鍵は、佐川宣寿理財局長(当時)の答弁にある。2月24日の佐川宣寿理財局長の答弁を見ていただきたい。
衆議院予算委員会、平成29年2月23日
○佐川政府参考人
〈(価格交渉は)審議会におきましては、もう既に処分の相手と方法を決めて、それで御了解をいただいて、時価で売ってくださいというふうに決めるわけですので、当然、後でございます〉
つまり価格交渉は審議会にかけたあとにするので、事前の価格交渉はしていないと答弁しているのである。
衆議院予算委員会、平成29年2月24日
○佐川政府参考人
〈確認しましたところ、近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした〉
ここで佐川氏は、交渉記録は残っていないと答弁している。しかし、広い意味での事前の価格交渉を財務省はしており、また、交渉記録は残されていたのである。佐川氏は虚偽答弁をしたことになる。そこで、文書を答弁の方向に合わせて大幅に削除したということになるわけだ。
しかし、それも不可解な話である。佐川氏の答弁が詳細の報告を受ける前で、実態と反したものだったとすれば、あとから答弁を修正して決裁文書を明らかにし、それに即した答弁に変更すればよかっただけではないのか。それを、なぜ膨大な交渉過程を全て隠蔽するなどという危険な不正行為に及んだのか。
私は以下のように推測する。
決裁文書によって詳細が明らかになれば、国会での追及も当然細部の質疑に及ぶ。そうなると、矛先は安倍夫妻から近畿財務局の処理の不明朗さに転じざるを得まい。佐川氏が記録がないと答弁し続けたために安倍夫妻疑惑の印象操作が続いたが、逆にここまで細かい交渉記録の詳細が出てしまえば、重箱の隅をつつく攻撃に全て具体的に応戦しなければならなくなる。
昭恵氏への忖度ならば総理がターゲットだが、細目の、それも一種阿吽の呼吸での処理まで記載されていれば、いずれ佐川氏は答弁に窮しよう。現場での交渉というのは何にせよ、全部表で札を出せるものではないのである。
そして、佐川氏の答弁が原因で国会の紛糾が続けば、政治決着として佐川氏の引責と引き換えに国会正常化が図られた可能性は高い。要は財務省エリートが、この件が総理案件から地方局のやり取りの非合理性の案件になり、理財局として責任を取らされることを恐れたというのが、書き換えの端的な理由だったのではあるまいか。政権を盾にして局長を守る──国益も何もあったものではない。
ところが、ここで話は再び朝日新聞のことになる。