自衛隊の特定秘密不正の多くは政令不備、いますぐ改正を!|小笠原理恵

自衛隊の特定秘密不正の多くは政令不備、いますぐ改正を!|小笠原理恵

潜水手当の不正受給、特定秘密の不正、食堂での不正飲食など、自衛隊に関する「不正」のニュースが流れるたびに、日本の国防は大丈夫かと心配になる。もちろん、不正をすれば処分は当然だ。だが、今回の「特定秘密不正」はそういう問題ではないのである。


自衛隊員が口に出せないこと

昨年末、現職の海上自衛隊員にお会いした。月刊『Hanada』2024年9月号の拙稿「報道されない自衛隊員の声 防衛省大量処分に異論あり」を読み、この内容についてお話をした「ニュースあさ8時!」も見たという。

そして、私にこう告げた。
「私たちが口に出せないことを言ってくれてありがとう」

現職の隊員が言えない話はたくさんある。だからこそ、本当のことを書いておきたい。

昨年末、読売新聞が「自衛隊の特定秘密不正、新たに100件確認…出向時に手続き漏れ」(2024年12月25日)と報じた。

自衛隊が「特定秘密」を違法に取り扱っていた問題で、隊員が防衛省と防衛装備庁の間を人事異動で行き来する際に必要な手続きを怠るなど、新たに約100件の不正行為が確認されたことが政府関係者への取材でわかった。近く調査結果を公表する方針で、関係者を順次処分する。

「防衛省は7月、海自の艦艇部隊で特定秘密を違法に取り扱うなどの事例が58件あったとして、事務次官や統合幕僚長を含む約120人を処分した」(読売新聞)が、今回の事例の一部は秘密漏洩ではなく、政令状の手続きシステムに不備があったことで起こった問題だ。

「注意・訓戒」程度であれば昇任の問題はないが、「戒告 以上」の懲戒処分を受けたら、昇任が最低でも半年分は見送られる。重い懲戒処分になれば退職金にも大きな影響がでる。重大な懲戒処分を受けた隊員は退職の道を選ぶことが多い。今回の問題で「関係者を順次処分する」という記述があるが、有能な自衛隊員たちが退職することにならないか心配だ。

繰り返すが、この問題の根本原因は、自衛隊ではなく「政令」の不備にある。改めるべきはまず、その政令や制度だろう。

月刊『Hanada』2024年9月号

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