愚かな国の政治家とマスコミ
保健所の体制はとっくに破綻している。少ない人員で膨大な感染者に対応することが不可能なことは誰にでもわかる。崩壊しているのは医療ではなく、保健所なのだ。
大木隆生・慈恵医大教授は、ツイッターでこう主張した。
〈2類指定はエボラ(世界で3万人、致死率50%)、SARS(8千人、10%)の様な希少で致死率が高い未知ウィルスを想定しての枠組。新コロは世界で2億人、国内100万人と最早一般的感染症で死亡率も1%以下。日本の数十倍の爆発でも諸外国が医療崩壊を回避できたのは現状に則していない2類指定が無いから。5類へ!〉
だが、「人流抑制」に取り憑かれた尾身茂氏と分科会に翻弄される菅政権には通じない。冒頭の施策はとっても、2類相当から5類への移行の必要性を未だ感じていないのだ。
「なぜ最も大切な初期治療をやってもらえないのですか」――肺が真っ白になるまで、つまり重症化するまで放置される国民は、苦しい高熱の中でそう訴えている。
東京都でコロナ患者を受け入れている病院は全体の11%、確保ベッド数も6%に過ぎない。医療逼迫を煽り続けるマスコミは、コロナ対策のこれら重要問題を一切、報道しない。
愚かな国の政治家とマスコミが、歴史に残る大失敗を今も続けているのである。
(初出:月刊『Hanada』2021年10月号)
作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社に入社。週刊新潮編集部に配属され、記者、デスク、次長、副部長を経て、2008年4月に独立。『この命、義に捧ぐ―台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、のちに角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。近著に『オウム死刑囚 魂の遍歴―井上嘉浩 すべての罪はわが身にあり』(PHP研究所)、『新聞という病』(産経新聞出版)がある。