一票に格差があってどこが悪い!|深澤成壽

一票に格差があってどこが悪い!|深澤成壽

選挙の度に問題となっている「一票の格差」。昨年10月の参院選もこれをもって違憲だとする訴訟が各地で相次いでいる。しかし、本当に「一票の格差」は問題なのか? 改めて考え直してみると……。(初出:2013年5月号)(本稿は著者の考えに基づき、旧仮名遣いとなっています)


法律の世界の限界

最高裁判事殿、大した理想を仰せだが、この大部分を大都市出身者で占める人気者集団が「全國民を代表して国政に関与」し、全国津々浦々に散在する過疎地の住人たちまで目配りし、全国土の辺土に至るまでの総合的な維持、発展を適切に担へるか。机上の空論とはこのことだ。

但し、そんな厄介な部分(地方)は、国政に於ける負のお荷物だから配慮するに及ばぬ。切り捨てた方が効率が良いとの考へがあるかも知れぬ。シンガポールはどうやら効率が良ささうだ。問題は此処にある。一連の「訴訟グループ」の思念の中に、意識するとしないとに拘はらず、その動機がおそらく潜んでゐる。

尠くとも辺土と僻地住民への惻隠の情は皆無であり、そのこと自体に何等、痛痒を感じてゐないだらう。有れば、斯かる訴訟は起こさぬ筈だ。

最高裁判事は、云ふまでもなく法律家である。訴訟を起こした「弁護士グループ」も法律家である。両者とも、立場は違へども法律一筋で半生を過ごし、云ふなれば、法律を武器にして利害を争ふ世の揉め事を飯の種にして生きて来たし、これからもそれで生きて行くであらう皆様だ。然し、この世は法律が全てではない。己の生きて来た世界の限界を知るべきだらう。

司法が「政治制度の在り方」に介入し、最高裁が最終決定する今次事案は、重大にして且つ深刻な問題だ。その深刻さを、世人は、いや、当の政治家ですら全く認識してゐない。

行政課題は人口が全てか

行政課題は人口が全てではない。

我が山梨県は人口ほぼ85万人で、下位から7番目の小さな県である。東京の世田谷区は88万人を擁して、これよりやや多い。

古名の「甲斐」一国を以て一県を成してゐる小ぢんまりした山ばかりの小さな県だが、限界集落やら要介護世帯やら、困難な行政課題は一通り揃つてゐる。筆頭は治世の基本たる治山治水であらう。一度豪雨に見舞はれれば河川氾濫、土砂災害、道路寸断、僻地集落の孤立は毎度のことである。

衰退する諸産業について此処で多くは触れぬが、建設業、観光業、地場の宝飾業、醸造業に葡萄や桃の果樹農業、畜産、火の消えたシャッター通りなど、固より第一義的には自助努力であるにせよ、国に申し入れたき儀は山積である。

不公平に絶句

関連する投稿


『腹黒い世界の常識』「まえがき」を特別公開!|島田洋一

『腹黒い世界の常識』「まえがき」を特別公開!|島田洋一

「本書は、反日勢力が仕掛ける各種工作の実態を明らかにし、対処法を示すべくまとめた」国際政治学者の島田洋一名誉教授が書きおろした理論武装の書にして、戦略の書の「まえがき」を特別公開。


地方選惨敗後の「共産党声明」が“ヤバすぎる”|松崎いたる

地方選惨敗後の「共産党声明」が“ヤバすぎる”|松崎いたる

統一地方選挙で惨敗した日本共産党。だが、選挙翌日に出された「声明」は驚くべきものだった。もはやできないとわかっていながら、突き進むしかない“玉砕政党”の深刻すぎる実態!『日本共産党 暗黒の百年史』の著者で元共産党員の松崎いたる氏による「こんなに変だよ日本共産党」第4弾!


日本共産党「選挙活動」の舞台裏|松崎いたる

日本共産党「選挙活動」の舞台裏|松崎いたる

「SNSの活用なくして選挙勝利なし」―党員の平均年齢が70歳以上、スマホをもたない党員に対してもこう檄を飛ばし、党勢拡大のためなら個人情報の利用も厭わない。我が子を児童虐待する女を候補者に据えるなど“やりたい放題”の選挙活動。『日本共産党 暗黒の百年史』の著者で元共産党員の松崎いたる氏による「こんなに変だよ日本共産党」第3弾!


日本人よ、雄々しく立ち上がれ|櫻井よしこ

日本人よ、雄々しく立ち上がれ|櫻井よしこ

わが国は現在も中国に国土売却を続けている。エネルギーの源である電力網にさえ中国資本の参加を許している。


『日本共産党 暗黒の百年史』を書き終えて|松崎いたる

『日本共産党 暗黒の百年史』を書き終えて|松崎いたる

元共産党員が克明に綴った内部告発の書。党史研究の最高傑作が遂に刊行!日本共産党がこれまでやってきたこと、これからやろうとしていることが全て分かると話題!


最新の投稿


【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


わが日本保守党|広沢一郎(日本保守党事務局次長)

わが日本保守党|広沢一郎(日本保守党事務局次長)

昨今の政治状況が多くの日本人の心に危機感を抱かせ、「保守」の気持ちが高まっている。いま行動しなければ日本は失われた50年になってしまう。日本を豊かに、強くするため――縁の下の力持ち、日本保守党事務局次長、広沢一郎氏がはじめて綴った秘話に投票3日前の想いを緊急加筆。