがかかりつつあるようだ。政府は当初、病床確保強化に向けた感染症法改正案を通常国会に提出する予定だったが、なんと提出を見送るというのだ。

改正案は、都道府県などの自治体と医療機関が結ぶ協定を法律上の仕組みとするものだ。第5波では自治体と医療機関が明確な取り決めをせずに確保病床数を決めたため、確保病床数と実際の入院患者数が乖離する事態が発生。「幽霊病床」という言葉が生まれるなど、専門家から、確保した病床の実効性を疑問視する声が上がっていた。

このため、協定を結ぶことで、確保した病床を確実に稼働させることを狙ったわけだが、その改正案が先送りとは驚くほかない。

自民党からも、鈴木馨祐元外務副大臣がツイッターに「病床確保の実効性を上げるための法改正を見送るという判断は正直理解に苦しみます」と投稿するなど、批判の声が上がっている。

首相は1月9日のフジテレビ番組で、「6月までに中長期的な課題をしっかり洗い出したうえで法改正を考えていく」と先送りの理由を語っていたが、悠長すぎないか。最悪の事態を想定している政治家の発言とは到底思えない。

首相は「選挙を気にしてということではなく、いまの法律や制度のなかでできることは最大限やり尽くす」とも述べていたが、夏の参院選をにらみ、野党との対決法案になり、審議時間をこれに多く割かれるのを避けたかった、というのが本音だろう。

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