〝戦死者出す気満々だ〟!
「多数の戦死者想定か 進む戦争する国づくり 陸自 葬祭業界団体と協定」。こんなおどろおどろしい見出しが、今年5月16日付けの共産党の機関紙「しんぶん赤旗」一面トップに躍った。
同日、同紙の社会部長・三浦誠氏は自身のXに「『しんぶん赤旗』のスクープです。今年2月に陸上自衛隊が葬祭業界の団体と協力協定を結んでいたことが分かりました。防衛省は、米軍の戦争に日本が動員される『存立危機事態』などで隊員に『万が一』があった場合に備えて結んだとしています。戦争する国づくりがここまで進んでいます」と、投稿している。三浦赤旗社会部長の投稿は「全文は無料お試しキャンペーンで」とも書かれており、この「スクープ」を赤旗の読者獲得のための宣伝材料にしようという共産党の意向が露わになっている。
その思惑通り、投稿には「ひどい。アメリカのために自衛隊の命が多数失われることを想定するなど、自衛隊(自国民)の命を軽んじ、アメリカのために捧げているのと同じ。人の命を将棋の駒か何かだと思っているなんて、過去の戦争から何も学んでいない」「自衛隊と葬儀屋が提携なんて怖すぎる。戦死者出す気満々だ」などと賛同する返信がいくつか寄せられていた。
だが、この赤旗記事は本当にスクープといえるものなのか?
記事のリードでは「米軍がかかわる戦争に自衛隊が参戦する『存立危機事態』で、陸上自衛隊員が戦死した場合に備えて、葬祭業の業界団体と陸自が協力協定を結んでいたことが15日、防衛省への取材でわかりました。自衛隊員の戦死を具体的に想定する事態にまで、戦争する国づくりが進んでいることになります」とある。
「存立危機事態」とは「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)」において「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義されている。「米軍がかかわる戦争に自衛隊が参戦」とは共産党の勝手な解釈なのだ。そこから「戦争する国づくりが進んでいることになります」と断定するのは、牽強付会も甚だしい。
「明白な危険がある事態」であるならば、「万が一」のことを想定するのは当然のことだろう。
赤旗社会部長のX投稿にも「可能性がある事に先んじて準備する事は、組織として当然の業務。スクープでも何でもない」「何があかんねん。重要なことで事前に協力体制作るのは当たり前のことでしょうが」「共産党は誰か死んでも葬式を出さないんですか?」など、賛同の声をはるかに上回る共産党への批判の声がたくさん寄せられた。

赤旗社会部長のX(2025年5月16日))
二の矢を演出
こうした批判が目に入らなかったかのように、赤旗は5月27日付けの一面トップに第2弾として「国外で戦死想定の協定 遺体修復などで協力 陸自との葬祭業界 本紙入手」の大見出しで続報を掲げた。
この27日付けの記事は多少詳しく書かれてはいるが内容的には16日の第一報とほとんど変わらない。協定書を26日になって入手したので改めて記事にしたという体裁をとっているが、これが事実とはにわかには信じがたい。16日付けの記事も協定書を読んでいなければ書けない内容だからだ。赤旗社会部長が自ら「スクープ」と自賛するネタの「二の矢」を演出するための手法なのだろう。
ネタ元になった陸上自衛隊と全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)との「連携・協力に関する協定書」が締結されたのは2月20日のことだ。防衛省によれば、この協定書を積極的に公開する措置はとっていないが、情報公開請求などの手続きをふめば、だれでも内容を知ることはできるという。しかも、書面での協定は今回が初めてとのことだが、これまでも個別の事案ごとに協力してきたという。実態を書面上に整理したというだけで、特別なことではなく、スクープ性はないに等しい。