令和5年の日本と世界の課題は、台湾を第二のウクライナにさせないことだ。中国の台湾侵攻は必然的に日本侵攻になる。私たちは十分な軍事力と経済力で強い抑止力を構築しなければならない。同時に、日本はカーター米政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官だったブレジンスキー氏が日本を「米国の事実上の被保護国」と呼んだ状況を脱しなければならない。そのためには安全保障も経済も、戦争勃発を大前提にして準備すべき年が今年である。
脱戦後へ憲法改正が不可欠
ロシアによるウクライナ侵略戦争と世界が危惧する中国の台湾侵攻問題の本質は、中露の拡張がそれだけにとどまらないことだ。その先にあるのは中露による世界秩序書き変えの野望である。「人類運命共同体」こそ人類世界の前途だと宣言したのが中国国家主席の習近平氏だ。中国は、米国は衰退期にあり西側の民主主義は機能停止に陥ったと判断し、中華の価値観こそ世界秩序の基盤をなすべきだと思い定めている。
迫り来る中国の脅威の前で、岸田文雄首相は、現行憲法を貫くパシフィズム(絶対平和主義)と「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」とした9条2項の考え方を、安全保障戦略3文書の発表によって上書きした。安倍晋三元首相が唱え続けた脱戦後の新しい地平に立ち、その上で米国との軍事協力強化策に取り組み始めたということだ。私たちはようやく、「米国の事実上の被保護国」と言われた不名誉な地位から脱け出そうとしている。
真に脱け出せるか否か。実はこれからだ。軍事費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げたとしても、単なる米軍の補完勢力としての軍事力強化に終われば、精神的に米国の被保護国であり続ける。軍事力の飛躍的増強に加えて、自立国としての憲法及び法律の改正が欠かせないゆえんである。