徹底検証!習近平の「台湾侵攻」は本当に可能なのか?|澁谷司

徹底検証!習近平の「台湾侵攻」は本当に可能なのか?|澁谷司

今年(2022年)2月24日、ロシアがウクライナへ侵攻した。それ以来、盛んに、台湾海峡危機とウクライナ危機が同列に語られている。本当に中国は「台湾侵攻」を決行するのか、徹底検証する。


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なぜ、米国はそれほどまでに台湾を特別視しているのか。

まず、第1に、台湾の地政学的重要性にあるだろう。台湾は「第1列島線」(日本・沖縄・台湾・フィリピン・ボルネオ島を結ぶライン)の要所に位置する。同列島線は米国にとって中国「封じ込め」の重要なラインである。

仮に、中国が台湾を併合すれば、台湾は沖縄攻略の起点となる。また、中国海軍は自由に西太平洋まで進出可能になるだろう。このように、今もなお「第1列島線」をめぐり、米中間で激しい攻防が続いている。

第2に、台湾は半導体の重要生産基地である。かつて「鉄は国家なり」と言われた。だが、今では、半導体こそ国家の命運を担っている、と言っても過言ではない。あらゆる電子部品に半導体が使用されているからである。

とりわけ、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)はナノ・テクノロジーで世界トップ企業となった。同社は5ナノメートルの半導体を供給している。近くTSMC は3ナノメートルの半導体を製造するという。同社は、今後しばらくトップを走り続けるだろう。

第3に、台湾は米国の重要な武器輸出国の一つである。

昨年8月、米ロッキード・マーチンは台湾へF‐16Vを66機、売却すると発表した。1992年、ブッシュ政権はF16戦闘機150機を売却したが、それ以来の大型契約である。その他、台湾は米製自走砲等も購入している。「軍産複合体」の米国として、台湾は有難い存在だろう。

第4に、台湾は李登輝政権下で、蔣経國の権威主義体制から、民主主義体制へと変貌を遂げた。同国は米国の期待通りの理想的な国家となったのである。

台湾のハリネズミ戦略

近年、中国側が圧倒的な軍事的優位を確立している。そこで、台湾は非対称戦略であるハリネズミ戦略を採る。

イスラエルの防空システムは世界1の密集度を誇っている。台湾は防空システムでは、イスラエルに次ぎ、世界第2位の密集度だという。現在、台湾は、米国から購入した迎撃ミサイルシステムPAC3を72基設置している。

だが、我が国のPAC3は48基である。単純に計算すると、台湾は日本の1.5倍のPAC3を備えていることになる。しかし、台湾は日本の国土面積の10分の1しかない。したがって、台湾のPAC3密集度は我が国の15倍となる。台湾の防空システムは注目に値しよう。

ところで、昨年11月、台湾・嘉義空港では約40機で構成されるF‐16V戦闘機部隊の発足式が行われた(その他、台湾軍はF‐16A/B、仏製ミラージュ2000、経国号<IDF>等、合計約280機を保有)。他方、我が国の航空自衛隊は、戦闘機349機を保有する。とすれば、国土の狭い台湾が日本とほぼ同数の戦闘機を保有していることになるだろう。

台湾人の高い祖国防衛意識

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