徹底検証!習近平の「台湾侵攻」は本当に可能なのか?|澁谷司

徹底検証!習近平の「台湾侵攻」は本当に可能なのか?|澁谷司

人民解放軍が行った模擬演習で6勝48敗!もし仮に「中台戦争」が勃発すれば、台湾はすぐさま射程1500キロメートルの中距離ミサイルで、三峡ダムを狙うだろう!米軍も絶対に黙ってはいない。即座に「米中戦争」に突入する「台湾侵攻」を果たして中国は本当に行うのか、徹底検証する。


なぜ、米国はそれほどまでに台湾を特別視しているのか。

まず、第1に、台湾の地政学的重要性にあるだろう。台湾は「第1列島線」(日本・沖縄・台湾・フィリピン・ボルネオ島を結ぶライン)の要所に位置する。同列島線は米国にとって中国「封じ込め」の重要なラインである。

仮に、中国が台湾を併合すれば、台湾は沖縄攻略の起点となる。また、中国海軍は自由に西太平洋まで進出可能になるだろう。このように、今もなお「第1列島線」をめぐり、米中間で激しい攻防が続いている。

第2に、台湾は半導体の重要生産基地である。かつて「鉄は国家なり」と言われた。だが、今では、半導体こそ国家の命運を担っている、と言っても過言ではない。あらゆる電子部品に半導体が使用されているからである。

とりわけ、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)はナノ・テクノロジーで世界トップ企業となった。同社は5ナノメートルの半導体を供給している。近くTSMC は3ナノメートルの半導体を製造するという。同社は、今後しばらくトップを走り続けるだろう。

第3に、台湾は米国の重要な武器輸出国の一つである。

昨年8月、米ロッキード・マーチンは台湾へF‐16Vを66機、売却すると発表した。1992年、ブッシュ政権はF16戦闘機150機を売却したが、それ以来の大型契約である。その他、台湾は米製自走砲等も購入している。「軍産複合体」の米国として、台湾は有難い存在だろう。

第4に、台湾は李登輝政権下で、蔣経國の権威主義体制から、民主主義体制へと変貌を遂げた。同国は米国の期待通りの理想的な国家となったのである。

米海軍少将マハンの金言

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米海軍少将だったアルフレッド・マハン(1840年~1914年)は戦略研究家として名を馳せている。特に、マハンは「いかなる国も『海洋国家』と『大陸国家』を兼ねることはできない」と喝破した。マハンは第1次世界大戦開始直後に亡くなっているが、その金言は今もなお、生き続けているのではないか。

実際、世界の大国が「海洋国家」は陸で苦戦し、「大陸国家」は海で苦戦している。その失敗例を挙げてみよう。

【失敗例1】第1次世界大戦と第2次世界大戦で、「大陸国家」ドイツはUボート(潜水艦)でイギリス等に対抗したが、どちらも敗北した。

【失敗例2】第2次大戦前、「海洋国家」日本は中国大陸へ“進出”したが、結局、敗戦に至る。帝国陸軍は強かったが、やはり限界があった。

【失敗例3】第2次大戦後、「海洋国家」米国は朝鮮戦争で勝利を収めることができず、またベトナム戦争でも敗れている。

【失敗例4】「大陸国家」旧ソ連は、原子力潜水艦を製造して米国に対抗した。しかし、最終的に、ソ連邦という国家自体が崩壊している。

【失敗例5】21世紀初頭、「海洋国家」米国がアフガニスタンへ派兵したが、20年後の今年、アフガンから撤退せざるを得なかった。

近年、「大陸国家」中国が、空母を建造し「海洋国家」米国の覇権に挑戦している。けれども、その試みは、果たして成功するだろうか。大きな疑問符が付く。

おそらく、マハンの金言には、経済的側面も含まれているのではないか。つまり、得意な軍(「海洋国家」ならば海軍、「大陸国家」ならば、陸軍)ならばともかく、反対の苦手な軍(「海洋国家」ならば陸軍、「大陸国家」ならば海軍)を育てて訓練するには、膨大なコストがかかる。したがって、どんな大国でも優れた海軍・陸軍を同時に持つのは極めて困難なのかもしれない。

八方塞がりの中国経済

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