2020年10月26日、菅首相は所信表明演説で、「2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。だがこれはあくまで2050年までに目指す目標である。十分な時間をかけて国のエネルギー政策を構築し実行する必要がある。
そこで、私も理事を務める公益財団法人国家基本問題研究所でも今年2月に「エネルギー問題研究会」を立ち上げ、4月13日に「政策提言 脱炭素の答えは原発活用だ」を公表した。(https://jinf.jp/wp-content/uploads/2021/04/JINF-Proposal-202104.pdf)
しかし、このあとでトンデモないことが起きてしまう。4月22日に行われる米バイデン大統領主催の気候変動サミットオンライン会議出席を前に、小泉環境大臣が2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する方針を表明したのだ。
「“46”という数字がおぼろげながら浮かんできたんです」などと、梶山経済産業大臣の管轄であるエネルギー基本計画の根幹に関わる数値を十分な検討なしに思いつきで発言した小泉大臣。その発言に対しては各方面から批判の声が上がった。
メディアが礼賛する裏で
太陽光で全てのエネルギーを供給しようとした場合
現在、国際的に再生可能エネルギー(再エネ)がメディアなどでも礼賛され、まるで世界中が再エネで電力の全てをまかなえるかのような錯覚に陥っているが、大きな間違いである。
例えば、太陽光で発電できるのは、1日のうち約6時間、24時間のうちの25%しかない。我が国の晴天確率は地域差はあるものの約50%。つまり太陽光発電の稼働率(正確には設備利用率)は、25%の半分のわずか13%しかない。残りの時間帯は、水力発電所と火力発電所が電気を供給している。
したがって、太陽光の比率が13%を超えると、巨大バッテリーなどの蓄電・蓄エネが必要となり、太い送電線を設置しなければならなくなる。仮に送電線を柏崎から東京に引くと1.2兆円ものコストがかかる。北海道から九州まで、再エネのだめに送電線を敷設しなおしたらそれこそ数十兆円を超える莫大なコストが必要となる。そのコストは当然電気料金のさらなる高騰を招く。
太陽光で必要な送電線と大容量バッテリー。こうした膨大なコストがかかる