“弱毒”のオミクロン株に翻弄!岸田内閣は“ワイドショー内閣”だ|坂井広志

“弱毒”のオミクロン株に翻弄!岸田内閣は“ワイドショー内閣”だ|坂井広志

「聞く力」がトレードマークの岸田首相だが、いったい誰の声を聞いているのか。「まん延防止等重点措置」の適用について、ある政府関係者は「先手の対応だ」とご満悦だったが、浮かれている場合ではない。そもそも本当に「先手」なのだろうか。「聞かなきゃわからない岸田首相」のコロナ対策を、産経新聞編集委員の坂井広志氏が斬る!


感染力が2倍でも対応できる計画?

本稿の冒頭に「やってる感」を演出していると書いたが、昨年11月12日に政府対策本部で決定した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」の策定がそのことを象徴している。

全体像には、「今夏のピーク時における急速な感染拡大に学び、今後、感染力が2倍となった場合にも対応できるよう、医療提供体制の強化、ワクチン接種の促進、治療薬の確保を進める」と明記している。昨夏の第5波の2倍の感染力に対応できる計画というわけだ。

目下、オミクロン株が猛威を振るっており、感染力が2倍でも対応できる計画を昨年11月の段階で策定したとはなかなか先見の明がある、と称賛するわけにはいかない。

「感染力が2倍」という言葉にごまかされるわけにはいかない。これは、第5波のピーク時の新規感染者数の2倍という意味ではない。実は、この全体像のペーパーに「※」(米印)で小さな文字で説明しているのだが、当時ワクチンの接種率が低かった若年者の接種率が70%まで進展したことを前提とした場合の感染者数の2倍という意味なのだ。

したがって、昨夏と比べてあくまで約3割増の約3万7,000人が入院できる体制を構築するとしている。「感染力が2倍」という言い方はどう考えても誤解を与えるもので、欺瞞だ。

厚労省の記者クラブで全体像の説明が行われたが、担当者は良心の呵責があったのか、実際に発生した新規感染者数の2倍ではないことを、やたらと強調していたのを思い出す。

さらに、この計画では病床使用率は80%を前提にしている。ある患者を退院させ、新たな患者を入院させる際、その作業にかかる間、一時的に病床は空くため、病床使用率が100%になることは基本的にはなく、80%というのは病床が逼迫した状態というのが、医療従事者のほぼ共通した見解だ。

政府は、全体像で示した病床を確保したと説明しているが、現在起きている第6波で重症者が多発した場合、こんな余裕のない計画に実効性があるのか、甚だ疑問だ。

ただ、幸いオミクロン株はほとんどが軽症者だ。このまま重症者が大幅に増えない限り、計画に実効性があるのかどうかは分からないまま第6波は収束することになるのでは、と筆者は見ている。

菅内閣のコロナ関係閣僚を一掃

オミクロン株への感染をめぐっては、軽症者が続出しており、自宅や宿泊施設での療養者の体調が悪化した場合には、速やかに医療機関に入院させなければならない。そのために健康観察は極めて重要になる。しかし、感染者があまりにも増えれば、保健所だけで対応するのは無理だ。

このことは官邸サイドも理解しており、全体像にはこう書かれている。
「従来の保健所のみの対応を転換し、保健所の体制強化のみならず、オンライン診療・往診、訪問看護の実施等について、医療機関、関係団体等と委託契約や協定の締結等を推進しつつ、全国でのべ約 3.2万の医療機関等と連携し、必要な健康観察・診療体制を構築する」

しかし、この「約3.2万の医療機関等」の内訳をみると、医療機関約1.2万機関、訪問看護ステーション約1,000機関、薬局約1.9万機関となっており、半分以上は薬局を想定している。薬局の薬剤師は健康観察ができないとは言わないが、入院が必要かどうかなどの判断を薬局のスタッフができるのか、と素朴な疑問を抱く。この全体像は、突貫工事で作った側面があるのは否めない。

そもそも、一体だれが司令塔となって、どこで協議してまとめ上げたのか、全く見えてこない。首相は全体像の作成を、山際大志郎経済再生担当相、後藤茂之厚労相、堀内詔子ワクチン担当相に指示したはずだが、この3人が連携した形跡は見当たらず、見えてくるのは、首相の期待に応えようとした官僚の姿だけだ。

菅前政権では、ことあるたびに西村康稔経済再生担当相、田村憲久厚労相、河野太郎ワクチン担当相らが集まり、対策を協議していた。特に菅、田村、河野の3氏は当選同期ということもあり、意思疎通は円滑に行われていた印象が強い。

岸田内閣が発足する際、政策の継続性の観点から、コロナ関係閣僚のうち1人くらいは続投させるのではないか、との観測が流れたが、3人とも代わった。このことは菅体制の一掃を意味する。こうなることを予想していたのか、田村氏は昨年9月の自民党総裁選直後から「自分が残留することは絶対にない」と周囲に漏らしていた。

総裁選の候補だった河野氏、その河野氏を支援した田村氏、同じく総裁選の候補だった高市早苗政調会長を支援した西村氏。こうした人間関係を考えたとき、首相は菅政権時のコロナ関係閣僚に、政権の行方を左右するコロナ対策を委ねる気にはなれなかったのだろう。

とはいえ、である。首相と同じ宏池会からの起用となった堀内氏は昨年の臨時国会で、官僚がそばで手助けしてもしっかりとした答弁ができず、目は泳ぎまくり。ワクチン行政の実動部隊である厚労省の幹部は「あれでは贔屓の引き倒しだ」と、首相のワクチン担当相への堀内氏起用を冷ややかに見ている。

オミクロン株では、2回接種をしても感染してしまう「ブレークスルー感染」が相次いでいる。3回目の追加接種が急がれる所以だが、追加接種を急ごうにも、米製薬大手ファイザー製のワクチンの調達前倒しが思うように進んでいない。

ファイザー製を2回接種し、3回目は米モデルナ製のワクチンを打つという「交差接種」でも問題はないが、モデルナ製を打って高熱の副作用が出た人は多いため、ファイザー製のニーズが高いのが現実だ。第6波到来という重要な時期だけに、堀内氏の頼りなさが際立つ。

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