志位委員長は2020年3月2日の全国都道府県組織部長会議で、党員現勢が連続後退している状況を報告したうえで、「毎月、一定の党員拡大をやっていたとしても、どうしても亡くなる方がいます。それから、できるだけ減らしたいけれど離党される方もいる。そういうなかで、一定の党員拡大をやっても、それ以上に減っていれば、現勢はどんどん減っていくわけです」と発言している。
減ったことを認めただけでも共産党にしては大きな変化だが、減った分をどう取り戻すのかについては、有効な手立てを示すには至っていない。
志位氏は「全国に315の地区委員会があります。315の地区委員会のすべてが、1人以上の党員を増やす。力のある地区委員会は5人、10人、 20人と増やす。そうすれば、党員現勢でも前進することができます」と言う。
しかし、党員拡大は志位氏の発言どおりには進まない。
党員の死亡数については公表されていないが、しんぶん赤旗日刊紙には毎日、党員の訃報が掲載されている。1日に4~6人、月ごとに平均120~180人の訃報があるが、死去を公表しない党員遺族も多いので、実際の死亡者数ははるかに多い。2020年10月の新規入党者数が366人だったことが公表されているが、そのときですら「現勢から大幅に後退」している。つまり、1カ月に少なくとも360人は亡くなっていることになる。
全国315ある共産党の各地区委員会が毎月1人ずつ党員拡大しても、死亡による減少分に追いつける数ではない。
私が所属していた東京の板橋地区委員会は「力のある地区委員会」だろうが、それでも毎月1人以上の党員拡大を続けることは実現したことのない至難の業だった。
党は「気軽に党員になってもらう話をしよう」と盛んに党支部に呼びかけていたが、数カ月ぶりに入党者が現れても、気軽に入党した人は気軽にやめてしまうのが実情だ。
酷使される高齢者、70歳は「若手」
それに高齢の党員が入党を誘う相手は高齢者であり、入党の動機は「政治を変える」という気概というより「茶飲み話の相手がほしい」というのが本当のところだ。茶飲み話にうってつけの話題は、「スガさんはひどいよね」などの総理大臣のこき下ろしだ。
こうした共産党支部の現状は、政治団体というより高齢者の生き甲斐サークルだ。託児所ならぬ「“託老所”が共産党の役割」と自嘲気味に話すベテラン党員もいた。
共産党員の高齢化についていえば、「党員の平均年齢が70歳を超えた」という内部情報がネット上に流れたことがあった。これを見たある新聞記者が、私にコメントを求めてきた。「高齢化していると言っても、70歳以上というのはあり得ないのではないか」というのが記者の見解だったが、私は「実感としては70歳以上というのは党の実態として正しいと思う」と答えた。
党の基礎組織である支部では、80歳以上の人が支部長を続けている支部も多い。91歳の不破哲三氏が引退せずに常任幹部会委員であり続けることは、一般常識からすると異常なことだが、共産党内では高齢者が党活動の担い手であることは普通になっている。70歳ではむしろ「若手」である場合もあるほどだ。
「しんぶん赤旗」の危機、全党に指令
しんぶん赤旗の配達は、80歳後の高齢者が手押し車に赤旗を積んで歩いて配っている。以前は「紙の爆弾」として恐れられた全戸配布ビラも同様だ。危なくて自転車にも乗れない高齢者によって、党の基本的な活動が行われている。
2019年10月、若林義春東京都委員長(当時)の名で「50年党員のみなさんへ」という檄文が全都の党支部に通達された。内容は、入党後50年以上のベテラン党員が党員と赤旗読者拡大の先頭に立って努力せよというものだが、18歳以上が入党の条件だから、50年党員とは68歳以上の党員のことでもある。党勢拡大は68歳以上の高齢者党員の奮闘次第だというわけだ。共産党は高齢者酷使の党になってしまった。
高齢者党員が文字どおり命を削るような努力で配達集金し、読者拡大運動をしている機関紙・赤旗も、奮闘むなしく読者の減少に歯止めがかからない状況だ。
2019年8月28日、党財務・業務委員会責任者の岩井鐵也氏が「『しんぶん赤旗』と党の財政を守るために」という声明を発表し、赤旗の日刊紙・日曜版の読者が「100万を割るという重大な事態に直面」していることを告白した。
岩井氏はこのなかで「『しんぶん赤旗』の事業は党の財政収入の九割をしめるという決定的な役割を担っています。『しんぶん赤旗』の危機は、党財政の困難の増大そのものです」と窮状を訴え、死活問題として読者拡大に取り組むことを全党に指令した。
共産党は後退の原因について、「読者拡大の独自追求の手だてが弱まっているため」(2020年2月15日、田中悠・党機関紙活動局長)として、責任を党員に押しつけているが、長年、読者拡大に取り組んできた私の経験からすれば、どんな手立てをとっても赤旗読者が増える可能性はほとんどない。