朝日新聞と財務省が手を染めた「嘘」と「偽造」|小川榮太郎

朝日新聞と財務省が手を染めた「嘘」と「偽造」|小川榮太郎

小川榮太郎


朝日の創ったストーリー

膨大な交渉過程全部の隠蔽が行われたのに、朝日新聞は相変わらず安倍スキャンダルに仕立てようとして、昭恵夫人一点に狙いを定めた無理な読みを紙面で展開したのだ。

文書の報告が出た3月13日に、朝日新聞は一面で昭恵氏の名前を出している。2・3面では大見出しで「必死の責任論封じ 削られた『昭恵氏』」と、またも昭恵氏の名前が故意に削られ、そこに大きな責任があるかのような印象操作をしている。

翌3月14日の朝日新聞では、一段と明確な報道詐欺を相変わらず繰り返した。社会面に「昭恵氏の写真風向き一変」と題して、財務局が当初、森友の要請に難色を示していたにもかかわらず、平成26年4月、学園側が昭恵氏の名前を交渉に持ち出した途端、突然交渉が前に進んだと報じたのである。

その読み筋は妥当なのか。時系列を、財務省報告4「特例承認の決裁文書1」(平成27年2月4日)で検討してみよう。

朝日新聞は、次のようなストーリーを創り出している。

平成26年4月15日、近畿財務局は森友学園に対し、「国有財産審議会と大阪府の私立学校審議会の答申を得る前の契約はできない」として、要望を断った。28日、近畿財務局は籠池氏に関係資料提出を速やかに行うよう要請している。その際、籠池氏が「昭恵夫人からは『いい土地ですから、前に進めて下さい』との発言」をし、一緒に写した写真を見せたと記録にはある。

その35日後に、近畿財務局から「売り払いを前提とした貸付には協力させて頂く」との回答を示した。昭恵夫人の名前を籠池氏が出したことで、交渉が一気に前に進んだかのような書きぶりである。「昭恵氏の写真 風向き一変」という朝日の見出しがそれを証している。

では、実際はどうだったのか。この交渉はそもそも、平成25年6月28日に学校法人森友学園の籠池理事長が近畿財務局へ来所し、国有地取得の検討をしている旨を話したことから始まった。その1カ月半後、平成25年8月13日に、鴻池祥肇議員の秘書から近畿局へ問い合わせがくる。財務省記録によると、9月12日、近畿財務局が小学校設置認可権限を有する大阪府私学・大学課に訪問し、今後の連携について要請している。

財務省が、地方自治体の担当課を訪問するのは異例だ。近畿財務局が自ら腰を上げて動くという異例の態度を示した以上、国有地払い下げ、学校設置はここで既定路線となったのである。籠池氏が昭恵氏の名前を持ち出す7カ月前に事は決まっていたのである。なぜ、そうなったと推定できるか。ずばり、今回削除された項目のなかに、その答えと思われる次の一節がある。

《本件は、平成25年8月、鴻池祥肇議員(参・自・兵庫)から近畿局への陳情案件》

「特例承認の決裁文書」の冒頭の一文だ。これが近畿財務局の認識だったのである。事実、鴻池氏が公表した事務所の陳情記録を見ると、奔走する籠池氏を鴻池事務所がフォローしていた有り様が明らかである。

この件は鴻池事務所の働きかけで近財主体で動き始め、籠池氏は鴻池事務所に相談を重ねながら大阪府教育課と近財とを往復し、あの手この手で交渉の段取りを付けた。

無論、鴻池氏が不正を働いたわけではない。拙著でも強調したように、陳情はむしろ議員の重要な仕事である。

しかし、近財の認識が鴻池氏の陳情案件で、鴻池氏の陳情記録もその過程を記録しており、実際、6月に近財が貸し付け契約を認めた段階で、記録自体が安堵の表現とともに終わっている事実ははっきりさせておかねばならない。

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