この一連の記載に沿って読めば、3の「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」との記載は、今治市での大学設置時期について最短距離でとの総理のご意向を実現するためには、国家戦略特区諮問会議決定とし、総理からの指示に見えるようにするのがよいとの趣旨であることが明らかである。原告の取材に対し、文部科学省関係者もそのように説明した。
朝日へのとどめの一撃
朝日新聞の解釈によれば、「今治市での大学設置時期について最短距離で」、つまり開学を最速にしろというのが「総理のご意向」だということになっている。「総理の意向」の解釈は、拙著256頁から268頁に示したようにこの文書1枚だけでは全く成り立たないので、朝日の言い分はそもそも無意味なのだが、訴状のこの部分はそういう解釈ミスではなく、実は致命的な文書偽造が施されているのだ。
朝日新聞社の言論機関としてのとどめの一撃とさえ私は思う。
煩雑だが、大切なところだから元の該当箇所をそのまま引用する。
《大臣ご確認事項に対する内閣府の回答
1設置の時期については、今治市の特区指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。
2規制緩和措置と大学設置審査は、独立の手続きであり、内閣府は規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査は文部科学省。大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない。
3 「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上旬中には本件を諮問会にかける必要あり》
お分かりだろうか。朝日新聞の訴状は、この2のなかの「関係者が納得するのであれば内閣府は困らない」をそっと抜いてしまっている。
要するに、「総理の意向」と発言した内閣府側の役人自身が、開学が遅れても内閣府は困らないと言っているのだ。朝日によれば、内閣府は総理の意向を代弁しているのだから、この一文は「今治市での大学設置時期について最短距離で」やれという「総理のご意向」などなかったことを証明する一文に他ならない。 朝日新聞の訴状は、故意にこの一文を省くことで文意を180度変え、なかった「総理の意向」を、あったことにしてしまっているのである。
朝日新聞は、5千万円の高額訴訟の13摘示事実のひとつで──単純に計算をしても約380万円に当たる──あろうことか、文書を偽造して裁判所を騙そうとしているのだ。