衆参ともに3分の2を超える勢力を保持
憲法改正の国会発議と国民投票は、岸田文雄総理・総裁の決断でいますぐにでも動かすことができる状況となっている。いついかなる時も国家と国民を守るためにも、憲法改正へ総理の決断が求められる。
すでに衆院の憲法審査会では4党1会派の計5会派が、いま行うべき憲法改正の内容について一致している。5会派は、自民、公明、維新、国民、無所属議員からなる「有志の会」で、これら5会派で衆院において総議員の3分の2を超えるとともに、参議院でも同様に3分の2を超える勢力を保持することから、憲法改正の国会発議はいつでもできる状況なのである。
一致している内容とは、大災害や有事の際の国会機能維持についての憲法改正である。現行憲法では、衆院解散後に大災害等が起きた際には、参院の緊急集会を開催し、必要な予算や法改正等を行うこととなっている。しかし、この緊急集会を開催できる期間が問題視されている。現行憲法上に明文の規定はないが、開催できるのは最大70日間と解されるからである。
参院の緊急集会が規定されている憲法54条からは、参院の緊急集会が開催できるのは、衆院が解散されて衆院選が実施され(解散から40日以内)、その後の特別国会が召集されるまでの期間(衆院選から30日以内)とされ、合計70日以内となる。すなわち、衆院解散後70日を超えて参院の緊急集会は開催できず、それ以後に予算編成や法改正を行なおうとしても、衆院選が終わるまでずっと国会は開会できないのである。
実はこれは大問題であり、民主主義国家である我が国が、衆院解散後に大災害や有事が起き、衆院解散から70日を超えてしまうと、何ら国会で決めることができないということになる。平成23(2011)年の東日本大震災時は、翌月に統一地方選を控えていたが、沿岸被災地では選挙が延期され、実施できたのは半年後から1年後であった。いつ実施できるか分からない衆院選までの期間、国会が開けないというのは憲法の欠陥である。
早ければ年末、遅くとも来年春までには
5会派一致の内容は、こうした際に衆院議員の任期延長を行えるとするものであり、大災害や有事の際にも、国会機能をしっかりと維持しようというものである。ちなみに、ロシアの侵略を受け防衛戦を行っているウクライナでは、憲法に基づき昨年秋に任期満了を迎えた国会議員の任期を延長し、国会で様々なことを決めている。
この衆院議員の任期延長案は、憲法における緊急事態条項に該当するものであり、衆院憲法審査会においては、憲法審査会の下に条文作成機関を設置し、具体的な条文作成作業に入る事を自民党が求め、他の4会派も賛同した。しかし、立憲民主党や共産党が強硬に反対しており、設置に至っていない。
この点について昨日の党首討論で、岸田総理が立憲民主党の泉健太代表に対し、条文作成の議論への参画を求めるとともに、「条文作成の具体的な作業に入れば国会の全委員会の審議を止める」と発言した立憲幹部の発言を批判し、こうしたことをしないよう求めた。しかし、立憲の泉代表はこれを全く受け入れなかった。
この事態を打開するには、国会日程に関わらず、憲法改正賛同5会派で協議会を設置し、具体的な条文作成作業に入るしかない。国会法では、憲法審査会で憲法改正原案を可決し提出する方法と、衆院において1人の提出議員に100人の賛成、参院においては1人の提出議員に50人の賛成で憲法改正原案を国会に提出する方法がある。憲法審査会において条文作成作業が進まないのであれば、後者の国会議員提出を行うべきである。
そうすれば、衆議院に提出された場合は、衆院憲法審査会で議論・採決を行い可決、衆院本会議3分の2の賛成を経て、参議院へ。参院でも憲法審査会で議論・採決後、参院本会議で3分の2の賛成で国会発議となり、国民投票が行われることとなる。
繰り返しになるが、現在いつでも具体的な条文作業に入れる状況であり、岸田総理が決断すれば一気に進む。今国会を延長するのも方法であるし、いったん国会を閉会し、5会派協議会を開催し具体的な条文案がまとまり次第、臨時国会を召集し憲法改正の議論を行って国会発議を行うという方法もある。
秋の臨時国会が9月に召集され、10月中の発議となれば、国民投票は発議から60日以上180日以内で行うことから、早ければ年末、遅くとも来年春までには国民投票を行うこととなる。